2023 年 8 巻 3 号 p. 89-95
【目的】外頚動脈総頚動脈留置は,血栓を内頚動脈に迷入させない脳塞栓症の水際対策となり得るかを実験的に検討した.【方法】シリコン血管モデルを使用し,ステントを外頚動脈から総頚動脈にかけて留置した.スライムを用いて擬似血栓を作製した.総頚動脈のベクトルを基準線として,それぞれのベクトルが基準線となす角度が,外頚動脈=内頚動脈,外頚動脈>内頚動脈,外頚動脈<内頚動脈の3タイプの血管走行を作製した.実験1は血栓の挙動を検討することを目的とし,擬似血栓を総頚動脈に入れ,生理食塩水を流した.実験2はステント格子が内頚動脈の血流動態に与える影響を検討することを目的とし,ステント留置時と非留置時のそれぞれについて,生理食塩水を総頚動脈から流して,外頚および内頚動脈に流出した生理食塩水の重量を計測した.【結果】実験1:いずれの血管走行のタイプにおいても,どのサイズの擬似血栓も内頚動脈へ迷入することはなかった.実験2:血管走行のタイプにかかわらず,また,ステント留置の有無にかかわらず,流出した生理食塩水は内頚動脈のほうが外頚動脈よりも多かった.【結論】外頚動脈総頚動脈ステント留置は,内頚動脈系への血流障害を来すことなく,血栓の内頚動脈迷入を阻止することができた.