日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2F16
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一般演題
診療録開示における診療情報管理士の役割について
望月 剛窪田 薫室 美香石川 一博
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抄録

<はじめに>
当院では平成13年から「診療録等開示実施要綱」を策定し、診療情報の提供を行ってきた。これは、患者と医療従事者が情報を共有することで、信頼関係を深め、質の高い医療の実践を目指すものである。そのためには、患者や家族にも理解できるような、診療録の作成が不可欠と考えられる。
今回、増加している診療録開示の傾向と診療録の記載について診療記録を管理する立場の視点から報告する。
<当院における近年の開示件数の推移と傾向>
 診療情報開示件数
   H13年度(11月から)・・・1件
  H14年度・・・9件 H15年度・・・10件
  H16年度・・・13件 H17年度・・・25件
 平成13年11月から診療情報の提供を開始してから平成16年まで大きな変化はなかったが、平成17年度には倍に件数が増えている。従来の開示の傾向としては医療事故や医療過誤に関わる開示請求が大半であった。しかし、最近の動向としては、医療事故や医療過誤とはまったく無関係な患者から自分の診療内容や経過について知りたいということで開示を求めるケースが増加しつつある。
<診療録の位置づけ>
診療録の記載内容は、個々の医療従事者の裁量で記載されているのが現状であるが、患者の権利主張が強くなっている中では「診療録は、医師・医療従事者自身のメモではなく、患者の記録であり共有情報である公的文書」という認識を強く持つ必要がある。
<記載のあり方>
診療録開示が増加する中、開示のために記載を慎重にするのではなく、日常的に行なう記載が開示に耐えうる内容である事が求められる。そのために、医療従事者は常に患者本人が診療録を見た時にどのような印象をもつかを念頭に置きながら記載をするべきである。
診療録への記載は、次の人(勤務者・世代)に必要な情報を引き継ぐことも目的にあり、様々な職種が関わったチーム医療の全てが凝縮されたわかりやすく正確な内容でなければならない。
<診療情報管理士としての開示への関わり方>
従来、診療情報管理士の業務は物の管理という面が強かったが、電子カルテとなった現在では診療情報の管理・活用という部分が重要になってきている。その1つとして診療録の記載について内容監査を行なう事によって精度を管理し保証することがあげられる。さらに診療録開示においては院内における様式・書式の作成や、開示の諸手続き・運用方法の構築などにも積極的に携わっていく必要がある。一般企業と異なり,病院はセクショナリズムが根強く存在することから,診療録開示をきっかけとして記載の組織的な考え方を医療従事者全体が共有できるように情報発信し方向付けをしていく役割も担わなければならない。
また最近では診療録開示を紙媒体ではなく、電子媒体で提供したり、患者家族からの開示請求に応じたりなど多様化していく要求に迅速な対応を行なう必要もある。
<まとめ>
今、診療録開示が一般的になりつつある中で、安城更生病院の診療録は、日々の医療行為が正確に記載され、かつ日常の診療に役立つものであり、さらに情報共有や情報開示にも対応できる記載内容を目指している。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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