日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1E15
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メチマソ゛ールによると考えられる関節炎を発症した中毒性単結節性甲状腺腫の一例
三浦 貴徳本間 玲子
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抄録

〈緒言〉中毒性単結節性甲状腺腫(以下プランマー病)は、本邦ではまれな疾患であり、結節性甲状腺腫の1%前後を占めるにすぎない。その治療法としては、手術あるいはアイソトープ療法が選択されるが、手術が選択された場合、術前の甲状腺機能の正常化のためヨウ化カリウムのほか、メチマゾールなどの抗甲状腺薬が使用される。今回我々は、プランマー病の術前の甲状腺機能のコントロールのために使用したメチマゾール投与後に発熱を伴う関節炎を発祥した症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。〈症例〉症例は、76歳男性。平成14年に当院外科にて胃癌の手術を行い、その後も定期的に通院していた。平成16年12月に行なった胸部CT検査にて右甲状腺の結節を指摘され同年12月29日に当科を紹介された。検査の結果軽度の甲状腺機能の亢進を認め、またエコー上でほぼ右葉全体を占める、一部石灰化を伴う最大径3 cmの腫瘍を認めた。さらに、甲状腺シンチグラフィーを施行したところ、腫瘍に一致してhot noduleを呈したため、プランマー病と診断した。治療として、手術療法を選択し、術前の甲状腺機能コントロールのため、平成17年2月24日より、メチマゾール30 mg/日投与を開始した。しかし、3月8日に腰痛および微熱が出現、翌日には左肩関節痛も出現し、発熱も39℃台となったため、メチマゾールの副作用を疑い内服を中止した。しかし、発熱は持続し、3月11日には左肘関節の著しい腫脹および疼痛が出現したためプレドニゾロン20 mg/日開始したところ症状は著明に改善、プレドニゾロンも徐々に減量し3月22日に中止した。その後も関節炎の再発はなく経過し、ヨウ化カリウムの投与にて甲状腺機能のコントロールを行ない4月6日に当院耳鼻咽喉科にて手術を施行した。〈考察〉抗甲状腺薬は、甲状腺機能更新症の治療薬として汎用されている薬剤であるが、その副作用も報告されている。最も多い副作用は皮疹であるが、頻度は少ないものの無顆粒球症などの重篤な副作用も知られている。一方で、抗甲状腺薬によってリウマチ様症状が出現することも報告されており、全身性エリテマトーデス、ANCA関連血管炎などの症状を呈する場合ステロイドの投与も必要になることもある。抗甲状腺薬による関節痛は、比較的経度の場合が多いが内服中止後も数週間持続することも報告されており、本症例のように症状が比較的強い場合にはステロイドの投与も考慮すべきであると考えられた。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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