日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2F11
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一般演題
マムシ咬傷の臨床像
当院での治療と経過についての検討
重田 匡利久我 貴之須藤 学拓山下 晃正中山 富太藤井 康宏
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キーワード: マムシ
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抄録

【目的】マムシは琉球列島を除く日本の全土に分布している毒蛇であり春から秋にかけて多くみられる。マムシ咬傷の症状として局所の腫脹・疼痛はほとんど必発であるがさらに全身症状として腎臓や循環器、神経、消化器、凝固系の異常をきたしDICや多臓器不全により死に至ることもある。本邦では年間2000から3000人が受傷しその内10から20名が死亡するとされる。田畑や山中での被害報告が多く農村医療では重視されると思われ、また当院ではマムシ咬傷患者が比較的多いことからその臨床像について検討したので報告する。
【対象】当院でH11年8月からH16年8月におけるマムシ咬傷16例について治療法とその経過について検討した。患者は7_から_79歳(平均56歳)男性10名、女性6名であった。
【結果】季節は夏に集中し7月_から_9月が11例(69%)であった。山中・畑での受傷が7例(43.8%)であったが9例(56.2%)は自宅屋内や庭、自宅周辺での受傷であり当院の近隣地区においては日常的にもマムシと遭遇する危険がある可能性が示された。来院前の処置としては咬傷部の吸飲、洗浄、患肢挙上、駆血が施行されていた。上肢の受傷では速やかに駆血され来院した症例は治療期間、腫脹の程度も軽く有効な処置と思われた。全身症状としては循環器症状として心悸亢進を1例、神経症状として複視や霧視を7例で認めた。また消化器症状として嘔気を2例で認めた。血液検査上の異常はCPK高値を8例(50%)で認めGOT上昇を4例(25%)で認めた。ほかアルブミン低下やD-dimer高値の症例も認めたが腎障害やDICの症例は認めなかった。またCPK高値群の平均入院日数15日±8.6SDでCPK低値群は7.4日±3.9SDでありCPK高値の症例は入院期間も有意に長くなった(p<0.05)。治療方針はGrade分類を参考にし、咬傷部の切開処置、輸液、マムシ抗毒素、セファランチン、抗生物質、ステロイド剤を併用し加療した。抗毒素の使用に関してはインフォームドコンセントのもとに施行することとしているが過去の判例もあり、結果的には16例中15例で投与し非投与は皮内テスト陽性の1例のみであった。使用した後に1例で発疹を、1例で血圧低下のショック状態を呈したがともに速やかに軽快した。受傷から来院までの時間は60分以内が13例(81%)でありほとんどの症例で速やかな処置が行なえた。治療の結果、腫脹改善傾向が認められるまでの日数は翌日に改善傾向となるものから10日目までかかるものまであり平均は約4.1日(±2.2SD)であった。また入院日数は2日間から30日間のものまであり平均は11.2日(±7.6SD)であった。腫脹、疼痛の消失には時間がかかり治療期間を再診のあったもの11名で検討すると7日間から59日間で平均26.6日±13.9SDであり完全に緩解するまでには相当数の日数を要するものと思われた。人工呼吸管理や血液浄化などの集中治療を必要とする症例は無かった。
【結語】マムシ咬傷では迅速な初期治療、重症化への経過観察を含めた全身管理が必要である。当院の症例では集中治療を要するような重篤な症例は無く良好な結果であった。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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