日本農村医学会学術総会抄録集
Online ISSN : 1880-1730
Print ISSN : 1880-1749
ISSN-L : 1880-1730
第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2G10
会議情報

一般演題
愛北病院における簡易懸濁法の検討
青山 真季冨田 敦和前田 直希羽田 清沖 健次本多 鋭孝
著者情報
キーワード: 簡易懸濁法, 経管栄養
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【緒言】
近年、経管栄養療法を施行する患者が増加傾向であり、薬物療法を行なう場合、錠剤・カプセル剤は手間と時間を費やして粉砕又はカプセルをはずして調剤を行なっているのが現状である。そこで、粉砕調剤に代わる『簡易懸濁法』という、簡便かつ有用な方法を得たので、薬剤師及び病棟看護師における業務の効率化を目指し、『簡易懸濁管理システム』を構築し、臨床使用したので報告する。
【簡易懸濁法】
じほう社刊『経管投与ハンドブック』を参考にした。
  1. シリンジに薬剤を入れる。
  2. 温湯(約55度)20mLを吸引する。
  3. 10分間放置後、崩壊・懸濁状態を確認した後、与薬する。
【簡易懸濁管理システム】
患者IDを入力し、患者情報、処方内容、簡易懸濁の可否、投与方法を記載した『手引き書』を発行する。簡易懸濁の可否は、『経管投与ハンドブック』やインタビューフォーム、メーカーからの得た情報を基に判定し、薬品マスタを作成した。
【調査・検討事項】
1、手引き書に従い調剤した場合の薬剤師の調剤業務と病棟看護師の手技の一元化について検討した。
2、簡易懸濁法導入後3か月間(平成17年1月から3月)における粉砕指示処方箋のうち、簡易懸濁法を用いた調剤が可能である患者とそのまま粉砕調剤の患者の処方箋枚数について調査した。
3、病棟看護師に本法についてのアンケート調査を実施した。
【結果】
1、システム化し手引き書を作成することにより、薬剤師が簡易懸濁の可否の判定を迅速かつ一律に行なうことができた。又、本法では調剤業務の簡略化及び調剤時間の大幅な短縮を図る事が出来た。病棟看護師においては、手引き書を参照に与薬を行なうため、手技の一元化を図る事が出来た。
2、粉砕指示処方箋256枚中、本法を用いた調剤が可能となった処方箋は136枚(約53%)であった。
3、看護師の評価として、セット時間の短縮、以前と比較して正確に投薬できるなど、簡易懸濁法の評価は良かった。
【考察】
以前と比較して、粉砕指示の約半数において本法が可能である点や調剤時間の短縮により業務の効率化を図ることができた。看護師においては、セット時の薬剤識別の簡便化及びその際に薬剤をこぼしてしまうことがある点などの改善により、正確な投薬が可能となった。又、中止など医師の指示変更の際も柔軟な対応が可能となり薬剤の有効利用につながった。
タガメットは細粒の溶解性が悪いため、錠剤で本法を用いた方が簡便であるという特例があることが判った。又、薬価について、散剤・水剤よりも錠剤の方が安価であるものが多く、療養型病床においては本法を用いる方が治療にかかる薬剤費を軽減できることも判った。
【結語】
医師、看護師の協力体制により薬剤科と病棟の両サイドにおける業務の効率化を図ることができた。今後においては、本法の在宅患者への導入の可能性について検討していきたい。

著者関連情報
© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top