日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: sympo1
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シンポジウム1
臨床研修病院の立場から
山本 昌弘
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抄録

安城更生病院は692床の急性期医療を主体とした西三河南部の中核病院である。敷地内に100床の老健施設併設している。2005年度は外来患者1850人/日、入院患者680人/日、平均在院日数13.4日、病床利用率98.5%、外来診療単価15,373円/日、入院診療単価53,070円/日、救急車両搬送数566.7人/月である。2002年4月末新築移転に際し、より高機能化を目指したが、大学からの医師派遣は望めず、また、医療現場は若手医師に頼らざるを得ない現実を考え、優秀な研修医を多く集めることに重点を置いた。定員12名/年を、2002年は16名、2003年以降は20名とした。その結果、麻酔・救急担当部門が4名から8名へ、消化器内科が6名から8名へ、小児科、婦人科もほぼ毎年志望者が出ている。また、指導医層が病棟で外科・内科・循環器・ICU当直を担当できるようになった。当院の対応策をまとめる。
1.全ての職員が「研修医あっての病院であり、病院あっての研修医である」と認識する。
2.研修医自身が実力養成できていることを実感する。研修医は見学者ではなく、下請けの小間使いでもな い。指導医の下、実地修練とフィードバックを着実に行う。  
 例1:毎週火曜日午前7時からの救急カンファレンス
    出席するシニア:副院長2名(小児科、放射線科)
    外科部長、呼吸器内科部長、循環器内科部長、神経内科医長、腎臓内科医長、救急担当医
 例2:隔週土曜日午前中の講習会(研修医が望む内容を研修医自らの手で開催)  
 例3:関連大学学生の臨床実習には研修医も屋根瓦の一環として関わる。
3.大学と緊密に連携する。
 後期研修終了後または途中でも次の病院または大学で引き続き修練を継続できる。
4.後期研修プログラムを2004年度年から実行し、継続的な研修が明示されている。
5.厚生労働省の研修指導医資格を7年目以上の医師全員に取得させる(進行中)。
 2001年度と2007年初めを比較すると、医長・部長(卒後8年以降)が60名⇒69名、7年目までの常勤医44名⇒64名、研修医17名⇒40名へ増加している。救急救命センター、集中治療室、健診センター、緩和病棟等の新たな機能があり、指導医層が増えているわけではない。7年目までの医師20名増が病院を支えているといっても過言ではない。問題点は2005年度から指導医層が7名開業あるいは開業を予定していることである。
 医師不足は勤務医不足である。OECD諸国と比較して2/3の医師数を増やすこと、長時間かつ過酷で、経済的に恵まれず、絶えず訴訟に怯える勤務医の労働条件を、保健給付見直しを行って改善すること以外、根本的な解決はない。しかしながら、短期的には、地域住民の理解の下に、地域一丸となって、少ない医療資源を生かして行くことが対応策であろう。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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