日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
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  • 田中 孜
    セッションID: PL
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    中濃厚生病院の歩み
     昭和23年1月開設当初は,関市周辺の農協関係者を主に対象にした病院(37床)であったが,徐々に病床数も増加し,昭和38年4月には第二准看護学院を設置,昭和39年4月には隔離病舎を併設し,昭和44年に全面改築(297床),3月に総合 病院の認可を受け,その頃から関市,武儀郡などの中核病院として地域医療に取り組んできた。
     平成8年岐阜県より,他の4医療圏には既に設置されていた救命救急センターを中濃医療圏にも設置要請があり,協議の結果平成9年当院に併設されることが決定した。しかし旧病院では敷地面積も狭く,建物も老朽化していたため,平成12年8月現在の土地に全面移転新築と同時に救命救急センター(20床)も開設することになった(一般病床316床,感染病床6床の342床)。なお准看護学院は必要性の低下,生徒数の減少により平成13年3月閉校した。
     新病院開設後は,関市,美濃市を始め中濃医療圏の各地から救命救急センターを中心に搬送,紹介が増え,病床数も増加し,現在383床で運営されている。
     平成15年4月に僻地医療拠点病院に指定され,現在も2ヶ所の僻地診療所に医師を派遣している。7月には日本医療機能評価機構より認定証が発行され,10月に臨床研修病院に指定された。その後初期臨床研修医を毎年5~7人受け入れ,現在も11人が研修している。また常勤医の充足にも努力し,平成15年は49人だったが,現在は74人に増加し,診療体制も充実してきた。
     平成17年2月岐阜県厚生連の7病院の名称が統一され中濃病院から中濃厚生病院に病院名を変更した。
     平成18年4月より院外処方箋の発行,5月よりDPC 導入,19年4月から敷地内禁煙,5月から7対1看護体制を始め病院経営は安定した。
     平成20年4月から夜間の救命救急センターの混雑を避ける目的で,関市と地元の武儀医師会の協力により初期夜間急病診療支援室を設置し,内科,小児科を標榜する診療所の医師22名が交代で平日午後8時~10時に受診する主に小児の患者に対応して頂いている。しかし,そのバックアップ体制がまだ不十分であり,小児救急医療には問題が多い。
     平成20年6月には放射線治療棟,外来化学療法室,研修センターが完成,平成21年4月より高エネルギー放射線治療開始し医療体制,研修体制が更に充実した。また同年7月DMAT(災害医療派遣チーム)を編成し,平成22年3月には駐車場造成工事も完成し,職員の増員にも対応できるようになった。
     平成23年3月にはDMAT を更に1チーム増やし,3月11日の東日本大震災にも出動した。

    今後の課題とこれからの地域医療
     今後は災害拠点病院,地域医療支援病院,地域がん診療連携拠点病院を目指し,また脳卒中センター,循環器呼吸器センター,消化器病センターなどの設立,胸部外科,口腔外科,ペインクリ ニックの新設も視野に入れて,病床数500床,常勤医師100人を目標に更なる増床,増員を図る。それによって,救急医療,災害医療,僻地医療,周産期医療,小児救急医療など国の掲げる政策医療の実現が可能になる。また所詮当院のみで全ての医療を完結することは不可能であり,近隣の病院,診療所と補い合いながら効率の良い医療を展開し,住民のニーズに応えていくことが必要である。
     以上当院のこれまでの歩みと現状,今後の展望を報告し,全員の皆様に少しでも参考にして頂ければ幸いである。
     最後に当院の理念と基本方針を述べて終わる。当院の病院理念は「患者さんに安心を」「地域社会に信頼を」「明日に希望を」,基本方針は「医療の質の向上」「職員教育の充実」「医療経営の安定」である。
     この基本方針の三本柱を実践することにより患者さんが求める良い医療サービスを効率的,効果的に提供して,その過程,結果の全てにおいて患者さんの安心と満足を得ることができる。すなわち職員教育に熱心に取り組み,医療の質を向上することが患者さんの増加,医療経営の安定につながり,収益が増える。増えた収益は働く職員,医療機器の整備,拡充などに還元され,一人ひとりの心にもゆとりが生まれ,このゆとりが患者さんへの優しさや緻密な医療にもつながり,良い循環になって,患者さん中心の医療の実践,医療情報の提供,病院理念の達成,実現が可能になる。
  • 藤原 久義
    セッションID: SP-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
     国民の健康と命を守るライフラインとしての医療において,我が国の公的病院は歴史的にきわめて重要な役割を演じてきた。しかし現在の公的病院は多くの問題を抱えており,互いの長所を伸ばし,短所を補い病院統合を行なうことは地域医療再生のために重要である。兵庫県は各県立病院の診療機能の再編・充実を図るため「県立病院の基本的方向」を平成17年2月に策定したが,その後の医療情勢の大きな変化に対応するため,平成20年11月~平成21年10月に14名の外部有識者や私共尼崎病院と塚口病院の院長からなる両病院の統合再編検討委員会を設置し,さまざまな角度から検討した結果,両病院の新築移転が望ましいという「尼崎病院と塚口病院の統合再編検討報告書」を平成21年10月に発表した。並行して平成21年1月に「病院構造改革推進方策(改訂版)」を策定し,県立尼崎病院と県立塚口病院の統合再編の具体的検討がスタートした。最終的に平成22年12月に「尼崎病院と塚口病院の統合再編基本計画」を公表し,両病院は統合した上で26年度末に新築移転することが正式に決定された。地域医療再生のためとは言え,異なる地域でそれぞれ76年と45年という長きにわたって地域の基幹病院として,地域に根差した伝統を持つ2つの県立病院が1つになることは地域医療にプラスとマイナスの大きな影響を与え,全体としてプラスが大きくなり統合が成功するためには越えるべき大きな課題が多数ある。特に重要なことは2つの病院の内部での医療者の結束・協力はもちろんであるが,同時に医師会や地域の病院,市民,患者さん,行政とよく相談して,統合病院を一緒に共働作業で造って行くという姿勢である。
     兵庫県では「共働作業」の「働」という文字を,辞書の同という字ではなく,「共に働く」という字を使っている。そういう「共働作業」が大事で,この連携がうまくいかないと,今度の統合病院も,せっかく新しいものを造ってもうまく行かないと考える。
     私は14年間の岐阜大学循環器・呼吸器内科教授を経て平成18年から兵庫県立尼崎病院の院長になり,統合問題に関与してきたが,23年4月からは県立塚口病院の院長も兼ねることになった。4年後の両病院の統合・新築移転を我が国の病院統合のモデルケースにしたいので,ご紹介したい。
     以下の順番に述べさせていただく予定である。

    1.病院統合の目的―経営改善のためではなく,時代のニーズに合ったより良き医療の提供―
    2.「公立病院改革ガイドライン」―基本的考え方と具体策について―
     1)基本的考え方について
     2)具体策について
    3.兵庫県での取り組み:市民病院間,市民病院 と民間病院との統合 4.兵庫県での取り組み:県立尼崎病院と県立塚口病院の統合―統合移転のモデルケースを目指して―
     1)阪神地区の救急体制―“たらい回し”が最も多い地域―
     2)兵庫県立尼崎病院と塚口病院の現状
     3)統合の具体的プラン
     4)統合の問題点
  • 李 啓充
    セッションID: SP-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
     米国医療の「光」は,自己決定権を中心とする患者の権利が州法等で手厚く保証されていることであり,「影」は市場原理に基づいて医療が運営されていることといってよいだろう。しかし,患者の権利が手厚く保証されているとはいっても,日本で「生存権」が憲法で保障されているのとは対照的に,米国では国民が医療にアクセスする権利は救急医療以外では保証されていない。医療へのアクセスは,「権利」ではなく,「特権(お金を払った人だけが受けられるサービス)」となっている現実があるのである。
     たとえば医療保険についても,米国では,国民が民間保険を「自己責任」で購入するのが原則である。制度上,高齢者・低所得者等の弱者に対する公的医療保険が用意されているものの,歳が若く(65歳未満),そこそこの収入はあっても民間保険の保険料を払うほどの経済的余裕がない場合は,「無保険者」とならざるを得ない。その結果,米国では,国民の6人に1人が無保険の境遇に喘ぎ,医療へのアクセスが著しく制限されるという,苛酷な状況が現出している。近年,日本でも「米国式に,医療保険の『公』の部分を減らして『民』を増やせ」とする主張が声高に叫ばれているが,国民が医療にアクセスする権利を損なう危険があるので注意しなければならない。特に,「混合診療解禁」論者は,「高度の治療・最新の治療は高くつくので,保険財政では賄いきれない。保険外の診療として,お金を払った人だけが受けられるようにする」と主張しているが,これは医療へのアクセスを「特権化」する主張に他ならない。
     さらに,米国では,保険に加入しているからといって医療へのアクセスが保証されるわけではない。たとえば,保険会社が医療内容の決定に介入する権限を有しているため,患者と医師がインフォームド・コンセントのルールに基づいて共同で決めた治療方針が,保険会社によって「否定」されることも珍しくない。米国のとりわけ高額な医療費を自弁できる患者は稀であり,保険会社が保険給付を拒否した途端に,患者の自己決定権が「絵に描いた餅」と化してしまう現象が起こっているのである。最近,日本でも,財界・保険団体を中心に「保険者機能の強化」を主張する動きが目立っているが,「医師と患者の間に立って通訳の役を務める」という言い方で「治療内容に介入する権限」を獲得することをめざしているので警戒を怠ってはならない。
     ところで,日本で医療費抑制路線が強化されるようになったのは,1980年代にレーガノミックス,サッチャーリズムを後追いする形で「小さな政府」路線がとられるようになったことがきっかけだったが,「小さな政府」で運営されている国で,貧富の格差が拡大することは周知の事実である。日本も例外ではなく,現在,OECD 加盟国中第3位の「貧困大国」となっている。社会経済的格差が健康被害をもたらす現象は公衆衛生学の領域では「status syndrome(格差症候群)」として知られているが,今後,日本においても,格差に起因する健康の不平等が深刻化することが懸念される。
  • 湊口 信也
    セッションID: ED-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
     循環器領域における再生医療は,血管再生・心筋再生を実現することにより従来の治療では十分満足の得られないケースの心筋梗塞,心不全,閉塞性動脈硬化症などの心血管系疾患を治療することにある。心血管再生医療に使用される可能性のある細胞ソースとして,胚性幹細胞(ES 細胞),iPS 細胞,体性幹細胞(骨髄細胞,末梢血細胞,骨格筋細胞,脂肪細胞,muse 細胞)などが考えられている。ES 細胞とiPS 細胞については現時点ではまだ動物実験レベルであり臨床応用まではしばらくの時間を要すると考えられている。iPS 細胞については特に大きな期待が寄せられているが,Oct3/4,Sox2,Klf4,c-Myc の4つの遺伝子を導入し誘導された万能細胞iPS 細胞は,癌遺伝子であるc-Myc を含むがゆえにinvivo の個体に移植されると高率に癌を発生する。この問題を解決するために最近c-Myc の代わりにGlis―1遺伝子を導入することにより誘導されたiPS 細胞では発癌の問題が解決される可能性があるのではないかと期待されている。一方,体性幹細胞を用いる方法は患者本人の細胞を用いるため倫理的問題のハードルが低く,多くの臨床試験が行なわれている。最も一般的に行なわれてきたものは骨髄幹細胞を用いた心筋梗塞後の心筋組織再生医療,閉塞性動脈硬化症の血管再生である。我が国で最も初期の段階に行なわれた臨床試験は,TACT 研究であり,骨髄単核球を採取し,虚血下肢患部に筋注した結果,下肢血流は増加し,自覚症状の改善,歩行距離の増加,下肢酸素分圧の増加などがもたらされたと報告されている。骨髄細胞を用いた心筋梗塞後の組織再生療法は,代表的な方法は患者自身から採取した骨髄幹細胞(骨髄単核球)を冠動脈内に注入することである。この方法による臨床試験は非常に多くなされているが,control があり患者数が多く2年以上観察している報告は5つあり,結果としてこの方法の安全性は確立されたが,心機能改善を指標にした有効性については有効とするものと効果がないとするもので相半ばしている。骨髄細胞を採取するためには全身麻酔という侵襲的な手技を要するため,もっと非侵襲的な方法ということで,G-CSF を用いることにより骨髄から骨髄幹細胞を流血中に動員し,心筋梗塞部位にホーミングさせ,その場で血管,心筋,筋線維芽細胞に分化させるという方法が考えられた。この方法は我々の施設をはじめ多くの施設で動物実験が行なわれ,劇的な心機能の改善,梗塞サイズ縮小がもたらされることが明らかになった。そのため,大きな期待が寄せられ,多くの臨床試験がなされた結果,慢性期の心機能を指標とした場合,効果ありとするもの,効果なしとするもの両方の報告があり,G-CSF の投与量,投与時期などの問題が関与しているのではないかと考えられている。心筋再生療法で国からの支援を受けて現在進行中の臨床試験としては,1)大阪大学の「細胞シートによる多施設臨床研究を目指した基盤システムの構築」,2)京都府立医大の「重症慢性虚血性心不全に対するヒト心臓幹細胞と幹細胞増幅因子bFGF のハイブリッド自家移植療法の検討」の2つである。結果が期待されるところであるが,いずれも外科的なアプローチが必要であるため,内科的で非侵襲的な方法が求められる。我々は,内科的な1つの方法として,ナノテクノロジーを応用することにより,再生サイトカインを選択的に梗塞心筋部位に運搬し,局所の血管再生・組織修復を行なうことができるdrug delivery system(DDS)を開発中であるので紹介する。
  • 大塚 隆信
    セッションID: ED-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
     日本においては平均寿命が延び,急速に高齢化社会が到来している。男性のほぼ5人に1人,女性の4人に1人が高齢者である。それにともなって介護を必要とする要支援・要介護者は約450万人と増えている。その原因として「関節疾患」「転倒・骨折」などの「運動器」の障害が20%を超えている。ロコモティブシンドロームという言葉は日本語で「運動器症候群」と訳され『ロコモ』という通称が使用されている。運動器の障害により日常生活での自立度が低下し,要介護の状態や要介護の危険のある状態をいう。これは運動器のことをロコモティブオルガン(locomotive organ)ということから派生している。またロコ モティブには「機関車」という意味もあり人生を機関車のようにアクティブに生きようという意味が込められている。

