論文ID: cr.2022-0003
【目的】以前より,カテーテル親水性ポリマー塞栓の報告と,それによる肉芽腫性反応が示されたという報告がなされている.今回我々は,血栓回収後に病理解剖を行った症例において,無症候性親水性ポリマー塞栓の分布を脳標本より検討できたため報告する.【症例】81歳女性.突然の意識障害,左半身麻痺で来院し,NIHSSは15点であった.MRI画像で右中大脳動脈領域に急性期脳梗塞を認め,rt-PA静注療法と機械的血栓回収療法を施行したが,再開通は得られず,術後27日目に腸管壊死により死亡した.脳病理標本より肉芽腫性変化を伴う散在性親水性ポリマーを確認し,無症候性親水性ポリマー塞栓症と診断した.病理学的に親水性ポリマー塞栓は患側大脳半球脳梗塞領域だけではなく,正常組織内にも認められた.【結論】親水性ポリマー塞栓は,従来の認識よりも頻度が高い合併症として周知が必要であり,症状を呈した場合の治療を用意する必要がある.