日本農村医学会学術総会抄録集
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第58回日本農村医学会学術総会
セッションID: WS4-2
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在宅神経疾患患者に対する3種類の栄養管理:経口摂取・在宅IVH・胃瘻PEGの比較検討
その適応、有用性、倫理性、QOLについて
新谷 周三沼澤 祥行三木 一徳石原 正一郎
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キーワード: 経口摂取, 在宅IVH, 胃瘻PEG
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抄録

〈背景〉在宅訪問看護の神経疾患患者に対する栄養管理
は,主として経口摂取・在宅IVH・胃瘻PEG が考えられ
るが,その適応,有用性,倫理性,QOL について一定の
結論はでていない。
〈対象と方法〉対象は,当院神経内科を1992年~2002年に
退院後,在宅訪問看護に移行し,その後死亡した神経疾患
80例(脳血管障害50例,老年性認知症9例,パーキンソン
病11例,ALS など10例)である。この80例の在宅での栄
養方法は,経口摂取群23例,在宅IVH 群21例,PEG 群36
例に分けられ,3群間の年齢,生存期間,血清アルブミン
値,嚥下障害度/ADL/認知症度は,軽症(1レベル)
~重症(5レベル)で比較検討した。
〈結果〉在宅開始時の年齢は,経口群76.9±8.7歳,IVH
群78.7±7.7歳,PEG 群77.3±8.0歳と有意差なし。生存
期間はKaplan-Meier 法のLog-rank テストでは有意差を
認めなかったが,t 検定で経口群:399±257日に比べ,
IVH 群:725±616日(P=0.02),PEG 群:736±765日
(P=0.04)と有意に延長。嚥下障害度は,経口群:1.9
レベルに比べ,IVH 群:3.7レベル(P<0.001),PEG
群:4.4レベル(P<0.001)と有意に重度。血清アルブミ
ン値は,PEG 群:3.0±0.5g/dl で,経口群:3.4±0.5g/
dl(P<0.01),IVH 群:3.4±0.6g/dl(P<0.01)に比べ
有意に低下。ADL は,経口群:3.3レベルに比べ,IVH
群:4.4レベル(P<0.001),PEG 群:4.5レベル(P<
0.001)と有意に重度。認知症は,経口群:2.4レベルに比
べ,IVH 群:3.6レベル(P<0.01),PEG 群:3.9レベル
(P<0.001)と有意に重度であった。
〈結論〉IVH 群・PEG 群は,経口群に比べ,在宅開始時
の嚥下レベル・血清アルブミン値・ADL・認知レベルが
全て有意に低下しているにもかかわらず,より長い生存期
間を得た。Kaplan-Meier 法でも,少なくとも生存期間の
短縮は認めなかった。

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© 2009 一般社団法人 日本農村医学会
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