    ロコモティブシンドロームの徴候・症状
     関節や背部の痛み,関節や脊柱の変形,関節や脊椎の可動域制限,下肢・体幹の筋力低下,バランス能力の低下がポイントとしてあげられる。

    日常生活でチェックすべき項目
     1.家のやや重い仕事が困難である。
     2.家の中でつまずいたり滑ったりする。
     3.15分くらい続けて歩けない。
     4.横断歩道を青信号で渡りきれない。
     5.階段を上がるのに手すりが必要である。
     6.片脚立ちで靴下がはけない。
     7.2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である。

    ロコモティブシンドロームの判定基準
     1)開眼片脚起立時間:15秒未満
     2)3m Timed up and go test:11秒以上

    運動機能低下をきたす疾患
     脊椎圧迫骨折及び各種脊柱変形(亀背,高度脊柱後弯・側弯),下肢の骨折(大腿骨頚部骨折など),骨粗鬆症,下肢の変形性関節症(股関節,膝関節など),脊柱管狭窄症,脊髄障害,神経・筋疾患,関節リウマチおよび各種関節炎,下肢切断,長期臥床後の運動器廃用,高頻度転倒者

    予防と治療・ロコモーショントレイニング
     ロコモ対策の基本は運動器局所の治療と歩行機能の維持改善の2本立てである。
     これらの項目の解説と運動機能低下をきたす主なる疾患(骨粗鬆症,下肢の変形性関節症,脊柱管狭窄症)の診断・治療などについて述べる。

    参考文献:
    日本整形外科学会編;ロコモティブシンドローム診療ガイド2010,文光堂
  • 塚原 美佐子
    セッションID: KanaiA
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    「JA めぐみの」は,岐阜県のほぼ中央に位置する5市(関市,美濃市,美濃加茂市,可児市,郡上市)8町村を管内としており「恵み豊かな美濃地方」が名称の由来です。
     JA めぐみの管内に5つある女性部では,全体で連絡協議会をつくり,食農教育,健康・高齢者などの活動,女性参画や女性組織の活性化に取り組んでいるほか,それぞれの女性部ごとに,部員相互の親睦活動や,地域に対する助け合い活動を続けています。
     JA めぐみの女性部の1つ,中濃女性部では,平成9年ごろから,来るべき高齢化社会に備えて,家族や仲間を支え合う取り組みのなかで,社会に役立ちたいという動きが芽生え,平成12年にJA のホームヘルパー資格取得者の中から,助けあい組織「あい愛」が誕生しました。
     組織の発足と同時に,JA の施設を拠点とした高齢者ミニデイサービスを活動の柱として取り入れました。これはいつまでも楽しく愉快に健康に過ごすことを目的とした取り組みです。現在では,このミニデイサ―ビスを毎年中濃本部管内10支店で開催し,延べ200人の高齢者が参加されています。サービスの内容は,JA 岐阜厚生連中濃厚生病院職員による健康講座や健康体操指導等を中心に,JA の施設見学やJA 介護事業の紹介,昼食サービスやレクリエーションなどもあり,参加者の大きな楽しみとなっています。
    「あい愛」は,24人のメンバーで構成されています。ミニデイサービスの活動時には,料理班とレクリエーション運営班に役割を分担し進めます。特に「食」と「笑い」にはこだわリをもって取り組んでいます。
     料理班は,「あい愛」代表の塚原美佐子が考案したメニューを協力して作ります。食材は,会員が育てた安全で安心な野菜を持ち寄り,旬の野菜を中心に,すべて手作りで毎回7品の料理とデザート,お土産の菓子までを完成させます。
     レクリエーション運営班は,毎回趣向を凝らしたレクリエーションを実施しています。日頃の運動不足とストレス解消を目的に,健康体操やゲームを楽しくおかしく行ない,参加者に喜ばれています。また,参加者に工作として牛乳パックの小物入れや新聞紙で作るエコバッグや肩たたき棒作りなどを指導し,リサイクル活動にも取り組んでいます。
    「あい愛」のメンバーは活動で培った料理・レクリエーションの技術を活かし,地元での老人会,小中学校の児童・生徒会,PTA の母親学級等で講師としても活躍しています。
     他にも,夏休みにJA が開催する「ちゃぐりんフェスタ」にスタッフとして参加し,子供達と10メートルにも及ぶジャンボ太巻き寿司を作ったり,農業祭やJA のファーマーズ・マーケットでは,弁当や総菜の販売を行なっています。
     JA めぐみの女性部大会や岐阜県女性部大会では,メンバー手作りの衣装や振り付けで踊りや,美濃市伝統の郷土芸能「仁輪加」を演じ,地域に笑いも提供しています。
     地域が元気に,そしてみんなが元気になるには,なにより健康である事が大切です。「あい愛」グループは今後も中濃厚生病院と連携して研修を重ねながら,メンバーの知識を向上させ,元 気に明るくミニデイサービスを行ない,高齢者の憩いの場を拡げていきます。
  • 日置 敦巳
    セッションID: S1-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    〈背景〉岐阜県は,2009年10月1日の推計人口約209万,面積約1万km2の内陸県である。山間部には,幾筋にも分かれる谷沿いを中心に人家が散在している。65歳以上人口割合は23.6%(全国22.7%),75歳以上は11.3%(同10.8%)であった。
    〈医療の現状〉人口10万対医療施設従事医師数は177.8(全国212.9)と低く,全国都道府県の41位である(2008年医師・歯科医師・薬剤師調査)。看護職についても,看護師が人口10万対713.9(全国744.6),准看護師26.5(同286.3)と低い値である(2010年衛生行政報告例)。2008年患者調査における外来受療者の割合は人口10万対5,607(全国5,376),入院は881(同1,090)と,入院の割合が低くなっている。
    〈課題と対策〉医師をはじめとする医療資源は,南部の都市部に集中し過疎地域で不足する偏在が顕著となりつつある。また,過疎地域では若い世代等が離れた地域の病院に受診する悪循環もみられている。
     国立社会保障・人口問題研究所(2008)の推計によると,岐阜県における65歳以上人口の当面のピークは2025年頃とされているが,入院割合が著しく上昇する75歳以上の者のピークは2030年頃であり,これまでと同様の入院が行われる場合,病床数の不足が生じる可能性がある(図1)。在宅医療を推進するにしても,それを支える世代が少ないことから(図2),一人暮らしの高齢者に対するサービス体制や山間部等での居住場所の集中化を考慮する必要がある。医療資源の偏在に対しては,今後の疾病構造の変化を見据えた医療提供体制の見直しも必要と考えられる。しかしながら,高齢者の急変時における入院を含む日常的医療は近隣の医療機関である程度確保できることが望 ましいと考える。
     過疎地域における医療スタッフ確保のためには,その生活・子育て・教育にも配慮した受入れ態勢や,住民が医療施設に投資・利用して育てる意識も必要と考える。医療の側からみると,都市部の病院も含めた複数の医療施設のグループで医療を確保し,頻度に応じて,スタッフ派遣と患者搬送のバランスをとっていくことも考えられる。経営面からみれば,過疎地域の病院に対しては,患者の負担は同じとしても,効率の悪い分を診療報酬や補助金で補うことも有用であろう。また,医師の確保が困難な診療科については,何らかの形で誘導することも考えられる。
  • 二宮 保典
    セッションID: S1-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
     全国的に有床診療所は激減している。今後,ますます地域医療,地域ケアが大事であると叫ばれ認識されている今日,なんとか,地域医療の核たる有床診療所の減少を食い止め,増加していくような仕組み考えていかねばならない。数年前から検討を始めた。そして有床診療所ネットワークを構想した。有床診療所ネットワークは,有床診療所間を結ぶものである。しかし,地域医療,地域ケアは,有床診療所だけで成立するものではなく,大病院から病院,無床診療所,そして地域の介護施設,福祉施設すべてが関係するものである。その様な認識のもとで,ネットワークを再構築し,「包括的地域ケアネットワーク」と名を改め,そして「はやぶさネット」へ。はやぶさは,宇宙のはやぶさです。2年間も迷子になりながら,地球へ帰り,本体は燃え尽きたがカプセルは無事に地上へ届けた感動的な物語がありました。涙がこぼれ日本の底力を感じました。包括的地域ケアネットワークの活動として。毎月,医療施設,介護(訪問看護,包括支援センター,老健,特養,デイサービス,など)福祉施設,行政へ説明会を開催した。このネットワークを利用することで,地域医療再生,地域ケア体制の構築に役立つ事を確信している。有床診療所の状況は,1985年には26,162施設,28.3万床あったものが,2010年には10,560施設,13.6万床に減少た。減少した主な原因は,看護職員の雇用問題,人件費問題,後継者問題,新開業者減少である。現在有床診療所の科目別では,内科系36.6%,外科系9.9%,産婦人科系24.3%,整形外科系10.4%,眼科8.3%,泌尿器科2.6%である。
    2010年の改定後4月から11月までに237施設が減少した。はやぶさネットの構想。県医師会が主導して,平成23年度 は岐阜地区と西濃地区に,平成24年度は東濃地区と中濃地区に平成25年度は飛騨地区に広げ最終的には岐阜県全県下に広げる予定である。会員は医師会員のみならず,介護施設,福祉施設,行政も会員となれます。はやぶさネットの主な機能は以下の6つである。
     1.医師看護師等の応援依頼,医師や看護師等のヘルプ依頼をはやぶさネットに登録すると,求人メールを受け取る会員に一斉にお知らせが届く。2.空床情報の検索,入院設備を持つ機関が大凡の空床情報を登録できる。3.患者受け入れ機能の情報検索(医療機関,介護サービス,福祉施設)はやぶさネットに登録されている医療機関の基本情報,外来情報(外来診療,在宅対応,連携パス対応,認知症対応など)介護サービス事務所のサービス情報が検索できる。4.意見交換と診療情報提供,会員同士,内部メールを利用して意見交換が出来る。ネットワークにメールが届いたときは携帯に着信お知らせが入る。5.各種情報発信と共有,情報提供には,感染症,食中毒情報,行政県医師会,保険情報,認知症情報(認知症ネットワークともリンクしている),医療施設,介護現場からの広報(研究会,勉強会,ケア会議等の開催案内),全国有床診療所協議会ともリンクしている。6.着信お知らせメール,はやぶさネットにユーザー宛ての情報が届いた時に,毎日利用するPC や携帯のメールアドレスにその情報着信をお知らせする。
  • 岩間 亨, 村上 啓雄
    セッションID: S1-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
     岐阜大学医学部附属病院は岐阜県において唯一の特定機能病院・医学部附属病院であり,本院の使命は高度な先進医療を実践し開発することと医師を初めとする医療人を育成することにあると考えている。
     岐阜県には5つの医療圏があり,各医療圏には中核となる中~大規模病院が存在する。それぞれの中核病院が地域の小規模病院や診療所と連携をとって各医療圏の地域医療が成り立っている。岐阜大学病院は,病院の位置する岐阜医療圏の各病院・診療所と緊密な連携を取っているが,同時にがん,難病,肝疾患,エイズの診療拠点病院,高度救命救急センターでもあり,岐阜医療圏にとどまらず県とともに岐阜県全県下における医療体制の整備や構築に参画し,ドクターヘリの運用にあたっている。今後は各中核病院単独では対応が困難な多領域に関係する重症患者の診療や特殊な高度医療により重点を置くことにより,これまで以上に岐阜県全体の地域医療に貢献できるよう努めていきたいと考えている。
     岐阜大学医学部は医学科と看護学科を有しており医師,看護師をはじめとする医療人の育成は,地域医療への貢献として極めて重要であると考えている。医師不足の背景には単なる医師の絶対数の不足だけではなく,医師の都市への集中,勤務環境の比較的恵まれた特定の診療科への集中が存在し,国内における医師数の地域間格差,診療科間格差が生じている。岐阜県でも医師の絶対数の不足とともに,県内における地域間格差が存在し,地域医療を守ることが喫緊の課題となっている。かつて大学病院医局の弊害のみがクローズアップされた時期があったが,地域への医師派遣に医局が一定の役割を果たしてきたこともまぎれのない事実である。しかし,地域への医師派遣は医局の役割のある一面を見ているに過ぎない。医局の最も大切な役割はプロフェッショナルたるべき専門知識・技術とともに豊かな人格を持った医師を育成することにある。人間性豊かな医師の育成には,さまざまな医療現場を体験することが重要であり,都市部の大病院だけではなく,地域において地域と密着した医療現場での経験は必要不可欠である。若手医師に対して,長期的展望のもとに地域派遣を含むいくつものステップを提供し,個人の適性や希望を考慮しつつさまざまなキャリアパスを示しながら最終的にひとりの一人前の医師を育てていくこと,このことこそが医局がこれまで担ってきた役割であり,今後はこれまで以上に大学病院と医局,関連病院とが協同して医師の育成を進めていくべきであると考えている。
     岐阜大学医学部では平成20年より岐阜県からの修学金制度のもと地域枠学生を受け入れている。地域枠学生は初期臨床研修後9年間の岐阜県内での指定勤務が求められており,長期的な研修体制の構築が必要となっている。岐阜大学では地域枠学生はもちろんのこと,一般学生を含め将来岐阜県の医療を支える人材を育成すべく,平成19年に地域医療医学センターを開設し医学生および研修医を対象に地域医療実習や地域医療ゼミを行なってきた。医学部に入学した学生は地域枠学生,一般学生を問わずその多くが医療に対して非常に高い志を抱いている。彼らの志をぶらすことなく,医学部から卒後の初期研修,そして専門医研修へ と導いていくことこそが,たとえ時間はかかっても岐阜県の地域医療を守りそして発展させていくための最良の方策であると考え,岐阜大学医学部・附属病院では地域医療医学センターと卒後研修センターが中心となり,関連病院との連携のもと学生,研修医の指導,教育に取り組んでいる。
  • 齋藤 公志郎, 矢島 昌夫
    セッションID: S1-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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     西美濃厚生病院は岐阜県の西南濃地域に存在する岐阜県厚生連の一病院です。総病床数は315床で,診療圏には比較的に多くの農村地域が含まれています。病院規模からも典型的な地域の中小病院であると考えられます。さて,近年日本の各地域で医療の崩壊という言葉がしばしば使われるようになりました。個人的には,これはあまりにも刺激的な物の言いようでして,一概に賛同はしかねています。ただ全国的に,特に大都市以外の地域に存在する,いわゆる中小病院の経営状態が非常に悪化していることは事実です。当院も同様に最近は色々な面から大変な苦境に面して います。その現状とそれに対して実施した方策を報告いたします。
     近年の当院における大きな問題点は,要約すると3つあります。1)勤務医および看護師の不足,2)診療報酬の不足,3)大病院指向(患者意思,医療施策)
