日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2D-12
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頭蓋内出血を合併した抗凝固剤服用患者の緊急手術における血液凝固第IX因子製剤の有用性
星野 有
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抄録

【目的】抗凝固療法中に合併した頭蓋内出血性疾患のため緊急手術を施行した患者において、血液凝固第IX因子複合体(以下PCC)の有用性について検討したので報告する。【対象および方法】平成20年3月から平成22年4月までに、抗凝固療法中の患者で頭蓋内出血性疾患のため緊急手術が必要となった4症例を対象とした。内訳は、男性3例、女性1例、年齢は54歳から84歳であった。来院時のPT-INRは1.98~3.38と高値を示し、PCC 500単位とビタミンK10mgを静脈内に投与した。15分後に同値の改善を確認、1例の大脳皮質下出血と1例の小脳出血では全身麻酔下での開頭術を、2例の慢性硬膜下血腫で局所麻酔下に穿頭術を施行した。緊急手術の適応は、脳ヘルニア徴候1例、意識障害増悪が2例、片麻痺増悪が1例であった。この4例における手術方法、手術時間、術後出血について検討した。【結果】4例とも通常の手術を行い、手術時間は同時期の同様の手術と比較して時間の延長はみられなかった。全例で術後出血や再出血・再貯留はみられず、再手術は施行していない。【考察】従来、抗凝固療法中の頭蓋内出血症例では、ビタミンKと新鮮凍結血漿の投与が行なわれてきたが、緊急手術を要する疾患、特に急性硬膜下血腫では、両者を投与しつつ手術を開始していた。この際、手術範囲を最小限とする工夫をしても手術時間の延長や術後出血をきたすこともあった。近年の脳卒中治療ガイドラインでは、このような症例においてPCCの投与が推奨されており、その有効性が多く報告されている。今回、救命手術を要した1例を含む4例の緊急手術に際して、手術方法の変更、手術時間の延長、術後出血の合併がいずれも認められなかった点からPCCの有用性が示唆されたと考える。【結語】抗凝固療法中の頭蓋内出血性疾患の緊急手術において、PCCの有用性が示されたと思われる。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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