日本農村医学会学術総会抄録集
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第57回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2F223
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一般講演
小児の効果的吸入療法
?玩具的吸入カバーの改良?
橋詰 美樹山口 みき子
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キーワード: 効果的な吸入, 玩具, 小児
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抄録

<はじめに>
 吸入療法は、呼吸器疾患患者の治療法として、小児科領域において行われる機会はとても多い。研究期間中小児科での呼吸器疾患患児の入院は全体の63%(53名)を占め、そのうち85%(45名)の患児は吸入療法を必要としていた。しかし、乳幼児期から学童前期の小児は、治療や処置に対する理解が困難な為、吸入療法への恐怖心を抱きやすく、長時間じっとしていられない。今までも嘴管へ小児用の吸入カバーを取り付け、小児の恐怖心を最小限に抑えられるよう工夫していたが。しかし、吸入療法は一日に数回行うため、吸入カバーへの興味も薄れ、効果的に治療を受ける事が難しいのが現状であった。
 そこで、患児に負担なく効果的な吸入療法が行えるよう、新しくキャラクターを用いた玩具的な吸入カバーを作成しその効果を比較・検証した。
<研究方法>
 対象は、生後5ヶ月から6歳までの患児29名(平均年齢3.05歳)とその家族。吸入カバーの比較の為、A群=「以前使用していた吸入カバー」とB群=「新しく作成した吸入カバー」に分け、チェックリストを用いて観察した。次に、家族29名と、病棟スタッフ25名へ自記式質問紙調査を依頼し全員から回答を得た。調査日は入院生活にも慣れてきた入院3日目と、入院4日目を対象日とした。両者の比較にはt検定を用い、有意水準はp≦0.05とした。
 調査期間は平成19年6/1~10/10までである。
<研究結果>
 チェックリストでは、吸入前と吸入中・後の小児の言葉を元に、プラスの反応・マイナスの反応の二つに位置づけ評価した。A群は吸入前84%、吸入中・後は89%がマイナスの反応を示しているが、B群では吸入前76%、吸入中・後も84%がプラスの反応を示していた。この事から、“新しく作成した吸入カバー”の方が、小児の示す反応が良かったといえる。自記式質問紙調査では、A群は「初めから嫌がり出来なかった」が41%、B群では「嫌がらず最後まで出来た」が46%を占め、検定値p>0.04で有意差が認められた。
<考察>
 吸入療法を嫌がる程度の各年齢別の特徴を知るために、「今回入院してから、吸入療法を嫌がっていたか?」を吸入療法時に付き添っていた家族に自記式質問紙調査を依頼した。その結果、1歳児が吸入を一番嫌がり、次に2歳児である。1歳未満と3歳児以上の平均点は1・2歳児と比較すると低くなっている。これは、米納らの「年齢別吸入中フェイススケール」の結果と一致するものである。幼児後期の患児では、吸入の必要性を説明し納得すれば、吸入療法を最後まで行うことが出来たためだと考える。しかし、乳児から幼児前期の患児は、吸入療法という処置の必要性を理解できず、入院という環境の変化から不安や恐怖を覚えやすい。
 玩具的な吸入カバーを使用することは、吸入療法への興味を引くだけでなく、小児の遊び心を尊重しながら、恐怖感や嫌悪感を軽減させることへ効果的であると考える。今回、新しく玩具的吸入カバーを作成したことで、吸入療法という処置が怖い物ではないという意識変化に繋がったのではないだろうか。
<結論>
 小児への看護援助では、吸入療法だけでなく様々な処置において、発達段階に応じた工夫・援助が要求される。今後も日々の看護の中で工夫・援助をしながら、小児が治療や処置を受けやすい環境作りを目指していきたい。

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© 2008 一般社団法人 日本農村医学会
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