     これらの問題により当院では経営に困難を覚えるようになり,また提供可能な医療の質および量の低下を来たすこととなりました。具体的には常勤医師数は平成10年には23人,平成23年で22人であり,極僅かに減少しただけです。しかし,この間には色々な曲折があり,医師確保には院長として大変苦労いたしました。また以前とは異なり婦人科と耳鼻科が非常勤となり,小児科もフルの常勤体制とは言えなくなっています。
     外来患者数は平成13年度をピークとして平成21年度には,最高時の61%までに減少しました。これには病診連携などにより,外来診療における当院の役割分担の見直しなどが影響しています。したがって,ある意味では目的通りの動きでした。
     一方,入院患者数は平成21年度には,ピークであった平成17年度の90%までに低下しました。さらに全身麻酔下の手術件数の減少などに象徴される診療内容の低下なども重なり入院収益は87%までに低下しました。このような事から病院の収益も減少しました。今後の大型医療器械および施設の更新購入などに多額の出費が予想されるなか,なんらかの病院運営形態の改善が必要と考えられました。
     一般病床の稼働率が不良なことより,当院では平成22年度に病床の再編を行いました。DPC 対応の一般病床を250床から187床に減じ,療養病床を65床から128床に増しました。これにより診療報酬上獲得できた諸加算の影響のため病院収益は増加して,経営的にも改善されました。
     しかし,このような対策には限りがあります。来年度の診療報酬改定がいかなる影響をもたらすかは不明です。さらに医療の進歩に応えるためには,本来なら医師を増加する必要がありますが,増員は今はまだ困難です。当地域での医療ニーズ(救急医療も含めて)に応えるためには,医師確保の方策や病院の運営形態など,色々な点での抜本的な改革が必要だと考えています。
  • 永井 豪
    セッションID: S1-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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     岐阜県の県紙,岐阜新聞で長年,記者として県内各地を歩いてきた。「地域医療」に正面から取り組んだ体験はないが,地域と地域医療は切り離せない。地方新聞の一記者のささやかな体験にすぎないが,取材で出会った「地域医療」を振り返ってみた。
     直近の地方勤務は下呂。名泉と下呂膏で名高い下呂温泉に太平洋戦争末期,旧陸軍傷病兵のための医療施設ができ,これを母体に戦後,県立に移管された下呂温泉病院は,一時は温泉を活用した独自の療法でも話題を呼んだ。自治体病院はどこも大概は経営難であることは承知していたが,ちょうど地方独立行政法人に移行する直前のころで,合併により市立となった金山病院とともに,老朽化した施設の整備改修が迫られる中,現場の医師や看護師らが懸命に日々の仕事をこなしていた。地域住民にとって,さ まざまな健康や病気に対する不安に応え,診療や治療を受けられる総合病院はかけがえのない存在だったが,診療科も医師数も減り,患者だけでなく医師や職員が腹ごしらえをする食堂も閉鎖された。診る側も,診られる側もいらだちや漠然とした不安は募る一方のようだった。もう2年がたって,事態はもっと深刻化しているのではないかと危惧している。
     出張先のJR 下呂駅構内で倒れ,心肺停止となった男性を,たまたま通りかかった18歳の娘さんが機敏な対応で救命した。この娘さんは高山の看護学校を卒業して下呂温泉病院に就職する直前の「看護師の卵」で,実習で学んだ通りの救命措置が役立った。大きな病院も,こうした一人一人の働く人の知恵と力と勇気によって成り立っているのだろう。
     地域の「あかひげ先生」に贈られるノバルティス地域医療賞がかつてチバ地域医療賞といわれていたころ,美濃加茂の開業医,黒岩翠さんの受賞式を取材した。今から15年前,原因不明の川崎病の500症例を経験,診断,治療,後遺症予防に好成績を上げ,表彰を受けた黒岩さんは「医は仁術と思って励んできた」と話しておられた。5年前に86歳で他界されたが,その診療姿勢は患者と症状をよく診るという,医の原点ともいうべきもの。平成の大合併で今は恵那市所管となった国保上矢作病院の大島紀玖夫名誉所長も故郷の先年,同じ賞を受けている。「無医村の悲劇をなくしたい一心で」「病気を診るのではなく,人を診るのが医師」など,受賞に際し,語られた言葉は一つ一つ印象的だ。
     岐阜,愛知県境に位置する笠松町の松波総合病院を,木曽川に雄姿を映す現在の病棟ができた1988年に取材した。まるでホテルのロビーのような広大なエントランスホールは,大規模災害時を想定し,ここでトリアージができることをも想定したものだ。分厚い堆積層の軟弱地盤を考慮した地震に強い耐震構造で,ハード,ソフトの両面において,県境にかかわらず,このビルが見える限りの広い地域の住民の健康と安心を平時も災害時も確保できる地域医療の拠点病院であろうとした志は高い。近くヘリポートを備えた施設も増築されるという。今後は医療の質をより高 め,地域の信頼に応えてほしい。
     最後に,これはそもそもの話だが,今は地域がさまざまな病気に苦しんでいるといってもいい。地域が元気でなければ,地域医療もよって立つ基盤を失ってしまう。長年,地域を取材してきた記者として,地域とともに歩む地域医療であってほしいと願っている。
  • 山田 武司
    セッションID: S1-6
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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     本学術総会の田中孜学会長が病院長を務めておられるJA 岐阜厚生連中濃厚生病院のある関市は岐阜市の東隣りに位置する人口9万5千人の典型的な地方都市です。
     地理的には日本のほぼ真ん中,濃尾平野の北端にあって,清流長良川の河畔では奈良時代から続く伝統の“小瀬鵜飼”が3人の宮内庁式部職の鵜匠によって受け継がれています。更に鎌倉時代に始まった刀の伝統技術は今日まで受け継がれ,包丁,鋏,カミソリ,カッターなどの家庭用品や産業用刃物,医療メスなどの一大生産基地となっています。昨今の健康志向と結びついた世界的な日本食ブームは調理に必須の包丁の需要を喚起して,関市は刃物生産ナンバーワンの地位を揺るぎないものにしています。
     一方,地域医療の中核である中濃厚生病院を中心に154の医療・保健衛生機関と80の福祉施設があり,3,000人余の人が仕事に従事してきました。私はそんな恵まれた医療環境のこの町に60数年生活し,40年余り刃物生産に従事し,また鵜飼の運営にも携わっていて,そんな恵まれた医療システムの恩恵を享受している立場の一市民として日頃の医療に関して思い付くことを少し述べさせていただきます。
     私には94歳の母がいます。妻と3人の子供,2人の孫の家族です。母は月1回定期的に内科と眼科に通い,近所の接骨院にでかけています。どこが悪いということはないが,1回の自己負担が少ないということで足繁く通う人も多いということです。働いている子供たちは3割負担,孫は大阪の育児医療助成金も受け,1割の負担で治療を受けています。
     それぞれ保険制度の恩恵を受けていますが,お互いに支えあう保険という理念から思うと,時々耳にする医療の話題に釈然としないものがあります。
     時として,治療を受ける側の自分勝手な,しかも過剰と思えるような要求があるのではないでしょうか? もしかしたら制度上それらの要望を受け入れざるをえない医療機関もあるのではと感じています。世界一長寿国で,医療機関と患者や家族が延命の為のみを目的にした加療を強いられるケースが多くなってきているような気がします。
     日本の医療保険システムは手厚く,海外から羨望されているということですが,その制度を維持するためには,近い将来80兆円もの巨費が必要となると聞いています。破綻という言葉の前に,医療制度の現状を私達一人ひとりが自分自身の事として認識することが必要であると思います。
    政治,経済など制度の疲弊が叫ばれる激動の社会にあって,現行の医療システムが誰にも納得できるよう改革され,バランスのとれた運営がされることを願っています。
  • 小林 真哉
    セッションID: S2-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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     ひとたび健康を損なうと摂食機能は最初に障害されるもののひとつであり,医療の現場では,患者の健康管理および治療に携わる過程で,絶食,点滴,治療食,食事指導等の栄養に関する手段を繁用する。それらをより効率的・機能的にチームで行う治療がNST(nutrition support team:栄養サポートチーム)である。当院は入院患者の約4割が80歳を超える,へき地中山間部にある200床規模のケアミックス型の病院であるが,平成17年7月よりNST を発足させ介護病棟・一般病棟の入院患者に対して積極的に携わってきた。その過程で,十分な栄養素を必要量摂取することは,基礎体力を向上させ,健康維持につながるとの観点から,各職種が入院前の在宅における栄養管理・食育の重要性を再認識した。かつては,食・栄養の院内外での医療啓発活動は,管理栄養士・保健師の領域であったが,NST の登場により各職種がそれぞれ専門の立場から参入し,院内・外での活動内容を充実・展開してきた。更にその活動を継続するにあたり,当地域においては,高齢化・過疎化・インフラ整備不良等が住民の健康に非常に影響することが実感された。地域医療を守る立場からは,住民の栄養・食事状況をより詳細に把握する必要性が求められ,今回,地域支援の一環として地域全域を対象としたアンケート調査を約10,000人(内65歳以上6,500人)に実施し,生活基盤・ライフスタイルを知る機会を得た。その解析の結果,当地域では,過疎化・高齢化が急速に進み高齢者の占める割合が40%以上の自治区も多く存在しており,高齢者世帯においては独居の割合が非常に高く女性ではこの傾向がより顕著であることがわかった。更に,抽出した高齢者87名(平均年齢81.2歳,男性30名,女性57名)には簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ ; brieftype self-administered diet history questionnaire)を用いた栄養状態調査と日常生活の実態を検討した。栄養摂取状況は食事摂取基準に基づいた,(1)現状維持,(2)要注意,(3)食生活の改善が必要,の3段階分類では,食物繊維,食塩,脂質,飽和脂肪酸等項目で(2)(3)の割合が高かった。在宅における栄養の摂取は家族構成,ライフスタイル等により多様であり,必要な栄養量を各自が把握することは,普段,意識しないことではあるが,大変重要である。また,現在の場所に住み続けたいと思う割合は加齢とともに増加しているが,障害として「日用品の買物」「医療や介護」「一人暮らしになってしまう」など不安要因も明らかになった。今後,住み慣れた土地で健やかな日常生活を送るために,調査で明らかとなった日常生活での実態を検証し,在宅における栄養管理の重要性を啓蒙しつつ,医療のみならず保健・福祉も含めた総合的な事業展開を視野にいれた,地域コミュニティーで院内・外の住民に対する活動を展開していきたい。
  • 山崎 雅之, 濱野 強, 塩飽 邦憲
    セッションID: S2-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    〈緒言〉生活習慣の変化に伴い2型糖尿病が増加しつつあり,予防・管理対策の確立が急務となっている。肥満や糖尿病増加の主要な原因は,身体活動不足と過食,肥満やインスリン抵抗性を促進する単純糖質の過剰摂取と考えられる。広い中山間地域を抱える島根県でも,豊かな自然や食,住環境に恵まれているが,貧弱な公共交通網により自家用車利用が多く,大都市と比べて,身体活動量が低いために,約10年の遅れで肥満や糖尿病が増加しつつある。また,島根県内でも食環境が異なり,生活習慣病の地域差は大きい。そのため島根大学では,疾病予知予防研究拠点を設置し,地域住民の協力を得て県内での生活習慣病の予知予防を主眼においた多目的コホート研究(Shimane study)を展開しつつある。
    〈ベースライン調査〉2006年~2010年に,雲南市,出雲市佐田町,邑智郡邑南町,隠岐郡隠岐の島町で特定健診時に,40歳以上の3,840人(男性1,649,女性2,191人)から研究承諾を得て,ベースライン時の生活習慣と健康状態を比較した。
    〈食習慣〉塩分摂取など定量的な食習慣情報は収集中であるが,雲南市,佐田町,邑南町は中山間地域に,隠岐の島町は離島に属している。このため,隠岐の島町では魚が多食され,邑南町(広島市に隣接),佐田町(出雲市中心部まで20分),雲南市の順に魚や肉の摂取が少なく,野菜の摂取が多くなっている。減塩モニターを用いた1日推定塩分摂取量は,隠岐の島町が邑南町より約1g 少なかった。
    〈肥満〉男性のBMI25以上(肥満1度以上)は全国40歳以上30%(平成20年度国民栄養調査)に対して,中山間地域で20~21%と低く,隠岐の島町が29%であった。女性のBMI25以上は,全国26%に対し,中山間地域で19~21%と低く,隠岐の島町で30%と高かった。全国平均と比較して,中山間地域では,男女とも肥満は少なかったが,隠岐の島町は魚の多食,男性での多量飲酒があり,肥満が多かった。
    〈高血圧症,脂質異常症〉高血圧症治療者は,全国の男性33%に対して,中山間地域では19~31%と若干低く,隠岐の島町では54%と高かった。女性でも全国30%に対して隠岐の島町が43%と高かった。女性の脂質異常症でも,隠岐の島町で治療者割合(34%)が高かった。
    〈糖尿病〉HbA1c6.1%以上(JDS 値)の割合では,40歳以上男性の全国平均が14%で,中山間地域が9~11%であるのに対し,隠岐の島町で20%と高かった。さらに,治療中患者を加えると,中山間地域で11~14%に対して,隠岐の島町は25%ときわめて高率であった。しかし,合併症の多くなるHbA1c7.1%以上の割合は,中山間地域21~29%に対し,隠岐の島町では0%であった。
    〈まとめ〉過食は,農村でも肥満や糖尿病の多さに影響していたが,隠岐の島町の疾病管理状況は最も良好であり,医療費は県下で最も低い。農村地域での生活習慣病の予防や管理には生活習慣の改善とともに,疾病管理の強化も重要である。
  • 有澤 正子
    セッションID: S2-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
     日本は世界でも最も高齢化が進んだ国であり,その長寿の秘訣として,米,野菜,魚が多く,低脂肪の日本食の効果と考えられている。しかし平均寿命が長い半面,日本の平均要介護状態期間は6年以上と長く,平均寿命から介護を必要とする期間を差し引いた「健康寿命」の延長は高齢者ならびに家族のQOL,介護・医療リソース,医療費の観点から重要な社会問題として認識されている。健康寿命を延ばす対策として,生活習慣病やメタボリック・シンドロームの抑制を目的に40歳以上(前期高齢者まで)を対象に特定健診・特定保健指導を実施している。しかし,その栄養指導内容は肥満や糖尿病等のリスクを鑑みた減量,減塩,低脂肪食が一般的である。
