日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2D07
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一般演題
本校における終末期看護の学びと課題
-死生観のまとめとスピリチュアルケアの学びより-
羽毛田 博美桜井 成美小野 由貴子鈴木 彰
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抄録

[緒言]1989年の看護教育におけるカリキュラム改正では、ターミナルケアのように生命倫理の問題を踏まえた判断能力や問題解決能力が求められている。ターミナルケアの看護に求められる事は、身体的ケアはもちろん精神的サポートや、スピリチュアルケアである。当校では2年次に13時間の講義と、3年次90時間の終末期看護の実習を行なっている。ここ5年間の成果と課題を検討したので報告する。
[方法]1)時期1999年ー2003年
2)対象 第一科の学生
3)方法 1.死の意識アンケート調査(433名)
2.終末期看護実習での死生観についての意見のまとめ(114件)
3.終末期看護をテーマとしたケーススタディ
[結果]1.死の意識調査では、「自分にとって死とは」の問いは、生命の終わり41.9%、永遠の眠り・憩い33.8%、「死後に関する現在の自分の考え」は、永遠の眠り31.0%、神秘・不可解22.0%であった。「死について考えることの度合いは」時々(1月に1回)が47.8%殆どない(何年かに1回)29.9%であった。
2.実習最終日で死生観について出された意見では、「死」を自分の事ではなく、祖父母や患者の事として考えていた。自己の死生観については「死を自分の事として捉える事ができる」8.8%、「死から生きることの意味を考えられる」は1.8%であった。「終末期の患者と接し、健康であることのすばらしさに気づいた。一日一日大切に過ごしたい」という意見は、実習で真剣に患者と向き合い、死の過程を学んだ体験から出たと思われる。
3.終末期患者と1対1で関わる学生は、スピリチュアルペインに触れることができたり、ライフレビューより平安な死への援助を学ぶ事ができる。
事例1;大腸癌からの転移進行により対症療法を行なっていた62歳女性。患者から「もう十分生きた。先生お願い、もう逢いたい人にも逢ったし、何も後悔することはない。もう、雲の上に行かせて下さい。」と学生を待ってセデーションが行なわれた。
事例2;進行胃癌で疼痛コントロールを行っている50歳独身男性。年老いた両親を残し先立たなければいけない事や、「俺は、携帯電話で配線の仕事をしていた。遣り甲斐あったよ。」など過去の実績を話す様子が見られた。[考察]調査結果から、死に対しては終わりと言った意識が強く、日々考えたくないものとして捉えている。しかし、病名が告知され、死と向き合う患者家族の精神的サポートは今後益々求められてくる。患者の心残りを聴けた事例、「最後にあなたに看取ってもらいたい」とセデーションを待たれた事例。これらの事例はスピリチュアル的側面の関わりであり、死や死別が単に苦しむことではなく、その苦しみから学ぶものが多い事を教えている。終末期看護実習は、スピリチュアルケアを学ぶ重要な場であるとともに、学生自身の死生観に大きく影響を与えていると言える。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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