日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2E24
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一般演題
信州ドクターヘリの活動報告
岡田 邦彦渡部 修佐藤 栄一長尾 知哉篠原 玄斉藤 太
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抄録

 信州ドクターヘリは佐久総合病院を基地病院として、平成17年7月から運航を開始した。当初は長野県の東信地域をはじめとして全県下にかけてのシミュレーションを行いつつ、その運航範囲を広げて行き、10月の終りには全県下を対象とするようになった。
 出動実績を見てみると、この3月までに233件の出動要請があり、現場出動が141件、施設間搬送が37件、キャンセルが12件であった。その内容を検討してみた。
 月別に見てみると、8月と冬場に出動が多く見られた。8月は東信地域にある菅平ラグビー場での外傷が多く見られ、冬場はスキー場での外傷、特にスノーボート゛における外傷が多く見られた。このスノーボードにおける外傷は3月終わりまでに約70件を数えた。
 地域別に見てみると当院から半径約30kmの範囲にある東信地区、つまり佐久・上田地域への出動が137件、それより遠い地域への出動が41件であった。特に冬場になってからの東信地域以外への出動が多く見られるようになった。
 目的地までのフライト時間は、最初の2ヶ月は平均12分であったが、しだいに伸びて行き、平成18年1、2月では平均20分を要し、遠くまでのフライトが増えていることがわかった。
 疾患分類では外因性が127件、内因性が52件であった。外因性では外傷が119件と圧倒的に多く、内因性では心大血管系が17件で最も多かった。
 この9ヶ月間を通して実感できた事は、ドクターヘリの有効な運航のためには、現場の救急隊員の適切で迅速な判断がもちろん大切であるが、受け入れ機関側もそれに応じたスムーズな対応が不可欠なことである。
 我々はドクターヘリの効果的な運用および普及をめざして、当初より毎月の事例検討会を行ってきた。開催場所は基地病院に限定せず、要請が多く見られる地域での検討会も行ってきた。これにより多くの救急隊および医療機関の声を聞くことができ、ドクターヘリの普及が県下に進んできたと評価している。
 最後に曜日別に出動実績を見てみると、土日で40%以上を占めており、まだ日常の救急医療体制に浸透しているとは言い難い。信州ドクターヘリが今後長野県の救急医療に少しでも貢献できるように、そのPRに努め、実績を積み重ねてゆきたい。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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