日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2E10
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一般演題
15年間の長期追跡による骨粗鬆症予防検診(骨密度測定結果)
前田 秀一伊木 雅之梶田 悦子岩佐 勢市山崎 巌三田村 純枝村中 喜代美山下 郁恵
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キーワード: 骨粗鬆症予防
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抄録

<緒言>県民の骨粗鬆症予防に資するために、平成2年に福井県大野市の山間部酪 農地区と福井市の海浜部漁業地区在住の35歳以上の中高年女性を対象に腰椎骨密 度と生活調査を実施し、15年が経過した平成17年に追跡調査を実施した。
<方法>調査対象は、初回の受診者(山間部:90名、海浜部131名)の計221名であ る。その内、拒否、死亡、施設入所、転居者は除外した。調査内容は、以下の通りである。
<骨密度測定>バス搭載型2重エネルギー_X_線吸収法(DXA)骨密度測定装置(Hologic社製QDR4500A)を用い、腰椎骨密度を測定。骨密度変化率は、初回骨密度から追跡時骨密度を差引き、追跡年数の15年で除して1年当たりの変化率を求めた。
<生活調査>初年度とほぼ同様の調査票を事前配布し、特に牛乳摂取状況を主に食習慣等を保健師が面談にて聴取した。
<結果>受診者(率)は134名(60.6%)であり、平均年齢は70.5±9.2歳(山間部:67.2±8.7歳、海浜部:72.5±8.9歳)であった。骨密度の判定は日本骨代謝学会の診断基準を用いた。骨粗鬆症と判定された人は、50歳代で20%と出始め、加齢ともに増加する。逆に正常を見ると、50歳代では64%であったが、60歳・70歳代では20%程度に、80歳代ではわずかに5.9%となっている。
 図1には初年度と15年後の骨密度の変化を示した。30歳代ではわずかに低下し、40歳、50歳代では閉経時期にあたることから、低下率が大きく閉経の影響が見てとれる。60歳以降になると、骨密度の大きな低下は見られず、閉経の影響は60歳代でほぼおさまってくるものと思われる。
 図2には15年間の地区別腰椎骨密度の年間変化率を示した。いずれの年齢階級においても山間部に比較し、海浜部の変化率が少なかった。また、年齢階級を比較すると、40歳代での変化率が大きかった。
骨密度変化と生活要因との関連では、全対象で牛乳をこの15年間に1日1本以上飲用する者の骨密度の低下が少なかった。また、有経、閉経に関わらず、体重減少群は骨密度が大きく低下した。
<考察>高齢社会が進展する中、女性の骨粗鬆症を起因とした「骨折」を予防することが健康長寿社会の実現には不可欠である。閉経後に急激に骨密度が低下することから、閉経時期までの骨密度低下を如何に抑えるかが重要である。骨密度低下はそれ単独では重大な支障を来たさず、問題は骨密度低下によって起こる「骨折」である。15年の長期追跡調査から適正体重の維持、牛乳摂取の有効性が示唆され、本結果を県民の骨折・骨粗鬆症予防活動に役立てていきたい。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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