抄録
<緒言>当院では、以前からタッチケアは行われていたが、保育器内のタッチケアが統一されず、その有効性も曖昧な状況であった。私達医療者が母親代わりとなり統一したタッチケアを行なう事で、児へのストレスがより軽減できると考えた。そこで有効なタッチケアの方法を検討したので、ここに報告する。
<方法>
1.研究期間:H18年5月12日~9月10日
2.研究対象:早産児(30~36週)で保育器内、着衣抱っこができない児。
3.研究デザイン:量的・準実験研究
4.データーの収集方法
1)実施時期:母乳または人工乳の注入1時間後から次の注入までの間で覚醒ステージ5(はっきりと覚醒・活発な自発運動~Dubowitz評価より)の状態の時、処置後は必ず実施する。
2)手順について 手順A群:非統一の今まで行っていたケア。啼泣時に空乳首(哺乳瓶の乳首を児にくわえてもらうこと)・トントン(児の背中を軽くたたき落ち着かせる)・腹臥位をそれぞれ組合せて行う。手順B群:統一したケア。手を温めてから胸部又は腹部を片手でそっと当て、5分間タッチング実施する。
3)施行者:NICUのスタッフが、評価者(記録者)と実施者1名ずつに分かれ実施。
4)ストレスケアチェックリストについて
観察方法(1)HR(2)呼吸数(3)多呼吸(4)無呼吸(5)あくび(6)泣き止まない・浅い眠りについて手順A群・B群共に施行前、開始5分後、終了5分後、ストレスサインチェックリストを用いそれぞれ観察する。
5.データーの分析方法
事例数が少なかったためストレスサインチェックリストを基に単純集計を行い、手順A群と手順B群を比較。手順B群の方が開始5分後、終了5分後にストレスサインチェックリストに記載されているストレス反応が消失、もしくは軽減、バイタルサインの安定があれば有効性があると評価する。
<結果>
手順A群では開始5分後、6例(100%)観察項目3項目が軽減。終了5分後では、4例(67%)観察項目4項目がストレスサイン軽減があった。手順B群では、開始5分後は14例(88%)観察項目4項目が軽減。終了5分後では、14例(88%)観察項目5項目のストレスサインの軽減があった。
6.倫理的配慮:情報の保護、及び研究以外の目的には使用しない
<考察>手順A群では、個々のスタッフが自己学習し、その時に最も良いケアを行ったため、開始5分後は、良い結果となったと考える。しかし持続性では手順B群の方がより効果が持続している。このことより、手順B群では、手順A群のケアよりも関わりを持てたことや、医療者が母親代わりとなってタッチケアを統一して行ったことで効果が持続できたのではないかと考える。
<結論>
1.手順A群は一時的なストレスの軽減には有効であった。
2.手順B群は、手順A群よりも児が安定した状態を維持できることが分かった。
<参考文献>
1)木原秀樹:ディベロップメンタルケアの基本~赤ちゃんにやさしい個別的なケアの実際~、メディカ出版、2005年5月発行。
2)前川喜平:タッチケアマニュアル、日本タッチ研究会