日本農村医学会学術総会抄録集
Online ISSN : 1880-1730
Print ISSN : 1880-1749
ISSN-L : 1880-1730
第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2E06
会議情報

一般演題
胃集団検診における高濃度粉末バリウムの検討(第4報)
-発泡剤を少量バリウムで飲用-
安藤 秀人丹羽 政美深澤 基安部 威彦伊藤 栄里子伊藤 道廣末松 弘志安藤 俊郎山瀬 裕彦藤本 正夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

<背景> 第53回本学会において同一被検者による比較検討を行い、「粉末製剤バリウム(以下Ba)250gは、現状使用していた300gに比べ、胃小区および辺縁描出能の低下が明らかで、胃集団検診への導入は困難である。」と報告した。我々は、その原因が50g少ない含有量による胃内Ba濃度の低下であると考えた。そこで、胃内濃度低下を抑えるため、発泡剤を水ではなく、少量Baで飲用する方法を試みた。
<目的> 発泡剤の飲用方法を変更し、受診者のアンケート調査を含めた総合的な評価を行い、Ba250gが導入可能かどうかを明らかにする。
<対象> 平成15年及び16年に職域検診を逐年受診した76名
<使用Baと発泡剤の飲用方法> 平成15年は、300g(230%、130ml)水20mlで発泡剤飲用(方法A)。平成16年は、250g(200%、120ml)Ba10mlで発泡剤飲用(方法B)。
<検討方法>
 検討項目1-視覚評価:1.胃小区描出能 2.辺縁描出能 3.気泡形成の有無 4. 十二指腸へのBa流出量(以下Ba流出)の4項目について、認定医1名と撮影担当技師8名が、方法AとBを行った同一被検者のX線写真を比較読影した。視覚評価の基準は5点評価すなわち、Aに比べBが非常に良い:5点、Aに比べBが少し良い:4点、AとBがほぼ同等:3点、Aに比べBが少し悪い:2点、Aに比べBが非常に悪い:1点として行った。
 検討項目2-アンケート調査:対象受診者の方に、発泡剤のバリウム飲用について方法AとBを比べた意識調査を行った。
<結果および考察> 胃小区および辺縁描出能では、3に近い平均点を示し、ほぼ同等の結果が得られた。含有量の少ないBaにおいても、発泡剤をBaで飲用することにより、胃内濃度を高く保つことができたためと考えられる。
 方法Bは、気泡の増加による画質低下が懸念されたが、ほぼ同等の結果であった。気泡は、増加するとおもわれるが、撮影技術により気泡が読影の妨げにならないようにすることは可能であるとおもわれる。
 方法Aでは、胃を膨らました後、Baをいれることができるので、流出がおこりにくいと思われる。一方、方法Bでは、胃が膨らむ前にBaが入るため、流出が起こりやすいと思われたが、方法Bに流出の多い結果を示さなかった。気泡形成と同様で、撮影技術によって、十分に対応可能であると考える。
 アンケート調査では、水に比べBaの方が発泡剤が飲みやすいと答えた方が69%、次回もBaの方が良いと答えた方は73%認められ、受診者の意識はBa飲用に圧倒的に良い傾向を示した。さらに、ゲップの我慢がBaの方が楽であると答えた方も76%に認められた。以上のアンケート結果は、胃X線検査を回避する受診者の減少につながるものと思われ、受診率の向上が期待できると考える。
<まとめ> 方法Bによって、Ba250gが胃集検に導入可能であった。導入によって、受診者の負担軽減が可能となり、受診率向上が期待できると思われた。

著者関連情報
© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top