     後期高齢者においては,BMI が高値であっても死亡率の増加は見られず,健常時の体重が適正体重と考えられることから,自立できる身体機能の維持を目標とした栄養指導が望ましいと考えられる。高齢者の栄養問題としては,生活習慣病のコントロールに加え,主にたんぱく質が不足する,たんぱく質・エネルギー低栄養(Protein Energy Malnutrition : PEM)が重要である。
     PEM は摂取たんぱく質量が不足した結果,骨格筋のたんぱく質減少による除脂肪体重の減少や免疫能が低下し,身体機能の低下に至ると考えられており,介護の観点からも予防したい栄養障害である。そのためには,まずスクリーニングツール等を用いてPEM に関連した食生活の問題を抽出し,実施可能な問題解決策を提案する必要がある。
     高齢者の栄養を考える上での特徴としては,加齢に伴い身体機能が低下すること,合併する慢性疾患や障害が様々であるため個人差が大きいこと,長年の食習慣が様々であることがあげられる。また加齢に伴い,摂取総量が減少するとバランスのよい摂取が困難になり,特に口腔や嚥下の問題がある場合はたんぱく質の摂取不足が起こりやすくなる。高齢者においては食習慣を変更しにくい傾向があるので,このような口腔の問題が生じた場合,バランスのよい栄養摂取を維持するため適切な指導を施す必要がある。今回,PEM 予防の観点から適切な高齢者の栄養について考察する。
  • 鷹津 久登
    セッションID: S2-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    〈背景〉脳血管障害や虚血性心疾患などの心血管疾患(cardiovascular disease ; CVD)の発症には,生活習慣に関連する様々な危険因子が強く関連することが知られている。高血圧,糖尿病,高脂血症,喫煙が4大危険因子とされ,これらの治療が重要視され,また昨今は腹部肥満を特徴とするメタボリック症候群への介入が強く叫ばれている。一方,我が国のCVD 特に虚血性心疾患の発症は欧米より数段低く,その理由の1つとして我が国では魚食をふんだんにするため,これらに由来する不飽和脂肪酸の摂取が良い影響をもたらしているのではないかとされている。加えて,魚食を好むわれわれ日本人の中でも魚食の特に多い住民群ではそうでない群に比較して動脈硬化性疾患の発症が有意に低いことが近年の疫学調査で明らかにされつつある。
    〈目的〉さて,われわれの診療フィールドの一部である岐阜県の農山村に目を移したとき,はたしてその食習慣や,血液中の不飽和脂肪酸濃度の実情がどのようであるかを明らかにすれば,食の面から農山村住民にアプローチする端緒になると考え以下の検討を行った。
    〈方法〉対象として岐阜県関市上之保地区の住民の協力を得ることとした。この地域は濃尾平野の北端に存在する関市に最近編入された山間部にあり,住民人口は2,100人程度,農業,林業が中心であり,高齢化率も36%を超えている地域である(調査を行った2008年の統計)。また,「海なし県」の岐阜県の中でも歴史的に海からの食料の流通が少ないため,魚食習慣もあまり多くないことが予想された。そこで毎年行われる住民検診の際に,住民の協力を得て食習慣に関する簡単なアンケートと一般血液検査の際に血清中の脂肪酸分画の測定をさせていただくこととした。文書と口頭にて検査内容を説明し文書にて検査の同意を得られた男性118名,女性189名の計307名が対象で,年齢は平均64.3±13.2歳であった。食習慣のアンケートについては対面式の聞き取り調査を行ない,脂肪酸分画の測定は株式会社BML に依頼した。魚食に関連する不飽和脂肪酸の目安としてEPA/AA 比(エイコサペンタエン酸/アラキドン酸比)を求め,これらをJELIS 研究(Japan EPA lipid intervention study)で求められた全国平均値,および岐阜市平均値と比較検討した。
    〈結果と考案〉週のうち魚食をする頻度を尋ねたところ2日と答えた人が最も多く,平均2.0日,肉食は平均2.3日であった。また,魚食による不飽和脂肪酸を反映するとされるEPA/AA 比は平均で0.42±0.23と全国平均0.61±0.20,岐阜市平均0.48±0.30に比べて低値であった。また,年齢別のEPA/AA 比は男性では70歳代,女性では80歳代が高く50歳代の方が低い傾向にあった。岐阜県内での脳血管疾患標準化死亡比をみると当地での男性の比が高く魚食の少なさが関与している可能性も否定できない結果であった。
    〈結論〉海から遠く位置する農山村では魚食の頻度が低いと考えられ,これは血清中の不飽和脂肪酸の分析からも裏付けられた。いくつかの疫学からEPA は動脈硬化性疾患の予防効果が示されており,特にこのような集団ではその効用が期待できる。今後は特に若い世代への魚食の促進とともに必要に応じたサプリメントなどの摂取が推奨されると考えられた。
  • 北村 祐子
    セッションID: S2-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉平成21年度の国民栄養調査結果によると,自分にとって適切な食事内容,量の認知状況は20,30代の男女とも70%前後が知っていると回答している。しかし,食事の脂肪エネルギー比率を25%以上摂取している割合は,20,30代の男女とも50%以上であり,「健康日本21」が目標とする食事の脂肪エネルギー比率を25%以下とすることは,困難な状況であることがうかがえる。このような高脂肪食をはじめとする食習慣の不適切さや運動不足等により生活習慣病が増加している中,生活習慣病への移行を予防することが我々,管理栄養士の大きな課題であると考える。そこで,当院にて実施した生活習慣病予防健診及び定期健康診断の結果より,現状を把握し,今後の課題について報告する。
    〈対象〉期間:2008年から2010年。生活習慣病予防健診及び定期健康診断受診者:4,824名。特定健康診査対象群(以下対象群とする):2,244名。非特定健康診査対象群(以下非対象群とする):2,580名。検査項目:BMI,腹囲,血圧,中性脂肪,HDL コレステロール,LDL コレステロール。
    〈結果〉BMI25以上の割合は,対象群では23.1%,23.4%,23.9%(経年順,以下同様),非対象群では8.3%,8.6%,10.2%であった。腹囲が基準値以上の割合は,対象群では31.4%,26.8%,28.8%,非対象群では12.2%,9.5%,10.0%であった。血圧の基準値以上の割合は,対象群では48.5%,42.3%,48.7%,非対象群では21.7%,14.6%,18.7%であった。中性脂肪150mg/dl 以上の割合は,対象群では21.0%,22.4%,21.0%,非対象 群では9.7%,7.1%,7.8%であった。HDL コレステロール40mg/dl 以下の割合は,対象群では3.7%,2.4%,2.8%,非対象群では0.0%,0.0%,2.3%であった。LDL コレステロール120mg/dl 以上の割合は,対象群では52.6%,70.3%,58.4%,非対象群では21.3%,20.5%,23.8%であった。2008年から2010年の3年間の各項目結果において,対象群,非対象群とも対象者の割合はほぼ横ばいであり,変化はみられなかった。
    〈考察〉今回の結果では,対象群と非対象群において有意差がみられた。しかし,非対象群においても少なからずリスクを有する者がいる。この現状より,非対象群においても,適切な生活習慣あるいは健康維持,増進に役立つ情報を提供し,生活習慣病予防に対する啓蒙活動を行うことが必要であると考える。そのためには,生活習慣病予防健診及び定期健康診断時や結果報告時において,情報の提供等,環境整備が課題と考える。
  • 太田原 康成
    セッションID: WS1-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】当院では平成22年11月にDMATを結成した。厚労省訓練後にDMATとして正式に認定された後、災害医療対策委員会を設立した。DMAT訓練で学んだ災害対策をもとにして院内マニュアルを改訂した。その後東日本大震災が起こったが、当院からは岩手県に対する被災地支援を急性期・亜急性期・慢性期に行い、実際の活動の中からその問題点が明らかとなった。また当病院が地震に伴い停電となった2回の経験の中で、DMATの訓練のみでは知り得なかった問題点が明らかとなった。我々の取り組みの現状と課題を紹介する。 【方法】DMAT訓練終了時点での問題点・災害発生直後の活動内容と問題点・岩手県診療支援時の活動内容と問題点・当院の被災の問題点に分けて検討した。 【結果】DMAT訓練終了時には院内の災害対策マニュアルの不備を問題点として挙げて、改訂を行った。大震災直後には岩手県釜石市でDMAT支援活動を行ったが、電話などの情報伝達手段がなかったため、情報収集が不十分で満足な支援活動を行えなかった一方、情報のない状況下ではあったが救急患者対応などの活動は行った。衛星携帯電話などによる情報収集の重要性が明らかとなった。岩手県診療支援活動では医師・看護師・薬剤師・事務職員が延べ18名参加し、情報の混乱する中で活動を行った。また当院の被害としては、停電により自家発電装置が稼働したものの、ネットワークサーバがダウンして、オーダリングを手作業で行うこととなった。院外の各機関(消防・市役所・電力会社など)との連携で反省点があった。 【結語】訓練で行った被災地支援活動はあくまでも訓練であり、実際の活動で新たな問題点が明らかとなった。今後の災害や当地域の災害を想定した日頃の活動の重要性が示唆された。
  • 森 茂, 林 勝知, 上田 宣夫, 三鴨 肇
    セッションID: WS1-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
     平成23年3月11日14時46分,東日本大震災が発生し,その2時間後に厚生労働省より全国のDMATに派遣要請が発動された。当院のDMATは2チームあり,今回1チームが宮城県に出動し現地で病院支援活動を行ったため,その経過について報告する。
     当院DMATは3月12日14時25分に当院を出発し,参集拠点の宮城県仙台医療センターに3月13日1時38分に参集した。メンバー構成は医師2名,看護師1名,調整員2名,移動手段は自動車,経路は岐阜から長野・中央自動車道 ,新潟・北陸自動車道,山形・山形自動車道を走り仙台に到着した。途中のコンビニエンスストアで3日分の食料,水を調達した。仙台医療センターにて統括DMATより,仙台市立病院に対する病院支援活動の指令をもらい3月13日から14日まで24時間の活動を行った。仙台市立病院には当院DMATを含めて4チームのDMATが派遣され,2チームずつが4交代勤務を行い,実働時間は各チーム12時間であった。活動内容は,現地医療スタッフが行う救急初期診療の補助であった。同病院は救命救急センター併設かつ災害拠点病院であり,現地医療スタッフもDMAT隊員であったため,活動は円滑に行われた。
     今回の活動を通じ,被災地の方々への心からのお見舞いの気持ちはもちろんであるが,それ以外に感じたことを列挙すると,1.DMATは24~48時間交代で活動を終えて帰還していくが,現地医療スタッフはほぼ不休で勤務しており,スタッフの疲弊が心配であった。2.食料,水は現地では全く調達できないため,相当量準備をしていく必要がある。3.携帯電話は繋がらないが,PHSは全く問題なく使用でき,衛星電話をほとんど使用することなく当院後方支援隊と連絡することが可能であった。4.ガソリンの給油は被災地のみならず近隣県でも困難であるため,移動手段が自動車の場合は,常に給油所の確認とガソリン満タンを心がける必要がある。であった。
  • 谷田部 淳一, 田口 文恵, 石田 泉, 佐藤 厚子, 亀田 俊夫, 上野 修一, 眞田 寛啓
    セッションID: WS1-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    【背景と目的】2011年3月11日、未曽有の大震災が東日本を襲った。交通路の寸断やガソリン供給の不足により、物理的被害の小さな病院や施設においても、経管栄養患者に対するパッケージ済み液状栄養食の不足をきたした。投与栄養量の一部を減じざるを得なかった実情と、制限栄養が患者に与えた影響について報告し考察する。
    【方法】高田厚生病院療養病棟に入院し、すべての栄養を経管投与に依存する46人の患者を対象とした(85.2±8.1歳)。液状栄養食の供給不足に伴い、3月14日から14日間、すべての患者において約40%の栄養制限が施行された(1012±154 to 610±58 kcal)。この緊急対応については同院臨時災害対策会議にて了承され、患者家族から書面による同意を得て施行された。
    【結果】震災より1か月後、死亡した対象患者はいなかった。栄養制限による脱水、下痢、貧血を含む健康被害は一切認められなかった。体重は平均1.2 kg減少したが、血液検査にて総蛋白(6.7±0.6 vs 7.1±0.7 g/dl, mean±SD)、アルブミン濃度(3.2±0.4 vs 3.3±0.5 g/dl)の有意な低下は見られなかった。震災前より褥瘡を保有していた12名の患者において、DESIGN-Rにより定量評価された褥瘡の状態に有意な変化は見られなかった(20.5±11.0 vs 19.5±15.7)。
    【考察と結論】非常時に備え常に保たれていた7日分の在庫では、必要とされる栄養投与を流通の回復まで継続することができなかった。しかし本結果から、経管栄養を受ける高齢者において、14日間にわたる一定の栄養制限は安全であることが示された。パッケージ済み液状栄養食を置き換えるオプションとしては、糖液やミキサー食などがあり議論の余地がある。災害時における経管栄養患者への対応について、公に定められたガイドラインは存在しない。東日本大震災に伴って発生した様々な経験を科学的に評価し、今後の災害発生に備えるエビデンスを積み上げることが重要である。
  • 増子 英教, 高橋 朝茂, 小林 大志, 加藤 陽一
    セッションID: WS1-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    福島第一原発事故による当院の避難状況について ~あの時、双葉厚生病院では何が起きたのか。~ 【はじめに】 今年3月11日に発生したM9.0東日本大震災により福島第一原発事故が発生。このときの当院の避難状況を報告する。 【避難状況】  <3月11日>   14:46頃 地震発生。外へ患者避難開始。その後、津波到達の恐れから、再び院内2階へ避難。しかし、津波は到達せず。   21:23頃 福島第一原発から半径3km圏内に避難命令。翌日、原発から約11km離れたオンフール双葉へ避難することに。  <3月12日>    5:44頃 福島第一原発から半径10km圏内に避難命令。    6:00頃 防護服を着た警察が来院。原発から約50kmの川俣へ避難先を変更。    8:30頃 川俣町への避難開始。その後、1号機でのベントにより再び屋内退避へ。一部の患者しか避難できず。   14:30頃 今度はバスとヘリも使用して避難開始。しかし、川俣町へは一部のみで、残りは仙台・二本松へ各々避難、双葉残留組もいた。  <3月13日>   仙台組・双葉残留組:午前中、ヘリにて二本松へ到着。サーベイ・除染実施。   二本松・川俣町組:12日に避難した当院の患者の看護と搬送先確保の作業に追われる。  <3月14日>  二本松組:12日からほぼ休まず患者の看護と搬送先確保の作業継続   川俣組:患者が全員搬送され、今度は入院患者・職員の安否確認開始。 ここで、オンフール双葉組の行方不明発覚。自衛隊に救出依頼。 <3月15日>  二本松組:当院の全入院患者の搬送が完了。   川俣組:入院患者・職員の安否確認完了。    正午近くに各自避難先を確保して解散。 【最後に】  今回の震災からの福島第一原発事故は勤務時間帯であるため、自分達職員は患者避難を第一優先に行動しため、ほとんど何も持たずに避難。現在、警戒区域で立ち入ることはできないが、1日も早く帰れる日を願っている。
