日本農村医学会学術総会抄録集
Online ISSN : 1880-1730
Print ISSN : 1880-1749
ISSN-L : 1880-1730
第57回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1J159
会議情報

一般講演
手指衛生尊守率の認識の向上を図って
リンクナースの役割
藤原 文子久保田 妙子太田 正康
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
[はじめに]
感染対策において手指衛生は基本である。
当院では手指衛生の啓発活動として、全職員への勉強会の開催及び、手洗い評価の実施、速乾性アルコール剤の使用状況の調査などリンクナースを中心に実施している。
しかし昨年外科病棟において接触感染と思われるMRSA陽性数が急増した。スタッフからは「手洗いはきちんとしているのになぜ」という声が聞かれたが、人によって手指衛生の認識の差に問題があるのではないかと推測された。そこで手指衛生の現状を把握し、再度手指衛生の徹底を図った結果、細菌感染が低下したので報告する。
[方法]
1.外科病棟スタッフ20名をランダムに選び、手洗い後の手指培養を実施
2.外科病棟での手指培養実施前後の速乾性アルコール剤の使用状況の比較
3.外科病棟においての手指培養実施前後でのMRSA陽性件数の比較
[結果]
1.手洗い後の手指培養の結果は表皮常在菌の他に非発酵菌群やバチルス菌が検出された。MRSAについては検出されなかった。
2.速乾性アルコール剤の使用状況は培養前の調査時には使用期限の間際である6か月前に開封されたものが残っていた。培養後の調査では3か月で消費されていた。
3.病棟でのMRSA陽性件数は培養実施前が5件、培養実施後が1件であった。(それぞれキャリア1件を含む)
[考察]
スタッフはそれぞれ「自分はきちんとやっている」という認識を持っていることが多い。自分の行動を見直してもう一度基本から覚え実行してもらうため、監視培養を実施したことで認識を高められた。
培養の結果、問題視したMRSAは検出されなかったものの、手洗いを実施した後にも残存している菌があり、手洗いの不十分さや実施方法の見直しが必要であることが理解された。ひとりひとりの認識が変化することで手洗いを含めた手指衛生への関心も高まり、行動に反映されたと思われる。
また速乾性アルコール剤の使用状況を見ると、培養実施前では6か月前に開封したものが残っており使用頻度の低さが分かる。だが培養実施後には3か月で消費されていることからスタッフの使用頻度が高まってきたと言える。 一行為一手洗いは大切であるが、多忙な業務の中で手指衛生をやったつもりで怠っていたと考える。だが手指衛生の意識の高まりや速乾性アルコール剤の設置場所を多く設けたことで効果的に使用され、病棟でのMRSA陽性数の減少という結果に繋がったと思われる。
[まとめ]
今回の取り組みで手指衛生の意識の向上ができ、尊守率を高めることができた。今後も院内全体に手指衛生の啓発活動を定期的に、また継続して実施していくことがリンクナースの役割である。
著者関連情報
© 2008 一般社団法人 日本農村医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top