日本農村医学会学術総会抄録集
Online ISSN : 1880-1730
Print ISSN : 1880-1749
ISSN-L : 1880-1730
第57回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2F214
会議情報

一般講演
人工透析患者の皮膚掻痒感の緩和に向けた援助
カモミールローションを使用して
広瀬 幸恵塚田 めぐみ青木 弘美高谷 智子
著者情報
キーワード: 掻痒感, カモミール, 透析
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
人工透析患者が掻痒感を訴えることが多くある。薬剤の使用により一時的に掻痒感は軽減するが、その状態を維持していくことは難しい現状にある。そこで、スキンケアを工夫することで掻痒感の軽減を図れるのではないかと考えた。カモミールはハーブの一種で、保湿や発汗・消炎・鎮掻痒に優れており、先行研究で黄疸による掻痒感に対して使用されている。今回、カモミールを用いケアを行なった結果、効果がみられたため報告する。
【研究方法】
対象:94歳男性 透析歴5年(カモミールに対してのパッチテスト陰性)
研究期間:2007年8月~10月
方法:カモミールローションを作成(材料:カモミール精油、ホホバオイル、精製水)し、清潔ケア後に使用(2週間使用、1週間中断、再開し1週間使用)。皮膚水分量測定をローション塗布前後で実施。かゆみの評価は「白取のかゆみの重症度基準」を使用した。
【結果】
掻痒感の変化:塗布開始後スコアが低下、中断により悪化、再開により再度低下した(図)。透析日の夜間・翌日の日中ではスコアが上昇する事が多かった。
皮膚水分量の変化:開始後2週間でローション塗布後の水分量は平均2.4%上昇した。また、塗布開始前の基本水分量は20%であったのに対し、2週間後には30%に上昇した。中断により、水分量は低下し、再開後平均では3.2%上昇し、再開後2週間で初回塗布時と同様基本水分量の上昇がみられた。
【考察】
 透析掻痒症の原因は尿毒症性物質・無機イオン・二次性副甲状腺機能亢進症といった様々な仮説があげられており、複数の要因が関与していると言われている。このことから、透析日・非透析日で掻痒感の変動があったと考える。しかし、ローション塗布により皮膚乾燥が改善され、掻痒感が低下したことから乾燥が影響していたことは明らかであると言える。また、カモミールの成分であるアズレン・ビサボロールの消炎・鎮静・鎮掻痒作用が掻破により破綻した皮膚に働きかけ、ローション塗布の継続により炎症を抑え、掻痒感の軽減に影響を与えたと考える。
【結論】
カモミールローションの使用により皮膚水分量が上昇し、保湿効果と掻痒感軽減を認めることができた。

Fullsize Image
著者関連情報
© 2008 一般社団法人 日本農村医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top