日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1E-9
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特発性胆嚢穿孔の1例
本邦報告例の検討とともに
砂川 祐輝仲田 和彦佐久間 康平吉田 滋井上 総一郎奥村 徳夫河合 庸仁
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抄録

特発性胆嚢穿孔の1例 -本邦報告例の検討とともに- 【諸言】 胆嚢穿孔の多くは胆石症や胆嚢炎を原因とし、胆汁性腹膜炎を併発し重篤な経過をとることが多い。一方、原因の明らかでない特発性胆嚢穿孔は非常に稀な疾患である。当院で経験した特発性胆嚢穿孔症例を文献的考察を加えて報告する。 【症例】 87歳女性、食後の腹痛・嘔吐を主訴に来院。発熱無く、腹部単純X線写真にて明らかな異常認めず一旦帰宅。翌朝再受診し腹痛・嘔吐改善していたものの、炎症反応・肝胆道系酵素の上昇、腹部超音波にて小腸の拡張、CTにて腸液の貯留・腹水を認め、腸閉塞・腹膜炎の診断にて緊急手術施行。開腹所見では、小腸の拡張認めるも明らかな腸管閉塞なし。胆汁様の腹水貯留あり、胆嚢に穿孔認め胆嚢を摘出した。術後経過は良好で第18病日に退院した。 【考察】 検索し得た限り本邦では34例の特発性胆嚢穿孔症例の報告があった(医学中央雑誌1983~2011,会議録除く)。主訴は腹痛が最多でほぼ全例に共通していた。炎症反応上昇を認めるが胆道系酵素は正常範囲に留まることが多い。術前に診断された報告は僅かで、多くは腹膜炎の診断にて開腹術が施行されていた。 術前診断に至った症例では、腹水穿刺を行い、穿刺により胆汁の漏出を確認しているものが多い。腹部造影CTでは、胆嚢萎縮・胆嚢周囲の腹水・胆嚢壁の造影欠損など診断に結びつく有意な所見のあるものもあれば、それらの全くない症例も多く、診断の確定に寄与する検査とは言いがたかった。ただしCTにて腹水を認める症例は多く、診断の補助とはなり得る。術前診断のなされたものの一部は腹腔鏡下手術が施行されている。 【結語】 比較的稀な特発性胆嚢穿孔の1例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告した。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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