日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1D21
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一般演題
降雪量が糖尿病患者に及ぼす影響
佐藤 敏光柳澤 宗戸田 恭子佐藤 奈菜子松岡 悟坂本 哲也
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キーワード: 豪雪, HbA1c, 除雪作業
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抄録

【はじめに】運動療法は糖尿病患者の基本治療の一つであるが、北国に住む者にとって、冬の気温の低さと降雪は運動療法の妨げとなる。しかし、一方で、除雪作業は日常生活に必要不可欠な重労働であり、むしろ活動量が増加することも考えられる。平成18年1月、秋田県は昭和48年以来32年ぶりの豪雪にみまわれたが、翌平成19年1月は降雪が殆んど無い暖冬となった。そこで、この2年における冬期間のHbA1cの変化を比較し、降雪量が糖尿病患者に及ぼす影響について検討した。 【対象】当院の循環器を受診している患者のうち、糖尿病を有し、平成17年11月、平成18年2月、同11月、平成19年2月にHbA1cの測定を行った患者135名。平均年齢72歳±8.4歳、男性70名、女性65名。 【方法】前年11月のHbA1cを基準に、降雪量が最も影響を及ぼすと考えられる翌年2月のHbA1cとの差を?HbA1cとして、カルテから後方視的に調査し、性別、年代別の検討を行なった。降雪量は秋田気象台発表のものを使用した。 【結果】降雪量は平成18年冬417cm、平成19年冬72cmであった。全体では平成18年の?HbA1c(?HbA1c(H18))は+0.1%、平成19年の?HbA1c(?HbA1c(H19))は+0.36%(P<0.001)で平成19年の増加の方が大きかった。性別では、男性は?HbA1c(H18)0%、?HbA1c(H19)+0.38%(P<0.001)、女性は?HbA1c(H18)+0.25%、?HbA1c(H19)+0.33%で男性の方が?HbA1c(H18)は小さく?HbA1c(H19)は大きかった。年代別では、60歳未満は?HbA1c(H18)-0.54%、?HbA1c(H19)+0.17%、60歳代は?HbA1c(H18)-0.1%、?HbA1c(H19)+0.14%、70歳代は?HbA1c(H18)+0.21%、?HbA1c(H19)+0.54%(P<0.001)、80歳代は、?HbA1c(H18)+0.34%、?HbA1c(H19)+0.28%であった。?HbA1c(H19)がいずれの年代においても正で、冬期のHbA1cの増加を示していたのに対し、?HbA1c(H18)は、若年では負になっており、年齢が上がるにつれ増加する傾向が見られた。また、?HbA1c(H18)は80歳未満では、すべての年代で?HbA1c(H19)より小さかった。 【考察】?HbA1c(H19)は、性別、年代別を問わず正となっており、暖冬では糖尿病患者のHbA1cは上昇していた。一方、?HbA1c(H18)は男性ではゼロで、若年では負になっていた。男性、若年者は除雪作業の主な担い手であり、豪雪時には除雪に従事する糖尿病患者ではHbA1cが低下することが示唆された。 【結語】暖冬では糖尿病患者のHbA1cは上昇していたが、豪雪時には除雪作業に従事する糖尿病患者ではHbA1cが低下することが示唆された。

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© 2007 一般社団法人 日本農村医学会
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