日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2E18
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24時間母児同室が母乳分泌と新生児の体重減少に与える影響
柳瀬 智恵美上田 征子竹内 麻里子鎌田 菜香
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抄録

<はじめに>当院の母児同室は、出産翌日より開始され消灯後は授乳の時間に新生児室へ母が通う方法であった。2004年4月より良好な愛着形成と母乳栄養の確立をめざし、出産当日より24時間母児同室を導入した。そこで直母回数・母確率・新生児の体重減少に与える影響について分析、検討した。
<研究方法>
1)対象…平成14年10月から平成17年9月までの期間、当院で経膣分娩にて出生し出生から退院まで当病棟に在籍した544名(低出生体重児、光線療法を受けた児を除く)。
2)方法…対象を以下の群に分け、新生児カルテより集計した結果から、X2検定による有意差を求めた。
A群…夜間母児異室、243名。
B群…24時間母児同室、301名。
<結果>
1)直母回数
 (1)平均直母回数
A群:6.8回/日 B群:9.3回/日
 (2)時間帯別直母回数
A群:7時から12時・・・1.8回、12時から21時・・・2.9回21時から7時・・・2.1回
B群:7時から12時・・・1.9回、12時から21時・・・3.9回21時から7時・・・3.5回
2)退院時母確した人の生後72時間の直母回数
3)最低体重減少率
A群・・・8.0% B群・・・7.7%
4)日齢1の糖水追加人数
5)母確率
<考察>産褥初期において、乳汁分泌の発来とその確立には高濃度の血中プロラクチンを必要とする。そのため出生直後からの頻回の吸啜刺激が必須である。退院時母確した人の生後72時間の直母回数はB群で有意に多く、頻回の直母により母乳分泌が促進された結果といえる。日齢1の糖水追加人数はB群で有意に少なかった。出産直後からの24時間母児同室により早期から直母が可能になった結果である。また、両群の体重減少に有意差はなく、今までの糖水追加は不要であった事がわかった。
 退院時の母確率は、両群に有意差はなかったが、一ヶ月健診時の母確率はB群で有意に高かった。これは、早期の頻回直母による母乳分泌促進の効果や24時間一緒に過ごす事で一日のリズムを母が体感できた結果と考えられる。
 直母回数が多いにもかかわらず母確しなかった人は、有効な吸啜が行われていなかった可能性がある。有効な吸啜でなければ母乳分泌の促進もされず、正しい授乳姿勢(ポジショニング)や児の正しい吸着(ラッチ・オン)が行われなければ乳首のトラブルにもつながる。
 現在当院では、ポジショニングの指導や吸啜が困難なケースに搾乳の指導やナーシングサプリメンターなどの補足用補助器具を使用した直母を行っており、その効果については今後の研究課題としたい。
<結論>
1)退院時母確した人の直母回数は有意に多かった。
2)退院時の母確率は有意差がなかった。しかし出生直後より母児同室を開始することで糖水追加を必要とした児が減少した。
3)糖水を追加しなくても体重減少には影響を及ぼさなかった。
4)1ヶ月健診時の母確率は有意に上昇した。
 

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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