日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2E14
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一般演題
佐賀県の離島在住高齢者の心理的・物理的サポートの実態
平成11年と平成17年の比較
濱野 香苗
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抄録

<緒言>佐賀県の海上にあるA島の老年人口割合は28.8%で、全国19.5%、佐賀県22.1%を大きく上回っており、さらに増加が予測される。高齢者が地域で満足のいく生活を送るためにはどのようなサポートシステムを構築すれば良いかを考える基礎資料として、A島の高齢者の心理的・物理的サポートの実態を調査し、平成11年と比較した。
<研究方法>A島の65歳以上の高齢者154名のうち、調査に同意の得られた120名を対象とした。構成的質問紙を用いた面接調査を、平成17年6月から11月に行った。調査内容は属性および心理的サポート、物理的サポートである。心理的サポートは心配事や悩み事を聞いてくれる人、気を配ったり思いやったりしてくれる人、元気づけてくれる人、くつろいだ気分にしてくれる人の有無を、いつもいる(3点)から特にない(0点)のリッカートスケールで求めた。物理的サポートはまとまったお金が必要な時に貸してくれる人、留守やちょっとした用事を頼める人、短期間の病気の時に看病や世話をしてくれる人、長期間の病気の時に看病や世話をしてくれる人の有無を、いつもいる(3点)から特にない(0点)のリッカートスケールで求めた。分析方法はχ検定を行い、5%を有意水準とした。
<結果>性別は男性50名、女性70名であり、年齢は65歳から97歳、平均年齢76.3歳であった。世帯構成は、配偶者と二人暮らし30.8%、配偶者・子供家族と同居25.0%、子供家族と同居22.5%、独居17.5%であった。宗教は仏教50.8%、カトリック48.3%、神道0.8%であり、主観的健康状態は良い33.3%、悪い30.0%、普通24.2%であった。 
 心理的サポート(12点満点)は低い(0-3点)3.3%、中程度(4-8点)13.3%、高い(9-12点)83.3%であり、平成11年は低い6.6%、中程度9.8%、高い83.6%で、有意差は見られなかった。平成11年、平成17年両方に回答した81名中、心理的サポートが増したのは28.4%、減ったのは14.8%であった。 
 物理的サポート(12点満点)は低い(0-3点)0.8%、中程度(4-8点)11.7%、高い(9-12点)87.5%で、平成11年は低い4.9%、中程度13.1%、高い82.0%であり、有意差は見られなかった。平成11年、平成17年共に回答した80名中、物理的サポートが増したのは31.3%、減ったのは26.3%であった。6年前と比較した互いの支え合いの強さの変化は、変わらないと強くなったを合わせて70.8%であった。
<考察>A島の65歳以上の高齢者の心理的サポートと物理的サポートは8割が高いサポートであり、平成11年の調査結果とほぼ同じ結果であった。また心理的サポートも物理的サポートも6年前よりも増えた割合の方が多かった。支え合いの強さも7割は変わらないや強くなったと感じており、島民間の地域のサポートシステムが維持されていることが明らかになった。さらに増加するであろうA島の高齢者が住み慣れた島で生活するためには、平成12年に導入された介護保険等の公的サポートの活用と共に地域におけるサポートシステムを維持することが重要であると考える。 
 本研究は平成17年度科学研究費補助金(基盤研究)による研究の一部をまとめたものである。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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