  • 川上 典孝
    セッションID: WS1-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    目的  原発事故による放射性物質の飛散は、地域住民に放射線による被曝や放射性物質による汚染に対する不安や、身体的な健康に影響を及ぼす不安などの心理的変化が生じている。 原子力安全委員会が作成した「原子力施設等の防災対策について」に記載されているメンタルヘルス対策の一部に「アウトリーチ活動(医療関係者等が周辺住民等のところへ赴き、援助を提供すること)」がある。周辺住民と接することにより不安を軽減し、安心感をもたらすこと、心理的変化が強い者を把握し対応すること、周辺住民等が必要とする情報を提供すること等の役割を担い、適切に実施する必要がある。 当院は福島第一原発から約60kmの地点にあるが、幸い空間線量は5月時点で約0.25μSv/hと低く、今後新たな放射性物質の飛散が無ければ周辺住民に健康への影響が出る可能性は非常に低い。  不安を抱いている住民へ子供でも安心して住める地域であることを伝えるべく説明会を開催したので報告する。 方法 原発の状況と空間線量、被曝による身体への影響について、県や政府、国際機関、研究機関、各医学会が発表していることをまとめた資料を作成し、院内掲示および説明会を開催した。 結果  5月22日時点で4回開催、約170名参加。うち61名からアンケートを得た。結果、説明会を聞く前に気になっていたことで最も多かったのは「いつ原発は落ち着くのか?」81%、次いで「将来的な健康への不安」64%、「政府は嘘を言っているのではないか?」51%、「自宅の畑で採れたものは食べても大丈夫か?」47%、「子供の健康への不安」43%であった。   説明会については「参加して良かった」87%、「不安が解消された」54%であった。 考察  放射線技師でも住民の不安を解消することは可能であった。もっと早い時期に説明会を開いていればデマや間違った情報に惑わされる住民を減らせた可能性があった。
  • 吉田 晃, 小林 謙一, 高橋 芳江, 東海林 正樹, 南 直宏, 菊池 英明
    セッションID: WS1-6
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに、今回の東日本大震災で被災され、亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災地の一日も早い復興を願っております。 今回の震災に当たり、JA北海道厚生連は北海道からの依頼で、宮城県七ヶ浜町へ医療応援を行うことを決め、3病院で3月下旬より医療救護班を派遣していた。当院の医療救護班は平成23年4月12日から4月19日の7日間、七ヶ浜町へ出向し滞在した。 当初、避難所での日常診療を行う予定であったが、我々が出向した時点で避難所はすでに統合されつつあり、他県から派遣されている医療救護班の活動により、当班は避難所での診療の必要はなしと判断、独自に七ヶ浜町役場職員の精神的なストレスチェックも含めた健康診断を実施した。 ストレスチェックは平成7年~11年度に「作業関連疾患の予防に関する研究班」ストレス測定研究グループが作成した職業性ストレス簡易調査票を用いた。健診は、調査票を記入後に問診を行い、血圧測定、胸部聴診を行った後、結果を受験者へ手渡した。参加した職員は4日間で臨時職員も含めた全職員260人中150人、このうち正職員は167人中130人であった。年齢は18歳~67歳で中央値43歳、性別は男性94名、女性56名であった。一部の職員は1ヶ月間ほとんど休みを取っておらず、体調を崩した職員もいた。被災地自治体職員の勤務状態やそれに伴うストレスに関しての貴重なデータであり、今回七ヶ浜町の許可をいただき、考察も含めて報告を行う。
  • 植田 敦志, 森本 まどか, 永山 和宜, 湯原 孝典, 田畑 均, 箕輪 明美, 飯村 早苗, 森田 町子
    セッションID: WS2-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    慢性腎臓病(CKD)患者に対し、早期から適切な治療を行うことは、腎不全の進展と新規透析導入患者を抑制するために重要である。茨城県の5つの市からなる鹿行(ろっこう)地域は人口27万人を有するが、医療過疎により腎臓専門医は3人しかおらずCKD対策は遅れていた。2008年より当医師会が厚生労働省と日本腎臓財団主導で始まったFROM-J(腎疾患重症化予防のための戦略研究)の対象に選ばれ、かかりつけ医と基幹病院の専門医が連携してCKD治療を行うプログラムが開始された。また、交流の乏しかった地域の保健師と基幹病院の看護師もCKD対策の連絡会を立ち上げ情報交換を行っている。現在2つの市の保健師から1年間に約50名のCKD患者の紹介を受け、CKDの精密検査、蓄尿に基づく食事指導、生活指導等を当院で行っている。これまでは、連絡会を通して経過をフィードバックしてきたが、今回独自のCKD連携パスを作成し、この運用によって連携強化を図っていくところである。 これまでは、医師による病診連携を中心としたCKD対策を実施してきたが、必ずしも連携が十分に機能しているとは言えなかった。地域の保健師の協力は、新たなルートでの患者と病院とを連携し、CKDの早期発見、治療に有用であると考える。現段階では、これらの活動が腎不全の進行を抑制したとは言及できないが、ある市では、国保加入者による特定健診と16~39歳までの生活習慣病予防健診には尿タンパクと血清クレアチニンの測定のみであったのが、平成22年度より尿潜血が追加測定可能となり、我々の活動が腎関連健診項目の拡大に結びついたと評価できよう。現在、院内腎臓サポートチームによるCKD対策も院内にとどまらず、地域に開かれた集団指導を実施しており、腎臓専門医のボランティアによるCKD啓発活動の事例と合わせて報告したい。課題として医師会、学会、行政において、CKD対策の取り組み方に差があり調整に難渋することが挙げられる。このように医師、看護師、保健師など多職種によるシステム作りと、運用を円滑に進めるための各人の地道な努力こそが、地域連携を生かしたCKD対策に重要である。
  • 石井 洋子, 佐藤 作, 杵淵 香純, 柳田 奈央子, 井沢 茂
    セッションID: WS2-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    「地域栄養ケア研究会」の地域支援への取り組み <背景>近年、地域連携に関する取り組みは各方面で推進されている。しかし、栄養管理に関しては、病院・介護保険施設等それぞれが独自に行っている。今回、同一保健所管内の東海大学付属病院、伊勢原協同病院、鶴巻温泉病院、秦野保健福祉事務所を中心に連携することの目的や運営方法について検討した。<BR> <目的および方法>ひとの生涯における栄養ケアの連携とそれに関わる者の教育・スキルアップを目的に平成22年6月に「地域栄養ケア研究会」を立ち上げた。そこで本研究会の運営とその活動の取り組みについて報告する。<BR> <結果>1)本会は2010年6月に発足、会員数92名で管理栄養士・栄養士の職域の内訳病院59名、介護保険施設8名、行政12名、地域活動6名、その他7名であった。2)今年度の活動方針を栄養士の情報共有化とした。各施設の栄養関連研修会開催情報を公開し、会員の参加を募り、スキルアップを図った。3)ワーキンググループ(WG)を構成し、会員からの仕事上の悩み相談窓口を開設した。4)栄養ケア連携推進のために、各施設の食形態の共有化に向け作業を開始した。<BR> <考察>本会は今年度設立2年目になるが、患者・利用者が連携された環境の中で受ける栄養ケアについては、同じ視点のもとでサービスの提供をすることができ、情報の共有化推進についての有用性が示唆された。<BR> 更に、一人で悩みながら働いている栄養士の現状があり、若手栄養士の育成とサポート体制を確立することは、この地域で不安なく働いていくことに繋がると考えられる。また在宅療養において、在宅栄養士への情報提供により社会復帰の支援を行っていきたい。地域における栄養支援体制構築のため、本会の更なる事業を展開して患者支援活動に繋げていきたいと考える。
  • 福原 昇, 須田 結花, 築島 正彦, 伊藤 和正, 長沼 敏彦, 笹本 孝広, 飯村 高行, 松本 好正, 細沢 なぎさ, 平林 文子
    セッションID: WS2-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】当施設の放射線治療患者は02年までは15年間以上1日8名程度、年間100名程度であった。03年に放射線治療医が赴任し、04年には高性能放射線治療機器2台が稼動し現在では患者は年々増加し7倍以上となっている。【目的】当施設での放射線治療患者の変動を調査し放射線治療での医療連携につき検討したので報告する。【方法】02年から10年まで放射線治療を実施した患者を対象とした。患者数の推移を年度別、依頼元、患者居住地などに注目し検討を行った。必要な因子は追加調査した。【結果】全患者居住地を市内、隣接地域、周辺地域、遠隔地域に大別すると55%は市内在住であり、90%は市内と隣接地域の在住者であった。患者居住地は年々広がっていた。02年までは年間数名であった院外依頼は3年間で増加し05年以後は院外依頼と院内依頼がほぼ同数となっていた。院外依頼の多い上位10施設を放射線治療機器の有無で大別し年度別に依頼数を検討した。同10施設はいずれも市内と隣接地区に存在しており大部分は放射線治療設備の無い施設からの依頼であった。治療機器を保有する施設からの依頼は主として高精度放射線治療を目的とした依頼であった。他施設医師の離職と依頼元施設での治療機器の更新は依頼患者数に大きな影響を与えていた。【考察】増加した患者の半数以上は市内在住者であり、大部分は通院可能圏内の在住者であった。6週間程度の通院が必要な放射線治療では通院可能圏内からの受診数が多いことは理解できる。当地域での放射線治療患者数が7年間で7倍に増加したとは考えにくく、当地域に潜在的な需要があったためと考えられる。周辺地域での顧客の創造は放射線治療による医療連携においても重要である。顧客となる医療施設と患者のneedsやwantsなどを把握するとともにそれに適した医療を提供することが重要であり、内部環境および外部環境(他施設の状況)をも考慮した戦略が必要である。
  • 井坂 茂夫
    セッションID: WS2-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    埼玉県東北部に位置する利根保健医療圏(6市3町、人口66万人)では、平成22年度地域医療再生基金の交付により、6億4千万円の予算でIT技術を活用した地域医療連携システムを構築することが決定された。この地域では以前から地域完結型医療体制の構築に向けて、医療連携の重要性が認識されており、行政による地域医療連携を考えるシンポジウムが開催され、地域中核病院では顔の見える連携を目指して連携会議を開催するなど現場での動きが先行していた。その中で、糖尿病について2人主治医制を提唱し実践するなどの実績を上げてきていた。今回の事業計画では、まず第一の柱として「IT技術を活用した地域医療連携システムの構築」があり、地域の病院・診療所、診断及び検査センターなどを相互に接続して患者情報の共有化と医療機関の連携を促進する。第二の柱として「かかりつけ医カードの発行・普及」があり、複数の医療機関を受診した患者について、地域IDを共有することで診療情報の共有化を図る。救急対応時にも患者情報の把握が可能となり、適切な搬送先の選択を可能にする。患者自身にとっても自分の健康管理に活用することができる。第3の柱として「生涯電子カルテの構築」がある。持続的な地域医療の質の向上や効率化に向けた疾病管理システムを構築し、急性疾患モデルとして、脳卒中を、慢性疾患モデルとして糖尿病を取り上げ、地域連携パスをITネットワーク上で運営することを目指す。構想実現に向けて加須市が中核的事務局となり、関係行政機関代表、医師会代表、中核病院代表などからなる“埼玉利根保健医療圏医療連携推進協議会”が組織され、平成24年度にネットワーク運営がスタートするべく頻回に会合を重ね具体化構想を協議中である。
  • 塩飽 邦憲, 濱野 強, 山崎 雅之, 武田 美輪子, 岩本 麻実子
    セッションID: WS2-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    糖尿病や肥満について地域差を解析し,その原因となる要因を明らかにした上で,対策を立てることが重要であるため,島根コホートの対象者について地域,性年代別の解析を行った。
    対象と方法 40歳以上の3840人(男性1649人,女性2191人)の糖尿病管理状況をHbA1c JDS値以上により比較した。
    結果と考察 HbA1c6.1%または薬物治療中による有病率は,国民栄養調査等の全国平均よりも低かった。肥満と糖尿病との関連では,女性ではBMI18.5-22.9の正常者に比べて,やせBMI18.4以下が多く,またBMI増加につれて糖尿病は増加した。高齢者では,肥満と糖尿病の関連は明らかでなく,肥満によるインスリン抵抗による糖尿病よりも,やせでインスリン分泌不全が多いことがうかがえた。HbA1c 6.1%以上は男性で10%,女性は7%と性差が認められた。糖尿病の管理状況については,HbA1c 6.1%以上は60歳以上の高齢者に多かったが,60-74歳と75歳以上ではその割合は有意な差はなかった。HbA1c 7.1%以上の管理不良者は,男性に多く,特に40-59歳の壮年期に割合が多かった。管理不良者は治療中に多く,次いで生活指導で,診断なしには比較的少なかった。各管理区分とも、壮年に管理不良者が多かった。地域別のHbA1c分布では,治療中は隠岐の島町男女で多かったが,HbA1c7.1%以上の管理不良者は隠岐の島町には皆無であった。また,後期高齢者や国保の医療費も隠岐の島町は低く,糖尿病の管理がよいことが示唆された。したがって,1)医療機関における管理を強化するためにかかりつけ医の治療水準を高め,行政が患者の栄養・運動評価や管理を支援すること,2)壮年期の管理状況が悪いことから,産業医や健診機関と協力して壮年の糖尿病管理を強化することが重要と考えられる。
  • 池田  聡, 深澤 徳行, 本間 恵美子, 山之口 早苗, 鈴木 恵子
