日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2I05
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一般演題
当院における出生体重と低出生体重児の割合の実態調査
梅村 有美後藤 美代子高田 規久子
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抄録

I.はじめに
「日本人の出生体重はこの20年来減少し続けている」1)といわれている。しかし,当院においても同様の傾向があるのか疑問を感じた。そこで,当院における1983年と2003年の出生体重を比較し,出生時の体重は減少し,低出生体重児の出生数が増加しているのかを調査した。その結果から妊娠期より出産までの周産期看護に示唆を得たので報告する。
II.用語の定義
低出生体重児:出生体重が2500g未満の児。
III.研究方法
 当院の1983年・2003年の分娩台帳から,正期産(妊娠37週_から_41週)においての出生体重,低出生体重児の割合,母親の年齢,初経産,合併症を調査し比較する。
IV.結果
1.対象の人数
1983年の出産数495名中,正期産465名。2003年の出産数422名中,正期産403名。
2.対象の背景
1)母親の年齢
 2003年の方が平均年齢は1.7歳高い。
2)初産婦経産婦の割合
 1983年は初産婦191名(41.1%),経産婦274名(58.9%)であり,2003年は初産婦214名(53.1%),経産婦189名(46.9%)であった。
3)合併症
 妊娠中毒症と糖尿病の割合は,1983年と2003年ではほとんど差はない。
3.出生体重
 出生体重の平均と標準偏差を求め,1983年と2003年を比較するためにt検定を行った。2003年の方が出生体重は小さく,有意差があった。(p<0.01)
4.低出生体重児の割合
 1983年と2003年を比較するためにt検定を行なった。2003年の方が低出生体重児の割合は多く,有意差があった。(p<0.01)
V.考察
 当院において正期産における出生体重の比較をしたところ,2003年の方が出生体重は小さく,低出生体重児の割合は2003年の方が多く,共に有意差があった。このことから20年前より出生体重は減少しており,低出生体重児の出生数は増加している。1983年より2003年の方が初産婦の割合が増え,母親の平均年齢が1.7歳と若干高くなっていることから,晩婚化が進み出産年齢の上昇が読み取れる。出産の高齢化は子宮内環境が悪くなり,このまま母親の年齢が高くなっていけば,低出生体重児出生率が上昇していくと思われる。 女性が妊娠前の体型を保つことへの関心は強く,当院の助産師外来において妊婦個々に対し体重増加の具体的な指導は行なわれていない。妊娠中のカロリー摂取制限により体重増加が抑えられることによって,出生体重の低下を招いていることが考えられる。体重増加量を算出し計画を立て,妊婦一人一人に適切な体重増加を得るために,妊娠期における助産師外来の保健指導を充実させていく必要がある。今回は妊婦の体重増加や喫煙,労働などについて調査は行なっていない。今後はこれらについても調査していきたい。
VI.結論
当院においても20年前に比べ出生体重は減少,低出生体重児の出生数は増加しており,全国の統計と同様の結果であった

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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