日本農村医学会学術総会抄録集
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第57回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2F200
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一般講演
更年期外来を受診した患者の症状による気分障害、不安障害、更年期障害の分類と種々の治療方法の評価
染川 可明
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抄録

【はじめに】
 更年期の女性には女性ホルモンの低下を主因とする更年期障害の症状が現れる。この症状は一般的に不定愁訴といわれ多種多様の様々な症状があるが、主にのぼせ、異常発汗、動悸、めまいなどの血管運動神経症状が代表的であるが、この他ゆううつ、不眠、頭重感などの精神神経症状、腰や手足の痛み、肩こり、易疲労感などの身体症状もみられる。この年齢層でこれらの症状があると更年期障害として扱われることが多い。しかし、これらを訴え来院する患者の中にはうつ病や不安障害に代表される精神疾患がかなりの確立で含まれており、精神症状を訴える者のなかには、精神科を受診したくないため、自分で更年期障害ときめつけて婦人科を受診することがあるため、この鑑別が重要である。
【方法】
 当院の更年期外来を受診した276名の更年期の日本人女性(平均53.8歳)を対象に日本女性の更年期症状評価表(CSC)、Zung自己評価式抑うつ尺度(SDS)、MINI大うつ病エピソードモジュール、WHO自己評価式睡眠評価表による検査を行い、精神疾患はDSM-IVにより分類し、これらのスコアの違いを更年期障害、気分障害、不安障害について検討した。さらにこれらの疾患に対する薬物療法の効果を投与前と投与後6ヶ月の時点のCSCとSDSの比較により検討した。P<0.05を有意な値とした。
【結果】
更年期障害、気分障害、不安障害、適応障害、身体表現性障害の患者の数は夫々順に127(46%)、71(26%)、26(9%)、10(4%)、4名(1%)であった。SDSスコアは気分障害群で不安障害群や更年期障害群に比して高値を示した。このスコアの中で “心が晴れない、満足感や楽しみの欠如”という項目に関連するスコアに気分障害群で高い傾向があった。睡眠障害スコアでは気分障害群が更年期障害群に比して高い値を示し、中でも“入眠時や覚醒時の障害、早朝覚醒時に疲労感が残る”といった項目に有意さがめだった。更年期症状評価スコアでは3群間に有意の差はなかったが、格項目別にみると“無気力で疲れやすい”という項目は気分障害群が更年期障害群に比して高値を示した。SSRIとホルモン補充療法はCSCとSDSの値と同じ程度に改善させた。漢方薬もこれらのスコアを改善させたが効果的には前2治療に比べ弱かった。
【考察】
 更年期障害を訴えて来院する患者の中にはかなりの割合で気分障害や不安障害が含まれており、慎重な診断と適切な治療が必要である。睡眠障害の程度や内容も更年期障害と気分障害でことなる。これらの治療にSSRI、ホルモン補充療法、漢方療法夫々に有効であるが漢方療法の効果はやや弱い。

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© 2008 一般社団法人 日本農村医学会
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