日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2E09
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一般演題
佐久総合病院職員のインフルエンザ罹患調査からみた予防接種費用と医療費の実態
中澤 あけみ小山 千恵子森 広美小林 栄子井出 真一
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抄録

<緒言>当院では、平成16年度より感染予防対策を強化し職員が無料でインフルエンザ予防接種(以下予防接種)ができるように取り組んでいる。平成17年度よりJA健康保険組合(以下JA健保)から被保険者の予防接種費が半額補助になり病院の負担も軽減した。今回、当院での健康保険加入者を対象にしたインンフルエンザ罹患調査をもとに予防接種費用と医療費について検討したので報告する。
<対象・方法>佐久総合病院のJA健保被保険者1675人全員に対して予防接種状況・未接種理由・インフルエンザの罹患状況・休んだ日数を平成17年11月から平成18年3月まで5回にわけアンケート調査を行なった。更に、インフルエンザ罹患者53人中50人(94%)の医療費を調査し平均医療費(9,573円)を算出した。今泉らの報告から接種率が低い場合の罹患率に基づき当院を当てはめ予防接種補助費とインフルエンザ罹患によるJA健保の医療費の総支出を推計し、当院の平成17年度の総支出と比較検討した。
<結果・考察>(1)1675人の各調査の回収状況の平均は、97.8%とかなり高い回収率であった。(2)インフルエンザの接種状況は接種者1.438人(85.9%)未接種者201人(12.1%)接種不明者36(2.1%)であった。未接種者の理由としては「以前接種後に具合が悪くなった」が78人(38.8%)と一番多く、次に「接種時期に調子が悪い」21人(10.4%)であった。(3)インフルエンザの罹患状況では、接種者の罹患は47人(3.3%)で未接種者の罹患は6人(3.0%)、全体の罹患率は3.2%であった。山下らの研究結果の接種率93.9%の罹患率3.0%とほぼ同様であった。期間による罹患率のピークは1月中旬_から_2月中旬で全国のインフルエンザ流行と同様にみられた。(4)罹患のための休みの状況では、接種者の休んだ平均日数は1.5日であり、未接種者は2.8日と接種者の方が1.3日少ない。(5)費用については、JA健保の予防接種補助の支出は2,444,600円で、それに対してJA健保のインフルエンザ医療費支出は355,232円の見込みとなり総支出2,799,832円。これに対し今泉らの調査結果の接種率49%の場合の罹患率17.9%を当院の1639人をあてはめ推計すると、予防接種支出は1,365,287円と低くなるがその反面、健保の医療費支出は1,966,386円になり総支出は3,331,773円で接種率85.9%より49%の方がJA健保の総支出が531,941円多くなると推計された。
<結論>今回の結果より、予防接種の補助を充実させ、接種率を高め罹患率を下げる方がJA健保の費用効果はかなりよいということが推計された。さらに、予防のメリットは費用効果だけではなく、職員の医療費負担の減少、身体面の負担軽減、仕事の効率性への影響も大きい。今後、さらに予防の評価が問われる時代になるため、インフルエンザの流行状況との関連も考慮し、費用効果等の検討を継続したい。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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