日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2F18
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一般演題
全身麻酔クリニカルパスの導入とその効果
菊池 優子三舩 真紀子泉 由紀子茂内 梓由子佐藤 やよい
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抄録

〈緒言〉 全身麻酔で手術を受ける患者に対し、緊急手術や意識障害のある症例を除くほぼ全例に術前訪問を行い、不安の緩和を図ると共に得られた情報を基に術中看護を展開し評価してきた。しかし従来の方法では統一した説明ができず、使用していた用紙は患者の情報から問題点・目標・評価まで網羅されていたが、内容はパターン化した経過記録的なものであり、記載にも時間を要していた。
そこで術中看護の標準化を目的に、全身麻酔手術にクリニカルパス(以下パス)を導入した。
〈方法〉
1.目的  
 1)患者用パス、医療者用パスを作成する  
 2)術中看護をパスにより標準化する。  
 3)パス導入による効果を明確にする。
2.期間 平成17年4月から平成18年3月
3.対象 手術室看護師19名(師長を除く)
4.方法: 1)パスを作成      
       2)術前訪問、術中看護時使用      
       3)使用開始3ヵ月後アンケート調査
5.倫理的配慮  
研究の主旨とプライバシーの保護を保証。 アンケートの内容は今回の研究以外には用いないことを説明。
〈結果〉 術前訪問時に使用する患者用パスと術中看護時使用する医療者用パスを作成した。 患者用パスは出棟時から退室までを1枚の用紙にイラストを多用しわかりやすいように作成した。医療者用は入室前の部屋・ME機器の確認から退室時の病棟看護師への申し送りまでを時間・項目毎に一連の流れに沿って作成した。パス用紙内にアウトカムを明示し、評価欄を設けた。また問題発生時にはフォーカスにて記入できるよう看護記録欄を設けた。使用基準はこれまでと同様、全身麻酔で手術を受ける意識障害のない患者とし、看護計画は別紙にフローチャートで示した。
 使用3ヵ月後に師長を除く看護師19名アンケート調査を実施したところ、予定術式やアレルギーの有無の追加、表現方法の変更や、イラスト追加の希望がありそれらの意見を取り入れパスを改訂した。
 ほぼ全員の看護師は術前訪問に患者用パスを使用しておりメリットを感じていた。パス使用により経験の差に関わらず、短時間で統一した説明ができることは効果的な新人教育のツールにもなった。
 医療者用パスもほぼ全員がメリットを感じ使用している。特に新人にとっては標準パターンの学習が容易になると共に自分のできていない点や理解できていない点が明確になる。また他の看護師においても基本的な確認行為の実施により安全対策の徹底に繋がった。
 記述式の記録の削減により、評価の記載が簡単になり時間が短縮され、これまでの問題点が解決できた。またアウトカムの明示により達成のために何をすべきかを確認できるようになったことは、パスによりこれまでのプロセス重視からアウトカム重視の看護に変わっていった。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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