日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2E04
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一般演題
年代別にみた臨床検査データと飲酒・喫煙習慣との関連について
桐原 優子林 雅人 他
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抄録

<緒言> 飲酒・喫煙習慣については健康日本21においても国民の健康づくりのために一次予防の観点から目標値を設定して取り上げられている。第53回の当学会で臨床検査データと飲酒・喫煙習慣との関連について報告したが今回は対象の例数を増やし、年代別に検討したので報告する。
<対象および方法> 対象は平成15・16年度秋田県厚生連9施設で健康診断を受診した男性7,809名とした。喫煙習慣〔喫煙無・以前喫煙有・現在喫煙有〕と飲酒習慣〔飲酒無・飲酒2合未満(以下、少量飲酒)・飲酒2合以上(多量飲酒)〕の組み合わせで区分し、検査データ(BMI・血圧・HDLコレステロール・トリグリセライド・空腹時血糖・GGT・白血球)との関連をみた。統計処理にはStat?Flex(kkアーテック)を用い、異常者頻度の有意差検定にはχ検定を用いた。
<結果及び考察>
 1) BMI異常頻度は多量飲酒・非喫煙群で高く、特に若い年代に肥満者が多く、年代とともに異常者が減っていた。現在喫煙群はとくに減少が目立った。
 2) 収縮期血圧は高齢者に高血圧者が多く、年代とともに異常者は増えている。その傾向は多量飲酒群において顕著にみられた。
 3) 低HDLコレステロールは飲酒群の異常者が少なく、喫煙群の異常者が多い。特に飲酒無・現在喫煙群において顕著にみられた。
 4) トリグリセライドは若い年代に異常者が多く、多量飲酒・現在喫煙群に顕著であった。
 5) 空腹時血糖は50代に異常者が多く、また飲酒群の異常者が多かった。
 6) GGT・白血球は若い年代に異常者が多く、70代の異常者は少ない。GGTは飲酒群、WBCは喫煙群に異常者が多くみられた。
 7) 検査項目を目的変数、喫煙・飲酒の有無を説明変数、年齢・現病歴を制御変数とし、重回帰分析で検査値との関連をみた。喫煙習慣はトリグリセライド・白血球に正の関連、BMI・血圧・HDLコレステロールに負の関連がみられた。飲酒習慣は血圧・HDLコレステロール・トリグリセライド・空腹時血糖・GGTに正の関連がみられた。
 喫煙習慣とトリグリセライドは相関していたが、非飲酒群では相関がなく飲酒群のみでみられ、飲酒習慣との重相関によるものと考えた。酒は「百薬の長」といわれているが、適量を超えれば「万病の元」になることに留意が必要である。特に毎日飲酒者は飲酒量が多くなり、問題が多いことから、特に若い年代への適量飲酒の指導が必要と思われる。
<まとめ> 飲酒・喫煙習慣と検査データとの関連を年代別にみるとBMI・トリグリセライド・GGT・白血球は若年、空腹時血糖は壮年、血圧・HDLコレステロール低値異常は高齢者に異常者が多くみられた。重回帰分析でみると、飲酒習慣は血圧・HDLコレステロール・トリグリセライド・GGTに正の関連がみられ、喫煙習慣はトリグリセライド・白血球に正の関連、BMI・血圧・HDLコレステロールに負の関連がみられた。多量飲酒・喫煙は検査データに悪影響を及ぼしており、これまでにも言われていることであるが特に若い年代への適量飲酒・禁煙の指導に関する強化が必要と考える。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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