抄録
【はじめに】
医療現場は高齢化に伴い、ベッドからの転倒・転落の事故事例が後を絶たないのが現状である。市販品の中に転倒・転落防止器具として、ベッドから起きるとセンサーチップが装置から抜けて鳴るタイプ、ベッドから降りてマットを踏むと鳴るタイプなどがあるが、ナースコールを鳴らすタイミングに問題がある。そこで、心電図モニターケーブルとナースコールを改良して、安価でナースコールを鳴らす装置(以下、セーフティコールとする)を製作した。ナースコールを鳴らすタイミングも良好なシステムでベッドからの転落防止に多大な信頼性を得たので報告する。
【使用機材】
ナースコールシステムはアイホン社製UBXシステム(PHS連動式)に日本光電社製心電図モニター電極リード(BR901)と抵抗100Ω、70cm程度の電線、1m程度の固定用紐、シリコンチューブその他、半田、プラスチックボンドなどを用いる。(図-1)
【設置の実際】
セーフティコールのクリップと電線の接続部に取り付けられた紐をベッドマット下の金具に取り付ける。マットを戻した状態でクリップを引き外れない事を確認する。患者の肩付近にクリップを取り付け、寝返り程度では外れないが、起き上がると、クリップが外れる位置に調節する。(図-2)
【アンケート調査】(配布143部中回収103部)
実際に使用した病棟看護師にアンケート調査を行った結果、1.ナースコールが鳴るタイミングは?とても良い13% 良い45% 普通40% 遅い2%、2.取り扱いはどうですか?使い易い84% 使いづらい16%、3.転倒・転落に有効だと思われますか?特に有効8% 有効65% 普通29% 無効1%、4.使用してよかったと点は? 転倒前に患者の元に行ける42% 事故防止につながった26% 無理に抑制しなくてよい20% 安心して他の業務が出来る7% その他5%、5.良くなかった点は? 外れると鳴りっ放し67% 体動や寝返りで外れる事がある20% 鳴らなかった4% 自分で操作されてしまう4% その他5%、6.看護業務は軽減しますか?出来る32% 出来ない18% 分からない50%などの結果が得られた。
【考察】
ベッドからの転倒・転落事故の主な原因は、夜間、トイレに行こうとする時に歩行が十分出来ないことに気づきながらもベッドから降りて転倒してしまう事例が多く報告されている。そこで、今回作成したセーフティコールは、患者がベッドから起き上がった時点で患者に装着したクリップが外れ、ナースコールが鳴る。看護師が持つPHSに連動して、「○○さん、今いきますからそのまま待っていて下さい」とベッドから降りる動作を一時的に静止させることにより、転落事故を減らすことが出来るようになった。「トイレに行く時はナースコールを押して下さいね」とお願いしても、押してくれないのが現実である。このような患者に取り付けることにより有効性を発揮するものと思われる。アンケート調査から無効と答えたのは1%で99%の看護師は必要性を認めている。転落前に静止出来る点などに対する安心感がある反面、一度なるとナースコールが鳴りっ放しになるため、必ず患者の元へ行かなければならない点が看護業務の軽減にはつながらない要因と思われる。
【まとめ】
セーフティコールは転落防止に安価で有用な一手段である。
