日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2B31
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一般演題
退院指導における看護師の役割、治療的人間関係についての一考察
五十嵐 里美
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抄録

はじめに 入院は患者・家族にとって生活環境の変化や、疾患・検査・手術への知識不足から不安になることが多い。  今回、夫婦共に聴覚障害者の65歳女性の退院前の食事指導をする機会を得た。  対人的プロセスを振り返り、看護者の指導的役割が果たせたか考えたい。 _I_.患者紹介 1.診断名::盲腸癌、肝転移  2.術式:回盲部切除術、胆嚢摘出術 3.ケーススタディにおける倫理的配慮  ケーススタディを行うことについて同意を得、プライバシーの保護を行う。 _II_.看護の実際 1.問題点(問題点#6について述べる。) #6 非効果的治療計画管理:疾患、食事療 法についての知識不足 2.到達目標 1)食事や退院後の生活の不安を訴えることなく退院できる。 3.解決策(O-P、C-Pは省略) 1)E-P(一部省略)  (1)食事療法についての説明 筆談、パンフレット、カードを使用。患者の理解の程度や状況に合わせて指導する。  (2)病院食の献立を活用し現在食べているもの とパンフレットを比較、今後の献立の参考に してもらう。 _III_.考察  患者は食事、退院について不安を訴えた。これは自分の問題が何なのか認識したと考えられる。 また、食事指導後、質問したことは、自分のニードに適切に応えてくれる看護師を特別な存在として捉えたと思われる。 そして、具体的な調理方法が聞かれなかったことは受け身の状態で、依存的だったと考えられる。 以上のことから患者はペプロウの患者-看護師関係における同一化の段階であるといえる。  この依存から次の段階の自立に向けての援助を行なった。自立と依存のバランスを調整し、患者が自立に向かうよう、 仕向けようとする代理人の役割、情報を提供し、教育的に関わったことで、退院後の前向きな言葉が返ってきた。 以上のことからペプロウの患者-看護師関係の同一化の段階から開拓利用の段階になったと考えられる。  竹尾は「ぺプロウの看護のゴールは健康問題が解決することでなく、患者が「自分が回復した(良い方向に向った) と実感することなのだ。」1」と述べている。今回は、健康問題は解決しなかったが、開拓利用の段階へステップアップした ことはぺプロウの言う看護のゴールに近づいたのではないかと考える。 _IV_.結論 看護師の役割を理解し、それを活用することで治療的人間関係を築くことができ、健康問題の解決に向けて効果的に関わることができる。 おわりに  今回、聴覚障害患者との治療的人間関係を築くことの難しさを感じた。今回の経験を患者の健康問題の解決に生かしていきたい。 引用文献 1)竹尾 恵子:超入門事例で学ぶ看護理論、        学研、P84、2003

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© 2007 一般社団法人 日本農村医学会
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