日本農村医学会学術総会抄録集
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第57回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1F018
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一般講演
地域健康マネジメントリーダー育成事業を行って
舟橋 宏樹後藤 亮吉中井 智博後藤 俊介杉本 健治星田 尚子三橋 俊高
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抄録

はじめに
 第55回日本農村医学会学術総会にて、当院診療圏内における中高齢者の生活機能調査について発表した。その中で、地域住民の中で運動習慣や転倒経験によって身体機能に差が生じるのではと検討したが、明らかな差がみられなかった。その原因として参加者の多くが農作業に従事しており、運動習慣の有無にかかわらず、日ごろからある程度活動性が高かったからではないかと考えた。それにより、本来対象となるべき運動に興味が低く、生活機能が低い方の教室への参加が少ないのではないかと推測した。そこで今回は、日ごろから地域住民全体の定期的な体操の実施や健康に関する知識を啓発する方法として、病院で指導や講演を行うのではなく、各地区の代表者に公民館や集会所などで行う婦人会や老人クラブや趣味の会の中で定期的に体操指導を行ってもらい、病院はその代表者の支援を行っていくというコミュニティーエンパワーメントを活用した事業を計画し、その代表者(地域健康マネジメントリーダー)の育成事業を行ったので報告する。
事業の概要
 平成18年に立ち上がったループの会の代表者と連携をとり、各地域への呼びかけを行ってもらい、参加者を募った。
 平成18年6月から12月までの隔週金曜日の19時から20時30分まで行い、全12回、当院診療圏内の体育館の一室を利用し実施した。内容は理学療法士、作業療法士、内科医、整形外科医、社会福祉士、管理栄養士が各職種の専門分野に関する講演を約50分。当院で考案した体操(元気アップ体操)の指導を約30分行った。それにより、20名の足助地区地域健康マネジメントリーダーを育成した。
考察
 当院は高齢者体操教室や高齢者生活機能調査などを通じて地域住民へ体操の普及や健康・運動に関する知識の啓発を行ってきたが、思うような結果が得られなかった。財団法人 健康・体力づくり財団の高齢者の運動実践者と非実践者における生活意識と生活行動の相違に関する研究において、運動教室や健康行事に参加することから運動を始めたり継続している群は5年以上の継続者が5年以下の継続者に比べて優位に少ない。それに対して、楽しみや気晴らしのためや友人がふえるためといった趣味や周りとの交流があることから運動を始めたり継続している群は5年以上の継続者が5年以下の継続者に比べて有意差はみられなかったが多かったという結果から健康意識の低い地域住民に対して、今回育成した地域健康マネジメントリーダーが婦人会や老人クラブ、各趣味の会などの内容の一部として体操の実施や健康に関する講演を行うことは運動開始の一歩となりそれを継続していくことに対してより有効だと考える。
 また、当院では各地区の代表者が講演依頼等を簡便に行えるように講演・実地指導依頼書を作成しており、それを通じて地域健康マネジメントリーダーから各会での講演の依頼を受けることでその後のフォローを行っていく。
今後の課題
 育成した地域健康マネジメントリーダーの事業参加後、実際に各地区でどのような活動をしているのか把握のため、アンケート調査を実施し、事業の効果の判定を行っていく。

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© 2008 一般社団法人 日本農村医学会
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