    セッションID: WS3-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】免疫力の低下によって起こる日和見感染症は、エイズなどの後天性免疫不全や悪性腫瘍の化療後、骨髄移植などでの免疫抑制状態の場合には重要な問題となる感染症で、経気道感染によるニューモシスチス肺炎(旧名カリニ肺炎)やサイトメガロウィルス肺炎がその代表である。これ等の患者ではこの感染症は致死的な重篤な症状になるが、適切な早期治療には著効するため早期診断、早期治療が必須である。当院においても特に血液内科病棟、呼吸器内科病棟ではこれ等の発症の可能性が高く早期診断の必要性もあり、病理部でこれらの感染症の遺伝子診断を2000年より開始している。ニューモシスチス肺炎(以下PCP)については過去に当学会で発表したが、サイトメガロウィルス肺炎(以下CMVP)についても同様に院内検査を行なってきたので今回その現状、有用性について報告したい。【現状】CMVのPCR条件はPCPと同一であり一般的な定性的PCR法である。材料は喀痰または気管支洗浄液であり、当院では2010年6月までに162件の検査依頼があり陽性例は21例(13%)あった。ちなみにPCPは227例中40例(18%)であった。同一検体で両方のPCRの依頼がある場合が多く、両方ともに陽性となった症例も8例(4.9%)あった。【有用性】CMVPでは呼吸器細胞診標本でふくろうの目と呼ばれる感染細胞を見つけることが直接の診断根拠となるが、実際にこの細胞を標本上見つけることは非常に少ない。また血中の抗体価を調べてもCMVはもともと潜伏感染しているため抗体価の上昇は意義が低い。唯一、血中の抗原を直接検鏡して確認するアンチゲネミア法が病態を反映し有用であるとされているが、この検査は体内のCMVの活性化状態を見ているだけで直接肺炎の原因を特定しているものではない。さらにこの検査は非常に手技が煩雑で院内で行なうのは難しい。それに対しCMVを細胞診材料でから検出できるPCR法はPCPのPCRと合わせて行なうことで症状や画像が酷似する両肺炎を直接鑑別できる。さらに検体の到着した翌日にはPCRを行い結果報告するため早期に結果が臨床に反映でき、その有用性は高いと思われる。
  • 村上 穣, 岡田 邦彦, 國枝 献治, 土屋 留美, 井出 京子, 杉山 昌秀, 駒村 祐治
    セッションID: WS3-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    【背景】
    当院は地域基幹病院であるが感染症科はなく、血液培養陽性症例への介入は行われていなかった。カンジダ血症を始めとする院内感染への対応も各科の担当医に委ねられており、必ずしも適正な診療が行われているとはいえなかった。そこで、医師(腎臓内科、胃腸科、救命救急センター所属)、看護師、臨床検査技師、薬剤師、事務職員によるカンジダ血症対策チームを結成し、カンジダ血症への組織的な治療介入を試みた。
    【目的】
    血液培養陽性のカンジダ血症症例に介入することで予後を改善することができるかどうか検討した。
    【対象と方法】
    2009年11月から2010年10月までの1年間に、14例がカンジダ血症と確定診断された。全例にカンジダ血症対策チームが介入し、院内ガイドラインに基づいた治療を実践した。チーム介入後の予後を介入前(2004年から2008年)のカンジダ血症43例の予後と比較検討した。
    【結果】
    抗真菌剤の投与率は介入前の77%(33/43例)から介入後は100%(14/14例)に、中心静脈カテーテルの抜去率は68%(23/34例)から82%(9/11例)にそれぞれ上昇した。30日後の死亡率は33%(14/43例)から14%(2/14例)に低下した。眼科紹介率は介入前の42%(18/43例)から介入後は93%(13/14例)に上昇し、眼内炎の合併率は39%(7/18例)から23%(3/13例)に低下した。
    【考察】
    感染症科のない当院においてもカンジダ血症症例に組織的に介入することで予後の改善を認めた。チームの活動が奏功した要因として、カンジダ血症を合併しやすい診療科の医師および多職種がチームに参加し、院内全体で取り組んだことが考えられた。
    【結語】
    感染症科のない地域基幹病院においてもカンジダ血症を始めとする院内感染に対して適正な診療が行える体制を定着させてゆく必要がある。
  • 川島 直樹, 寺田 浩史, 高橋 昭彦, 高田 淳, 前田 晃男
    セッションID: WS3-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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        異時性・多発性に膿瘍を形成したMSSA敗血症の1例  ○川島直樹 寺田浩史 高橋昭彦(JA岐阜厚生連西美濃厚生病院検査科)   高田 淳 前田晃男 (JA岐阜厚生連西美濃厚生病院内科) 【はじめに】化膿性腸腰筋膿瘍や開腹歴のない患者の腹腔内膿瘍は、比較的稀な疾患とされているが、今回我々は、異時性・多発性に腹腔内と腸腰筋に膿瘍を形成したMSSA敗血症の1例を経験したので報告する。<BR> 【症例】腰部脊柱管狭窄症、肛門周囲痛にて外来通院中の74歳女性。<BR> 【経過と所見】2011年1月下旬より発熱と強い全身倦怠感を認め、当院救急外来受診し、入院となる。入院時、両足趾には凍傷を認め、一部は潰瘍化していた。血液検査上は、WBC14,180/μl、CRP25.8mg/dlの強い炎症反応を認めたが、胸部から骨盤CTでは熱源の同定は不明。IPM、CLDM、γグロブリンの投与が開始されたが、連日38.5℃を越える発熱が続いた。入院時の血液培養よりMSSA、足趾潰瘍部の膿からも同菌種を検出し、同部からの血流感染による敗血症と診断され、抗菌薬をCEZ4g/day とCLDM12,000 mg/dayに変更となり、徐々に炎症反応は低下したが、発熱が続き、経過中2度の血液培養でMSSAを検出した。Gaシンチグラムにて、恥骨辺りに集積を認め、CT・エコー検査にて腹腔内膿瘍が確認され、開腹ドレナージが施行された。その後解熱、炎症反応も改善し抗菌薬投与終了となったが、再び発熱ショック状態。血液培養にてMSSAを検出、CT・エコーにて両側多発腸腰筋膿瘍を認め、穿刺ドレナージを施行され、同菌を検出。CEZ4g/day投与され、解熱・CRP陰性化し、エコー上膿瘍腔は消失しCEZ終了となる。10日後に再度発熱、CTにて腸腰筋膿瘍の増大を認め、CEZ投与を再開し5月末に軽快傾向となる。<BR> 【考察】本症例は、MSSA敗血症により、異時性・多発性に膿瘍を形成し、長期間の治療となった。細菌学的検査により同一の菌種が同定され、全て一連の感染症であると考えることができ、また、適性な抗菌薬の選択につながった。
  • 柴田 尚宏, 土屋 雅子, 大林 浩幸, 岩島 康仁, 野坂 博行
    セッションID: WS3-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    目的)Stenotrophomonas maltophiliaは多くの抗菌薬に耐性を示し、院内感染を引き起こす可能性のある菌として重要であるが、緑膿菌やAcinetobacterに比べ、実態は明らかでない。今回、我々は、当院におけるS. maltophiliaの臨床分離株を対象に、各種抗菌薬に対する感受性を調べたので報告する。 (方法)2009年11月から2011年5月に当院で各種臨床材料より分離されたS. maltophilia20株を対象に、CLSI-M100-S19に準じて微量液体希釈法により各種抗菌薬に対する感受性を測定し、各々の薬剤に対する耐性率を調べた。 (結果)今回対象とした20株のうち喀痰由来株が16株と最も多く、ついで胸水由来2株、尿由来1株、褥瘡由来1株であった。またこれらのうち、入院患者由来株が16株と圧倒的に多かった。対象菌株のメロペネム、レボフロキサシンおよびアミカシンに対する耐性率は、91、21および13_%_であり、3薬剤ともに耐性の株も6株存在した。MICを測定した抗菌薬の中では、ミノマイシンに対する耐性率が最も低く、4_%_であった。 (考察)当院で分離されたS. maltophiliaにおいて、多剤耐性株が確認された。こうした耐性機序として、クラスAおよびクラスBβ-ラクタマーゼ産生が考えられるが、それでは説明できない耐性もあり遺伝子学的解析を試みる必要があると考えられた。
  • 宮野 美幸, 熊原 比路美, 風間 裕子, 岡澤 敬彦, 金城 浩和, 赤塩 恵子, 清水 敏夫, 外間 政信, 木村 薫
    セッションID: WS3-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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     当院ではかつてノロウイルスによる院内集団感染が発生した。平成23年春に、再び院内集団感染が発生してしまったが、その経過と対策を集計し、次の流行期に向けて方針を検討したので報告する。
    経過:H23.3/16にS2病棟で下痢・嘔吐の患者が6人、職員3人が発生、感染元は1日で退院した患者を推定。3/23にH3で発症患者発生、S2スタッフの伝播を疑う。3/26にH4で同様の発症患者発生、H3からの転棟患者から感染を疑う。4/14にS3で集団発生。持込患者の汚物処理が不適切であり広がった可能性。これら4病棟の集団感染は最終的に患者32人、職員26人となった。
    対策:病棟からの連絡で直ちに感染対策小委員会を開催し、感染制御対策を検討・実施した。具体的には、発症者のゾーンニング、隔離病室の環境整備、次亜塩素酸Naによる病棟の全面消毒、面会制限、入院制限、転棟制限などであり、病棟の全面消毒は、新たな感染者が発生しなくなるまで継続した。
    考察:今季は地域の保育施設や学校で流行があり、近隣の複数の介護施設で集団感染がおき、幾人かは当院に救急搬送、入院となるケースが続いた。期間中に8人が入院しているが、入院してくる患者の隔離、入院制限、転棟制限のなかで、病室確保に苦慮した。また、本来はある程度の病棟が決められた診療科でも他の病棟に入院が振り分けられ、スタッフから病原体の伝播が起きるなど、更に感染拡大につながってしまった。いかに感染者を特定するかは重要で、今回の感染拡大では疑いの段階からゾーニングをするタイミングが遅れていた。期間中の吐物・便の処理は、常に感染性胃腸炎を念頭に処理する必要があった。多くの職員が感染したことから、個人防護具の適切な使用とともに、手指衛生の重要性を再認識した。
    方針:流行前に研修会を開催する。下痢・嘔吐の患者は常にゾーニングで対応する。スタッフの手洗いと個人防護具の適切な使用を徹底する。期間中は環境消毒を徹底する。
  • 竹之下 秀雄, 中村 聡一, 清水 孝郎, 山内 隆治
    セッションID: WS3-6
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    福島県は、ツツガムシ病の好発地域であり、届出患者数は、2009年が96人(当科は30人)、2010年は60人(当科で17人)で両年とも全国1位であった。2010年の当科の17人の中に、当科で第2例目となる妊婦に発症したツツガムシ病患者がおり、加療により軽快し無事出産できたので報告する。患者は27歳女性(2妊2産、妊娠32週6日)。初診時(第7病日)に、躯幹には辺縁が不明瞭な淡い暗赤色の播種状紅斑丘疹型の中毒疹様紅斑がみられ、左足首内側に刺し口があり、発熱しており、さらに肝機能障害、CRP上昇などの検査値異常がみつかり、ツツガムシ病を強く疑った。妊娠後期なのでミノサイクリン塩酸塩の投与で、胎児の歯の着色・エナメル形成不全や胎児の一過性発育不全を起こすことがあるため、初診日に同剤100mgの点滴静注を2回のみ施行したところ、軽快し、妊娠36週0日目に帝王切開で女児を出産した。ツツガムシ病リケッチア(Orientia Tsutsugamushi:OT)には各種の血清型が存在し、アカツツガムシはKato型OTを、フトゲツツガムシはGilliamまたはKarp型OTを、タテツツガムシはKawasaki型またはKuroki型OTをそれぞれ媒介することが知られている。本例では、これら6種類のOTのIgGとIgMを調べ、どのOTの抗体値が最も高いかを特定することができた。その結果、Kawasaki型のIgMが2560倍、IgGが160倍と最も高い抗体価を示したので、本例はタテツツガムシに刺されて発症したツツガムシ病であると判明した。出産時のKawasaki型IgM抗体価は、母体血が2560倍で、臍動静脈血には存在しなかったので、OTの胎盤感染はなかったと診断した。 
  • 中尾 紗織, 吉田 雅美, 熊澤 史織, 内藤 淳
    セッションID: WS3-7
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    1、はじめに
     整形外科における術後感染率は0~15%と報告されている。SSI(手術部位感染)が発生すると入院期間の延長など不利益が生じる恐れがある。H21年4月~H22年3月に当病棟では術後MRSA 感染者数が18件発生した。病室に擦拭消毒剤を設置しているにも関わらず、1処置1消毒が徹底されていない現状があるのではないかと疑問に感じた。TQM活動による感染予防に対する啓蒙活動を通し擦式消毒を定着させることが出来たので、ここに報告する。
    2、方法
     期間:H22年1月~H23年4月(手指衛生実施開始日:H22年6月~)
      ★_丸1_勉強会開催(対象者:医師、看護師、理学・作業療法士)と手指衛生に関するアンケート調査
      ★_丸2_手洗いと擦拭消毒剤のコスト比較
      ★_丸3_術後管理方法の見直し
      ★_丸4_患者や家族への感染予防指導の見直しと改善
    3、結果
     H21年4月~H22年3月 手術741件 MRSA感染者数18件。H22年4月~H23年3月 手術710件 MRSA感染者数7件。前年度比較にて63%減。
     労力給含めた1回の石鹸手洗:40.15円、1プッシュの擦拭消毒:5.4円、34.75円のコスト削減につながった。
    4、考察・結語
     手指消毒と料金の関係や、培地で細菌の繁殖状態を分りやすく伝える事で手指衛生の必要性を理解し感染予防に対する意識の向上が図れたと考える。またTQM活動で啓蒙を行った事で病院全体が擦式消毒剤を携帯使用する事ができた。
     擦拭消毒は除菌効果が個々でばらつかないといったメリットや1処置1手洗いという鉄則も容易である。その反面、効果の限界や手荒れ等の問題がある為、現場に即した対策を実施し継続していくかが今後の課題となる。
  • 長谷川 義高, 渡部 真志
    セッションID: RKS1-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    【 背景 】
     感染症は敗血症(性shock)の有無で重症度が判断される。重症感染症は菌血症とVital Signにより判断され、菌血症は血液培養陽性により診断される。当院において、血液培養は菌血症患者の治療対象菌を把握し治療効果を確認する手段として救急外来でも積極的に採取されているが、検体採取を判断する明確な基準はない。今回我々はVital Signが血液培養採取のタイミングの判断基準となりえるか調査した。

    【 方法 】
    ・対象:当院救急外来を2010年1月~12月に受診し血液培養を採取した15歳以上の患者
    ・方法:Retrospective cross sectional observational study
    各Vital sign (BT, SpO2, RR, HR, sBP)
    ・解析:各Vital Signの血液培養陽性・陰性群での平均値を比較

    【 結果 】
