日本農村医学会学術総会抄録集
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第57回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1J092
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一般講演
長野松代総合病院における乳腺穿刺吸引細胞診検査の成績
淺倉 勝丑山 茂大谷 里美金田 睦春日 好雄坂口 博美村松 沙織上原 剛小林 基弘
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抄録
【はじめに】長野松代総合病院(以下当院)において扱われた乳腺腫瘤に対する乳腺穿刺吸引細胞診検査(fine needle aspiration cytology,以下FNAC)の成績を評価したので報告する.
【対 象】2002年7月から2007年8月までに当院外科を受診し乳腺腫瘤としてFNACが施行され,その後組織学的診断がなされた全127症例を対象とした.内訳は良性腫瘤性病変が19例(患者の平均年齢:34.7±12.0(SD)歳),悪性病変が108例(60.3±10.9歳)で,対象は全て女性であった.
【方 法】診断は学会認定資格を有する細胞検査士と認定病理医により行われた.細胞診断結果は,検体不適(細胞を認めない),陰性(classI,II),疑陽性(classIIIa,IIIb),陽性(classIV,V)とした.検討内容は以下の3項目とした.(1)良性腫瘤性病変におけるFNACの成績(2)悪性病変(浸潤性乳管癌,非浸潤性乳管癌,Paget病)におけるFNACの成績(3)浸潤性乳管癌の組織型別FNACの成績
【結 果】(1)良性腫瘤性病変におけるFNACの成績においては良性腫瘤性病変19例中,陰性が14例,疑陽性5例(乳腺症4例,葉状腫瘍1例)であったが,陽性と診断した症例はなかった.(2)悪性病変におけるFNACの成績については悪性病変108例中,浸潤性乳管癌は93例で検体不適2例(2.2%),陰性1例(1.1%),疑陽性21例(22.3%),陽性69例(74.4%)であった.非浸潤性乳管癌は14例で検体不適1例(7.1%),陰性2例(14.2%),疑陽性9例(64.5%),陽性2例(14.2%)であった. Paget病は陽性であった.(3)浸潤性乳管癌の組織型別FNACの成績については,硬癌48例では,検体不適2例(4.2%),陰性1例(2.1%),疑陽性11例(22.9%),陽性34例(70.8%)であった.乳頭腺管癌16例では,疑陽性3例(18.8%),陽性13例(81.2%)で,充実腺管癌12例は全て陽性であった.乳癌の特殊型に分類される粘液癌6例では,疑陽性2例(33.3%),陽性4例(66.7%)で,内分泌細胞癌4例では,疑陽性2例(50.0%),陽性2例(50.0%)であった.浸潤性小葉癌3例においては,疑陽性2例(66.7%),陽性1例(33.3%)であった.アポクリン癌2例,髄様癌1例は全て陽性であった.
【考 察】当院の非浸潤性乳管癌の発生頻度は乳癌108例中14例(13.0%)であった.浸潤性乳管癌の中で最も疑陽性の頻度が高かったのは特殊型に属する浸潤性小葉癌で3症例中2例(66.7%) であった.次いで内分泌細胞癌2例(50.0%),粘液癌2例(33.3%),硬癌11例(22.9%),乳頭腺管癌3例(18.8%)の順であった.今回の成績からは,乳管上皮細胞が増殖する病変の判定が困難で,乳腺の上皮細胞の増生が強い良性病変と細胞異型の弱い非浸潤癌,症例によっては浸潤癌の鑑別に苦慮している現状であり,形態学であるFNACの診断能力の限界も理解しておく必要があると思われた.当院での悪性病変における疑陽性例と陽性例を合わせた正診率は96.7%であり,誤陽性例がなかったことと合わせて考えると当院における乳腺のFNAC成績については概ね妥当な成績ではないかと考えられた.
【結 語】1.当院におけるFNACの成績をまとめ,診断結果の評価と検討を行った.
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© 2008 一般社団法人 日本農村医学会
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