日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
セッションID: sympo-2
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シンポジウム-2
離島住民の医療を如何にして支えるか??
?新潟県粟島浦村の遠隔テレビ電話診療?
小出  章松浦 ユリ子
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キーワード: テレビ電話, 遠隔診療, 離島
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抄録

新潟県岩船郡粟島浦村は、村上市の北西35kmの日本海に位置する長さ7.5km、幅3.5km、面積9.14km2の離島である。粟島浦村の人口は2007年(平成19年)4月現在で370人、このうち65歳以上の住民は177人、高齢化率は47.8%である。島には村立粟島浦村小中学校があるが、2007年4月現在、生徒数は小学生9人、中学生13人の計21人で、少子化も顕著である。主な生業は、タイ漁を代表とする沿岸漁業と観光である。  島には医師の常駐した時期もあったが、1959年(昭和35年)から無医村となり、現在にいたっている。1961年(昭和36年)に粟島へき地出張診療所が開設され、1967年(昭和42年)から村上市岩船郡医師会の医師による診療所への出張診療が開始されたが、診療日は日曜などの休日に限られ、期間も天候や海象の比較的よい5月から9月の5ヶ月に限られたため、島民の医療的需要に十分に応じることはできなかった。また天候不良のため診療日に定期船が欠航し、出張医が診療日に島に行くことができないという事態も時に生じた。出張診療に並行して、1977年(昭和52年)からは、粟島へき地出張診療所と村上市にある病院との間で、ファクシミリを用いた週に1回の定期的な遠隔診療が開始された。粟島へき地出張診療所の看護師が、島の患者の主訴、症状、理学的所見、検査所見などの情報を事前に病院の担当医へファクシミリで送信し、これらの情報をもとに担当医が処方や処置の指示を診療所の看護師へファクシミリで返信するシステムである。ファクシミリを用いた遠隔診療システムは、天候や海象の影響を受けず、1年を通じて週に1度定期的に行われるという点で、当時島民に歓迎された遠隔診療システムであった。しかしながら医師は患者から直接に視覚的・聴覚的な情報を得ることができず、遠隔診療のための情報通信システムとしては時代的、技術的に多くの限界がみられた。  2000年(平成12年)12月、粟島へき地出張診療所と当院がテレビ電話回線で接続された。テレビ電話を用いた遠隔診療システムは、島の急患に対する診療を、365日、24時間態勢で可能にした。2001年(平成13年)11月には週に2回の定期テレビ電話診療を加え、離島の医療支援としてかなりの成果を上げつつある。  テレビ電話を用いた遠隔診療システムを中心として、無医村・粟島浦村に対する当院の医療支援を紹介する。

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© 2007 一般社団法人 日本農村医学会
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