     対象患者は約600名(血液培養陽性70名、陰性530名)で、当院における陽性率は約11.6%であった。脈拍数と体温において両群間に統計学的有意差を認めた。他、血圧、SpO2、呼吸数においては統計学的有意差を認めなかった。

    【 考察 】
     今回の調査において脈拍数と体温において血液培養陽性・陰性の群間の比較において統計学的有意差が認められた。心拍数は体温と相関関係があると考えられており、体温が単独で血液培養陽性を評価できるVital Signである可能性が示唆された。当院の血液培養採取方法(手順、量など)は文献に準じた方法をとっており、今回の調査での血栄培養陽性率も他施設と同様となり、調査結果は妥当なものであると考えた。体温についてはより詳細な解析を行うことで血液培養採取のタイミングを示唆する可能性があるであろう。

    海南病院研修医二年次         ○長谷川 義高 ○渡部 真志
    青木 聡典  五十棲 秀幸  岩脇 由紀子  片山 彩子  鈴木 雄之典
    坪内 寛文  長縄 郁絵  牧野 明香里 宮本 麻衣子  宮本 理恵子  西川  薫里
  • 林 敬章, 大河内 昌弘, 服部 孝平, 郷治 滋希, 岩間  糾, 勝野  哲也, 浅田 馨, 後藤 章友, 神谷 泰隆, 大野 恒夫
    セッションID: RKS1-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    症例は、63歳男性。粉塵の職業歴なし。高血圧、慢性腎不全、肺気腫で近医通院中、H23年1月末より、喘鳴が持続し、さらに、呼吸困難を認めるようになったため、当院に搬送された。初診時、胸部に喘鳴を聴取するも下腿浮腫、頸動脈怒張は認めなかった。WBC14700(好中球優位)、CRP10.8mg/dl、プロカルシトニン1.12ng/ml, LDH 173IU/L, PaO2 45.1%, SpO2 75.8%(room air), 胸部X線&CT上、左上葉下葉にび慢性浸潤影を認め、両側胸水を認めた。心エコー上、左室壁運動は良好で、下大静脈拡張、右室拡大はなく、心不全の所見は認めなかった。胸水穿刺所見では、黄色の漏出性胸水で、ADA 5.4IU/Lであった。細菌性肺炎の疑いで、NIPPVによる呼吸管理に加え、抗生剤治療(Meropenem+Minocycline)を開始した。しかし、胸部陰影は5日間で急激に全肺野に広範に進展し、重篤な呼吸不全に悪化したため、人工呼吸管理に切り替えた。頻回の吸引痰検査では、有意菌の発育を認めず、喀痰中好酸球も認めずリンパ球の増多を認めた。結核菌培養、結核菌PCR、カンジダ抗原、β-D-グルカンには異常を認めなかった。状態悪化に伴い、抗生剤の種々変更にても効果なく、増悪期のCT上で牽引性気管支拡張所見は明らかではなかったが、SpA 273(高値)、SpD 508(高値)、KL-6 383U/ml(正常)を認めたため、急性間質性肺炎疑いと判断し、ステロイドパルス治療に加えて、シベレスタットナトリウムの併用治療を開始した。そうした処、急速に、肺野陰影の改善、呼吸状態は改善し、その後、ステロイドの漸減療法にても、肺野陰影の消失が得られた。1か月後の再検査では、SpA 194(高値)、SpD 235(高値)、KL-6 591U/ml(高値)とKL-6の上昇を認めた。抗核抗体、ANCAに異常を認めず、DLSTでも異常を認めなかったため、急性間質性肺炎のうちの非特異性間質性肺炎と診断した。その後退院し、ステロイドを漸減しているが、再燃なく、順調に経過している。
  • 水野 佳奈, 大河内 昌弘, 浅田 馨, 郷治 滋希, 岩間  糾, 勝野  哲也, 服部 孝平, 後藤 章友, 神谷 泰隆, 大野 恒夫
    セッションID: RKS1-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    症例は、50歳男性。職業は農業。鳩が家に住みついている。H23年1月に39-40℃台の発熱、頑固な咳を認め、近医での内服治療にても改善しないとのことで、1/20に当院に来院された。家族も同様な症状を認めているとの事だった。初診時、39℃の発熱を認めたが、咽頭発赤、頚部リンパ節の腫大はなく、胸部聴診上も異常所見を認めなかった。血液検査上、WBC4000/μl、CRP 11.1mg/dlと炎症反応高値を認めた。尿中レジオネラ抗原、尿中肺炎球菌抗原、マイコプラズマ迅速検査、インフルエンザ検査、結核菌、非結核性抗酸菌、カリニ、真菌、尿培養、血液培養に異常を認めなかった。画像上、胸部X線では明らかな異常は指摘できなかったが、CT上、両側胸膜直下に多発する10~20mm程度のすりガラス陰影を認めた。Chlamydophila psittaci抗体陰性で、Chlamydophila pneumoniae(CP)-IgG 3.37(高値)、CP-IgM 0.46(、CP-IgA 0.65と陽性 であった。画像上、非定形肺炎としては、非典型的であったがクラミドフィラ肺炎と診断して、マクロライド系薬、テトラサイクリン系薬の治療を行った。その後、自覚症状・炎症所見の改善に加えて、画像所見も順調に軽快した。ペア血清でも、CP-IgG 3.40と高値であり、クラミドフィラ肺炎の再感染と判断した。さらに、母も、同時期に、発熱、頑固な咳を認め、CT上、右上葉下葉に軽度の陰影を認め、CP-IgG 0.64、CP-IgM 1.16(高値)、CP-IgA 0.18であり、クラミドフィラ肺炎の初感染と判断した。祖母は、軽度の咳を認め、胸部CT上異常を認めなかったが、CP-IgG 1.15(高値)、CP-IgM 0.21、CP-IgA1.82(高値)であり、クラミドフィラ肺炎の再感染と判断した。以上より、家族内集団感染したクラミドフィラ肺炎と判断した。
  • 森川 恵輔, 大河内 昌弘, 郷治 滋希, 岩間  糾, 勝野  哲也, 浅田 馨, 服部 孝平, 後藤 章友, 神谷 泰隆, 大野 恒夫
    セッションID: RKS1-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    症例1は、24歳男性。H21年10/20より、38℃前後の発熱が続き、近医での内服治療にても改善しないとのことで、10/27に当院来院された。初診時、38℃の発熱、有痛性、弾性軟の頚部リンパ節の多発性腫大を認めた。血液検査上、WBC1300/μlまでの低下に加え、LDH326 IU/Lと高値、CRP0.3mg/dlであった。CT上、頚部・腋窩のリンパ節腫大、肝脾腫を認めた。入院後、種々の抗生剤点滴に加え、G-CSF注を行ったが、WBCの改善はみられるも、解熱せず、頚部リンパ節の腫大は持続し、肝脾腫の悪化を認め、さらに、体幹・下肢に発赤疹を認めるようになった。亜急性壊死性リンパ節炎(菊池病)の可能性を考え、NSAIDSを使用したところ、次第に解熱、頚部リンパ節および肝脾腫の消失、血液データの正常化が得られた。骨髄検査では、血球貪食症候群は否定的であり、リンパ節生検では、変性像が見られ、大型化リンパ球、核崩壊産物を貪食するマクロファージの増殖が見られる壊死性リンパ節炎に合致する所見であった。症例2は、39歳女性。H22年11/21より、39℃前後の発熱が続き、近医での内服治療にても改善しないとのことで、11/27に当院来院された。初診時、39.3℃の発熱、有痛性、弾性軟の左頚部リンパ節腫大を認めた。血液検査上、WBC1700/μlまでの低下に加え、LDH391 IU/Lと高値、CRP1.3mg/dlであった。CT上、頚部のリンパ節腫大、脾腫を認めた。G-CSF注に加え、NSAIDSを使用したところ、順調に解熱、頚部リンパ節および脾腫の消失、血液データの正常化が得られた。骨髄検査では、血球貪食症候群は否定的であった。ヒトヘルペスウィルス6型IgGが強陽性であった。近年、伝染性単核球症と類似した症状で発症する菊池病が報告されているが、まだ認知度は低い。その鑑別疾患として、生死にかかわる白血病、悪性リンパ腫、血球貪食症候群があり、当疾患の臨床的な特徴、治療法、鑑別方法を知ることは、重要であると考えられた。
  • 古本 恭子, 高原 真理子, 荒木 耕生, 植田 恵介, 井手 義顕, 山本 敬一, 米丸 亮, 高畑 武司
    セッションID: RKS1-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    マイコプラズマ肺炎は学童期に多い肺炎の一つで, マクロライド系抗生物質が第一選択とされてきた. しかし, 近年, マクロライド耐性肺炎の報告が増加している. その一方で, マクロライド感受性肺炎の流行期であるにも拘わらず, 治療に難渋する症例を経験することがある. 今回, 我々は, 臨床的に判断したクラリスロマイシン(CAM), ミノサイクリン(MINO)感受性マイコプラズマ肺炎患者において, CAM, MINO投与にも関わらず, 発熱が遷延した4例を報告する. 症例は, 平成22年12月から1月において当院に入院した6歳から11歳の肺炎4例である. 聴診所見, 胸部単純X線, 入院時のイムノカードおよび, ペア血清でのMp抗体価の上昇からMp肺炎と診断した. 4例中3例は入院前からCAM, MINO, アジスロマイシン(AZM)を内服していた. 発熱期間は, 入院前の内服期間を含めて, 7~8日間と遷延していた. これらの症例では, AST・LDH・フェリチンの高値から, 遷延する発熱の要因の一つに高サイトカイン血症の関与を考えて, メチルプレドニゾロン(mPSL)投与を3日間行なった. 全例でmPSL投与の12~24時間後より解熱傾向を認めた. 1例ではmPSL中止後に再発熱を認めたため, 再投与を行なったところ, 12時間後に解熱した. 発熱の遷延は, IL-2, 4, 12, 13, 18, IFN-γなどの炎症性サイトカインの臨床上の指標となる. マイコプラズマ肺炎において, 抗菌薬投与後も3~4日間解熱しない場合, 耐性マイコプラズマだけでなく, 高サイトカイン血症の関与を疑い早期のステロイド投与が望ましい.
  • 宮尾 暁, 柴原 宏, 九鬼 隆家
    セッションID: RKS1-6
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    侵襲性肺炎球菌感染症(腸腰筋膿瘍、髄膜炎、敗血症)に急性腎不全合併した一症例                                         相模原協同病院研修医1) 相模原協同病院腎臓内科2) ○宮尾暁(みやお さとる) 1) ,柴原宏2) ,九鬼隆家2) 【症例】 症例は生来健康な65歳男性。平成23年12月31日、意識障害(JCS 1-3 GCS E4V4M4)にて救急搬送された。呼吸、循環動態は保たれていたが、血液検査にて肝機能異常、腎機能異常(CRE3.62 mg/dl,BUN71.5 mg/dl)あり多臓器不全みられた。またCTにて腸腰筋膿瘍みとめ、敗血症の診断で抗生剤治療開始し緊急透析施行。その後意識障害続いており37.2℃の微熱みられたため、ルンバール施行したところグラム染色にて肺炎球菌が観察され、細菌性髄膜炎の診断となり、侵襲性肺炎球菌感染症として抗生剤治療開始した。 翌日から意識障害は改善に向かったが腎機能は悪化傾向であり透析療法継続した。その後腎機能は回復に向かい第17病日透析離脱となった。 敗血症が落ち着いたところで腸腰筋膿瘍に対しCTガイド下生検施行し、その後腸腰筋膿瘍に対しドレナージ施行し、経過良好にて退院となった。                                         今回侵襲性肺炎球菌感染症に急性腎不全を合併した1症例を経験したのでその後の経過も含めて報告する。
  • 櫻井 綾子, 大河内 昌弘, 浅田 馨, 郷治 滋希, 岩間  糾, 勝野  哲也, 服部 孝平, 後藤 章友, 神谷 泰隆, 大野 恒夫
    セッションID: RKS2-7
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    近年、心筋梗塞や脳梗塞の治療として、抗血小板療法や抗凝固療法が積極的になされている。これら薬剤の稀な副作用である腸腰筋血腫に対する認知度は低い。さらに、腸腰筋血腫は、抗血小板剤や抗凝固剤の中止により自然に後遺症なく回復する軽症なタイプと、鼠径靭帯付近まで血腫が及び、同部位を通過する大腿神経が圧排されて大腿神経麻痺を発症し、あるいは、出血性ショックを来たし、早期の外科的血腫摘出術や経皮的動脈塞栓術が必要になる重症なタイプがあるため、その疾患を熟知することは重要である。症例は、74歳男性。H22年7/3頃から労作時胸痛、7/7 19時~7/8 0時30分まで胸痛が続いたため、7/8午前中に当院を受診された。心電図上は、V1-3 QS pattern, ST上昇、血液検査上は、CPK 467IU/L, CPK-MB 65IU/L, トロポニンT陽性、ラピチェック陽性、心エコー上は、前壁中隔のakinesisを認め、急性心筋梗塞と判断し、同日入院とした。入院時は、胸痛は消失しており、3時間後のCPK値は横ばいであり、経過から自然再開通と考えられたため、抗血小板療法や抗凝固療法で安定させてからの待機的心カテの方針とした。その後、心カテ予定の7/12の前日夜間より、左背部、鼠径、大腿部痛が出現した。CT, MRIで左腸腰筋の著明な腫脹を認め、大量の左腸腰筋血腫と判断した。抗血小板剤や抗凝固剤の中止をしたが、5日間で、Hb14.1から9.8g/dlと徐々に貧血が進行したため、輸血治療を必要とした。その後、安静治療のみで、疼痛、左腸腰筋の腫脹は徐々に改善した。その後、安静度を拡大した処、安静に近い状態でも胸痛があるため、抗血小板剤を段階的に2種類内服させ、冠動脈CT検査、心カテ治療を行った。冠動脈CTでは、LAD #6 石灰化 #7 90%狭窄が疑われ、心カテでは、LAD #6 90%狭窄に対して、Vision 3.5×18のBare Metallic Stentを留置した。その後、安静度拡大でも胸痛の再燃はなく、腸腰筋血腫の再発はなく、血腫は自然に吸収された。
  • 前田 宗伯, 大河内 昌弘, 郷治 滋希, 岩間  糾, 勝野  哲也, 浅田 馨, 服部 孝平, 後藤 章友, 神谷 泰隆, 大野 恒夫
    セッションID: RKS2-8
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    アルコール性乳酸アシドーシスはアルコール常用者で栄養不良と脱水が契機となり発症する病態である.治療の遅延や著明な代謝性アシドーシスを呈する場合、死の転帰をとることが多いとされているが、日本では、ウェルニッケ脳症に比較すると、その疾患の認知度は低い。今回、我々は、全身性の間代性痙攣で発症したアルコール性乳酸アシドーシスの1例を経験したので報告する。症例は、62才男性。高血圧の既往あり、アルコール依存症、大酒家である。H22年11/21に、嘔気、および、1~2分間の全身性の間代性痙攣を認めるようになり、救急搬送された。来院時、意識はほぼ清明だがやや受け答えが曖昧であった。診察中、突然、2~3分間の全身性の間代性痙攣を認め、意識消失した。尿検査では、ケトン体1+、蛋白2+、潜血-、血液検査では、WBC 10200、CRP 0.1、AST 40IU/L、ALT 21IU/L、γ-GTP 60IU/L、amylase 62IU/L、BS 99mg/dl、NH3 26μg/dl、Ca 8.7mg/dl、Mg 1.6mg/dl(↓) であった。血液ガス検査では、pH 7.316, PaO2 97.3, PaCO2 33.2, SaO2 96.1%, BE -8.5, アニオンギャップ 24.8mmol/Lとアニオンギャップの開大を認める代謝性アシドーシスを認めた。特殊検査では乳酸40.4mg/dlと上昇し, vitB1 41ng/mlと正常, アセト酢酸12.0, β-ヒドロキシ酪酸10.0, 総ケトン体22.0と正常値であった。頭部CT&MRIに異常認めず、腹部CT上、肝臓・膵臓・脾臓に異常を認めなかった。以上より、アルコール性乳酸アシドーシスと判断し、ブドウ糖含有の補液、VitB12製剤、Mg製剤、抗痙攣剤の治療を開始した。入院後、代謝性アシドーシスは重炭酸塩の投与なしに急速に改善され、乳酸値も正常化した。加えて、入院後、痙攣発作の再燃は見られず、後遺症なく、改善した。
