日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2F406
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一般演題
DPC入院期間別パスとバリアンスの分析
間宮 光子江連 とし子神林 とも子玄 東吉
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抄録

<はじめに>
当院では、2006年6月から診断群別包括支払い制(以下DPCと略す)が導入された。先行研究ではDPC第一段階として、既存のパスがDPCに対応できるか否かを全国標準パスとのベンチマーキングを実施した。
その結果を基に一部のパスを修正・改定し、DPC対応パスとして運用することにした。現在のところ新パスへの移行は、スムーズに行われている。その中にあってDPC対応パスの_I_期、_II_期、_III_期それぞれに特徴と一定の傾向がみられる。
そこで、各疾患ごとに入院期間とバリアンスデータの内容を分析し、問題点が明確化されたのでその結果について述べる。
<方法>
バリアンスデータから
_丸1_ DPC対応パスの入院期間を_I_期、_II_期、_III_期に分類
_丸2_ パス予定日数と実日数を期間比較し、実日数がどの期間に入っているかを分析
_丸3_ バリアンスの内容を分析
<対象と期間>
 平成2006年6月より平成2006年12月までに当院全病棟で運用されたパス使用の症例
<結果>
_丸1_ 診断群別疾患分類におけるパス
入院期間_I_に適応するパスは、18種類(ヘルニア、蜂窩識炎など)である。入院期間_II_に適応するパスは、74種類(ESWL、PCI、TUR-TB、脳梗塞軽症など)。入院期間_III_に適応するパスは、32種類(ラパコレ、気管支喘息など)。
_丸2_ 設定期間内退院の状況
設定期間内での退院が達成できた割合は、入院期間_I_で69%、入院期間_II_で 59%、入院期間_III_では57%であった。
_丸3_ 各疾患におけるバリアンスの内訳
期間_I_のヘルニアや蜂窩識炎では、患者の回復の遅延や合併症の出現がそのほとんどを占めている。期間_II_では、ESWL、PCI、TUR-BT、脳梗塞などがあり、これも患者の回復の遅延や合併症の出現が多く、次いで指示の追加・変更などが多かった。期間_III_においても期間_II_同様のバリアンスが多く、複数のバリアンスコードが重なる症例が多くなっている。また、バリアンス発生率も_I_期・_II_期に比べ多くなっていることがわかった。
<考察>
 入院期間_II_のパスがパス全体の60%を占めており、ベンチマーキングとの大きな差は見られなかった。すなわち、当院のDPC対応パスのバリアンスデータの集積、解析の実施による貢献が反映されたと考えられる。しかし、26%を占める入院期間_III_パスは、その30%が充分に期間_II_に改訂可能と思われる。またそのためには、今後さらにDPCに則したパスの評価と修正が必須である。
 バリアンスの内訳では、_I_、_II_、_III_期ともに患者の回復の遅延や合併症の出現が圧倒的に多いことから、パスの内容を見直す必要があると思われる。一方で、_III_期から_II_期へと期間短縮可能なパスの存在も明らかになった。
<まとめ>
_丸1_ 今回私たちは、既存パスをDPCの_I_、_II_、_III_期に対応して分類してみた。 _丸2_ ほとんどのパスは、期間_II_に分類された。
そして、バリアンスデータは患者側の回復の遅延などが原因であった。
_丸3_ _III_期パスで、_II_期に移行可能なものは改訂していきたい。
_丸4_ 今後DPC、パス、バリアンスデータを一体化するプログラムを構築していくため、データ集積を継続して行きたい。

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© 2007 一般社団法人 日本農村医学会
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