日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2F413
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一般演題
院内看護師による在宅訪問の実施とその結果
~看護師・患者へのアンケート調査から~
大山 康子大山 三雪
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抄録

〈はじめに〉診療圏内の高齢化・過疎化の進行が著しい当院は、健康で明るい地域づくりに貢献することを基盤として医療活動をおこなっている。しかし看護部としては院内看護にとどまっており、地域へ向けた看護活動は積極的ではなかった。そんな中、看護の日のイベントとして「患者が暮らす地域へ出向いてゆっくり話をしましょう“face to face”で!」というキャッチフレーズを掲げ、看護師全員が在宅訪問を実施した。訪問の目的は「看護が患者の自立支援に繋がっているかの評価を行う」「患者や家族の暮らし向きに合わせた看護を学ぶ」「看護師を患者の身近な存在として認識して頂き、人間関係の構築を図る」の3項目とした。過去3年間の看護師・患者へのアンケート結果を報告する。
〈研究目的〉「在宅訪問」が看護師および患者・家族にとって意義のあるものかどうかを検証する。
〈方法〉
1 患者訪問
1)患者の選択基準は上記3項目を念頭において入院又は外来患者で「気になる人」とする。
2)看護週間を中心とした2ヶ月間に看護師全員が、2人1組または1人で訪問する。
3)訪問の目的を伝え了解が得られた患者の家庭または施設へ、自分の休日を使って訪問する。
2 アンケート調査
1)看護師アンケート:気になった理由、訪問結果、目的達成、満足度の有無、訪問の必要性等を看護師が記入する。
2)患者アンケート:訪問の良し悪し、今後の訪問活動等の項目とし、本人または家族が記入後、持参した封筒と切手で投函して頂くか閉封後に看護師が持ち帰る。
〈結果・考察〉看護師・患者家族共に在宅訪問を良いことであると捉えている。看護師の「気になる患者」では、病状的要因よりも環境的要因が多い。過疎化が進む当地域で、高齢者がいかに生活しているかを気がかりに思う看護師が多いことを意味する。
看護師は「訪問の目的達成」「満足度」「今後地域へ出向くことの必要性」共に半数以上が良い評価をしている。このことは日頃の患者との関わりにおける生活指導上の反省ばかりか、地域環境を知るきっかけになったこと、患者・家族に喜んでもらえた等、目的の達成に繋がっている。またどんなところで暮らしどのような日々を過ごされているかを知ることで、病院看護師として入院中から患者のどこに視点を置いた関わりをすればよいかが見えてきたのではないだろうか。そしてなによりも患者が訪問したことを喜び懐かしく思ってくれたことが、看護師自身の満足に繋がり、更には看護師の視野を広めるばかりか、やる気を起こさせる発端にもなったと考える。
患者・家族は「今回の訪問」及び「今後の訪問活動」を良いことであると捉えている。老々介護や一人暮しが多い現状から、看護師を話し相手・よき相談相手と認識している面もあるが、この活動は患者の安心感にも繋がる活動であり、在宅と病院を繋ぐ懸け橋にもなるといえる。
〈結論〉院内看護師にとって在宅訪問は看護の視野を広め、適切な看護を提供する為の基礎となる活動である。患者にとって専門知識を持った看護師の在宅訪問は安心感が得られる活動であり、身近な相談者としての役割が期待されている。

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© 2007 一般社団法人 日本農村医学会
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