  • 長縄 博和, 大河内 昌弘, 郷治 滋希, 岩間  糾, 勝野  哲也, 浅田 馨, 服部 孝平, 後藤 章友, 神谷 泰隆, 大野 恒夫
    セッションID: RKS2-9
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    従来の糖尿病治療薬で血糖コントロールが不良な患者に対してDPP-4阻害剤を使用することによって、血糖コントロールが、劇的に改善する症例が多く見られるようになっている。しかし、どのような患者に対して使用すると効果的であるのか、また、逆に、効果が期待できずに、どのような患者に対して、Basal supported oral therapy(BOT治療)を含めたインスリン治療を積極的に施行すべきかについての明確な治療予測因子についての報告は見られない。さらに、DPP-4阻害剤のどのような効果的な使い方があるのかについても明確にされていない。そこで、今回、我々は、DPP-4阻害剤を3カ月以上使用している2型糖尿病患者100名を対象とし、HbA1cが1%以上低下した群を著効群(50名)、HbA1cが1%未満の低下、あるいは悪化した群を反応不良群(50名)として、年齢、性別、BMI、DPP-4開始時のHbA1c、内因性インスリン分泌の指標であるC-peptide index (CPI)を調査し、治療予測因子となるかどうかを検討した。著効群、反応不良群の間で、年齢、性別、BMI、DPP-4開始時のHbA1cには有意差はなかったが、著効群では、CPIが0.5以上と高値であったのに対し、反応不良群では、0.5未満の低値例が多かった。つまり、DPP-4阻害剤の著効が期待できるには、内因性インスリン分泌がある程度保たれている必要があり、その指標としてCPIが有効と考えられた。また、CPIが低値の症例では、BOT治療を施行することにより、血糖コントロールの著明な改善が得られた。さらに、DPP-4阻害剤の効果的な使い方として、_丸1_first lineの治療薬として、_丸2_SU剤の2次無効例に対して、_丸3_他剤で効果不十分例に対しての切り替え、_丸4_他剤で副作用を認めた場合の切り替え、_丸5_食事の摂取量が不十分な高齢者、_丸6_軽度のステロイド糖尿病に対して、_丸7_腎機能が悪い場合の糖尿病治療薬としてなどの効果的な使い方が可能と考えられた。加えて、最後に、BOT+DPP-4阻害剤の併用療法が効果的であった症例を提示する。
  • 山本 陽一, 大河内 昌弘, 高田 恭子, 岩間  糾, 勝野  哲也, 浅田 馨, 服部 孝平, 後藤 章友, 神谷 泰隆, 大野 恒夫
    セッションID: RKS2-10
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    【目的】近年、糖尿病が、アルツハイマー型認知症の危険因子であり、糖尿病患者は、脳血管性認知症以外に、アルツハイマー型認知症の発症率が高いとの報告が、多く見られてきている。その病因として、高血糖による脳内の酸化ストレスの亢進、および、脳内のインスリン作用障害により惹起される中枢神経(海馬)細胞アポトーシスの亢進と、それに伴う海馬領域の萎縮が関与していることが明確にされつつある。そこで、今回、我々は、糖尿病患者のアルツハイマー型認知症の発症頻度、および、その発症に関連する因子について、画像診断を用いて客観的に検討した。【方法】脳血管障害の既往の無い20-100歳の2型糖尿病患者50名および非糖尿病患者50名を対象に、頭部MRI画像を利用した早期アルツハイマー病診断支援システムであるVSRADを用いて、海馬・海馬傍回の萎縮の有無を判定した。また、認知障害の有無を、VSRADの結果を知らない第3者である臨床心理士により長谷川式、MMSEテストを施行して頂き、客観的に判定した。【結果】2型糖尿病患者は、対照患者に比べて、有意に海馬・海馬傍回の萎縮を認め、認知障害のテストスコアの有意な低下が見られ、中でも、特に、短期記憶障害のテストスコアの低下が特徴的であった。関連する因子について検討した処、年齢、性別、BMIとは無関係で、糖尿病罹病期間が長い、HbA1cが不良な患者に、有意に海馬・海馬傍回の萎縮が見られた。加えて、若年糖尿病患者においては、長谷川式、MMSEテストスコアは保たれているものの有意に海馬・海馬傍回の萎縮が見られる症例が存在した。【結論】糖尿病患者において、アルツハイマー型認知症が高率に存在し、特に罹病期間が長い患者、糖尿病コントロールが不良な患者にアルツハイマー型認知症が発症しやすいと考えられた。また、糖尿病患者におけるアルツハイマー型認知症は、若年から、既にその兆候が始まっている可能性がある。さらに、若年糖尿病患者においては、画像診断上、海馬・海馬傍回の萎縮が見られても正常な脳が代償的に作用し、認知症テストでは、アルツハイマー型認知症の早期の存在が捉えられない可能性が考えられた。
  • 立石 優美子, 藤井  徹郎, 戸田  孝之, 松井  則明, 家坂  義人
    セッションID: RKS2-11
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    糖尿病で当科通院中の2007年より血尿,2008年より蛋白尿、軽度腎障害(シスタチンC 1.30 mg/dl), ANCA高値(MPO-ANCA 105U/ml) 、腎生検で壊死性半月体形成性腎炎を認め、ANCA関連腎炎と診断。外来でPSL15mgから開始、MPO-ANCA 30U/ml前後を推移したが,蛋白尿と血尿は継続し、腎機能悪化を認めた。2010年3月から味覚障害が出現、低亜鉛血症を認めポラブレジンクの長期投与を行ったが症状の改善はみられなかった。その後両肩の筋痛と下肢の筋力低下、摂食障害が出現し、2011年2月3日入院(CRP0.37mg/dl MPO-ANCA 41U/ml Cre6.7 mg/dl Zn 88 mg/L).ANCA関連腎炎による急速進行性糸球体腎炎に対し2月22日からステロイドパルス療法(mPSL500mg/日3日間)、後療法PSL45mgで開始、その後斬減した。CRP、ANCAは陰性化したが腎機能は改善せず、3月26日透析導入となった。味覚障害に対しては、ステロイド増量に加え、口腔内ケア、被疑薬の中止、強化インスリン療法による血糖コントロール、血中亜鉛濃度維持を行った。震災後口腔内衛生面悪化に伴い、舌への白苔付着・潰瘍形成がみられたがミコナゾール内服で改善した。濾紙テ゛ィスク法による味覚検査をステロイド治療前後で行い、左舌前方(鼓索神経支配域)で甘味:感知せず→4 ,塩味4→3 ,苦味:感知せず→5(1→5の順で試薬の濃度上昇)と若干改善、食事摂取良好となり4月24日退院。味覚障害を合併した急速進行性糸球体腎炎は比較的まれであり、文献的考察も踏まえ報告する。
  • 中瀬 一真, 矢田 崇純, 原田 哲朗, 浦出 伸治, 別府 徹也, 直田 浩明, 山本 憲彦, 小林 一彦
    セッションID: RKS2-12
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    〈症例〉63歳男性 〈主訴〉見当識障害、羽ばたき振戦 〈家族歴〉母親が遺伝性毛細血管拡張症 〈生活歴〉焼酎1合/日を40年間 〈現病歴〉 普段より繰り返し鼻出血を認めていた。平成20年にアルコール性肝硬変による肝性脳症にて入院加療されている。 退院後は著変なく通院していたが、平成21年以降は来院しなくなり飲酒を続けていた。 平成23年2月、見当識障害と羽ばたき振戦を認めたため家族に連れられ当院受診し、精査加療目的に入院となった。 〈入院後経過〉 既往歴や飲酒歴、アンモニア・ヒアルロン酸高値より、入院当初はアルコール性肝硬変による肝性脳症を考え、禁酒および内服加療を行った。 内服加療によるコントロールを試みるもアンモニアの高値は持続。肝内評価のため腹部超音波・腹部造影CT施行したところ肝内にびまん性シャントを認めた。 繰り返す鼻出血・口腔粘膜の点状出血・動静脈異常・家族歴より、遺伝性毛細血管拡張症と診断した。 〈考察〉 本症例ではアルコール性肝硬変に遺伝性毛細血管拡張症が加わり肝性脳症のコントロールが困難となっていると考えた。 遺伝性毛細血管拡張症の肝血管病変の割合は74%と高率であるが多くは軽度であり、症候性のものはそのうち8%と少ない。 症状を呈した場合でも、肝動脈-肝静脈シャント・肝動脈-門脈シャントに由来する心不全や門脈圧亢進・胆嚢壊死が多く、肝性脳症の原因となる門脈-肝静脈シャントは少ないとされている。 〈結語〉 遺伝性毛細血管拡張症に合併した肝性脳症の1例を経験した。
  • 一尾 享史, 大河内 昌弘, 岩間  糾, 郷治 滋希, 勝野  哲也, 浅田 馨, 服部 孝平, 後藤 章友, 神谷 泰隆, 大野 恒夫
    セッションID: RKS3-13
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    Lemmel症候群とは、十二指腸憩室が総胆管や膵管に機械的影響及ぼすことにより,肝胆膵疾患が生じる稀な病態である。その疾患名は比較的有名であるが、傍乳頭憩室の頻度の多さの割に、臨床的にその疾患に遭遇する機会はそれほど多くはない。また、Lemmel症候群は、保存的治療での再発の多さのため、内視鏡的乳頭切開術、外科的治療(十二指腸憩室切除、または、憩室内翻術、乳頭形成術、胆汁経路変更術(胆管切除および,総胆管空腸吻合または総胆管十二指腸吻合)などの治療法が勧めらており、手術適応については、慎重に判断する必要がある。今回、我々は、急性膵炎・胆管炎を併発し、画像診断上、Lemmel症候群と考えられた典型的な1例を経験したので報告する。症例は、87歳女性。高血圧、脳出血後遺症で近医に通院していた。H23年3/4より、38℃台の発熱、上腹部痛を認め改善しないため、3/5に当院来院された。初診時、38℃の発熱に加え、黄疸、右季肋部~臍上部痛を認め、血液検査上、WBC14000/μl、CRP 3.1mg/dl、T-Bil 3.5mg/dl、AST 284IU/L、ALT 266IU/L、ALP 1700IU/L、γ-GTP 745IU/L、Amy 514IU/L、Ca 7.9mg/dlと急性膵炎・胆管炎所見を認めため入院とした。CT&MRCP上は、胆嚢~総胆管拡張、胆嚢結石を認めたが、総胆管結石は認めなかった。加えて、十二指腸乳頭部に、憩室内残渣を伴う4cm大の傍乳頭憩室を認め、憩室による下部胆管の圧排所見が見られた。さらに、軽度の主膵管の拡張も見られた。入院後、抗生物質、膵酵素阻害剤の点滴の保存的治療で、解熱が得られ、腹部症状、肝胆道系膵酵素も順調に改善した。急性膵炎・胆管炎の治癒後、ERCPを試みた処、Vater乳頭は憩室内乳頭となっていた。胆管、膵管のカニュレーションを何度か試みるも困難で、胆管・膵管造影は出来なかった。当患者は、今回、初発発作であり、保存的治療で軽快していること、また、高齢でもあるため、手術治療はせずに見合わせた。現在まで、退院後、再発なく、順調に経過している。
  • 游 敬, 堀 哲夫, 渡辺 章充
    セッションID: RKS3-14
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】最近経験した障がい児に対する胃瘻・腸瘻造設術症例に対し、その適応と術後管理上の問題点を検討する。 【対象と方法】2009年2月から2011年5月の間に、障がい児に対して胃瘻・腸瘻造設術を施行した症例は男児5例、女児6例で、1歳未満2例、1歳~10歳未満3例、10歳~31歳6例の計11例であった。原疾患は、重症新生児仮死による低酸素性脳症が3例、染色体異常に伴うものが3例、難治性てんかんによるものが3例、その他溺水による低酸素性脳症、先天性右顔面神経麻痺、新生児壊死性腸炎術後に肺高血圧症・精神運動発達遅滞を合併した嚥下困難が各1例であった。3例が気管切開術既往あり、うち2例が人工呼吸管理中であった。術前は上部消化管造影と24時間下部食道pHモニタリング検査を施行した。術前後の経過と管理上の問題点、造設術の適応などを診療録より検討した。手術は開腹術にて胃瘻・腸瘻造設術を施行した。 【結果】術式は胃瘻6例、腸瘻1例、胃瘻+腸瘻4例であった。手術の適応は、経鼻胃管管理で事故抜去や挿入困難なもの8例、嚥下困難があり、誤嚥や胃食道逆流による肺炎・気管支炎を反復している症例が3例であった。術後における管理上の問題点(対処法)は、胃瘻では術直後の軽度の不良肉芽1例(液体窒素凍結療法)、腸瘻ではチューブ閉塞1例(ベッドサイドで再挿入)、術後早期の事故抜去1例(再挿入不可能なため抜去)、呑気症による腸閉塞併発1例(イレウス解除術)であった。現在全例生存しており、いずれの症例も呼吸器症状の改善と順調な体重増加を認め入院・在宅管理が容易になった。 【考察】障がい児のチューブ栄養管理は主治医とともに小児外科医も重要な役割を担い、適切な胃瘻・腸瘻管理によって、患児と家族のストレス・リスクの軽減、栄養状態の改善が確認され胃瘻・腸瘻の有用性が示された。
  • 横内 桂子, 松岡 裕士, 山下 拓磨, 小林 伸也, 細見 直樹, 丸岡 敬幸, 阿河 直子, 合田 吉徳, 近藤 英俊, 北村 弘樹
    セッションID: RKS3-15
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、嚥下機能低下患者を中心に経皮内視鏡的胃瘻造設術(以下PEG)が広く普及している。しかし様々な理由で造設が困難な症例も散見される。今回、当院における経皮内視鏡的胃瘻造設術不可および困難例について検討したので報告する。 【対象】2008年1月から2011年5月までに当院消化器内科にPEG目的で紹介された  例を対象とした。その内PEG(十二指腸瘻、小腸瘻も含む)が不可であった症例および造設に苦慮した症例に関し検討を加えた。 【結果】PEG前検査を行った152 例中4例(2.2_%_)が造設不可であった。不可症例4例の内訳は、巨大食道裂孔ヘルニアおよび進行胃癌の症例が1例ずつ、胃術後(Billroth II法、Roux-enY法)が2例であった。その他の胃術後症例は残胃、十二指腸、小腸などに造設が可能であった。穿刺部位が不安定な症例や一部分に限局している症例には術中に超音波検査を併用することで造設が可能となった。また横行結腸介在症例に関しては、造設時にCFを併用することで安全に造設することが可能であった。 【結論】これまで我々は本学会において、横行結腸介在例に対する工夫について報告をしてきた。その他のPEG造設困難症例においても様々な工夫を行うことで安全に造設できる症例も少なくないと思われる。ただ、PEG造設患者は一般に栄養状態や全身状態が不良である場合が多く、無理な造設は生命を脅かすリスクを秘めている。造設に際しては十分な適応の検討が必要であると考えられた。
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