日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2E-03
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経カテーテル的血栓吸引療法が奏功した上腸間膜動脈塞栓症の1例
国居 由香古谷 隆和佐竹 真明小沢 博和小西 知己安永 満河村 武郎
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抄録

【はじめに】上腸間膜動脈(以下SMA)塞栓症は、外科的血行再建や小腸大量切除を要する死亡率の高い疾患である。近年、interventional radiologyの導入により、手術を回避できる例が報告されている。今回我々は、発症から約12時間経過したSMA塞栓症に対して、カテーテルによる血栓吸引療法を施行し良好な結果を得たので報告する。【症例】61歳、女性。既往症に心房細動がある。朝8時半頃より腹痛、下痢、嘔吐を自覚し近医を受診した。内服薬を処方され帰宅したが、腹痛が軽快しないため18時10分当院紹介受診となった。腹部は平坦、軟で筋性防御は認めなかった。心電図にて房細動を認めた。血液検査ではGOT、LDHは軽度上昇していたがCPKは正常範囲内であった。造影CTにてSMAは中結腸動脈分枝部より末梢で約6_cm_にわたって完全閉塞していた。以上より、発症から約12時間経過した心原性SMA塞栓症と診断した。しかし明らかな腸管壊死所見は認められなかったため、経カテーテル的血栓吸引療法を施行することとした。【血栓吸引療法】ガイディングカテーテルをSMAに挿入留置後、スロンバスターカテーテルを使用し血栓を吸引除去した。血栓除去が不十分な部位にはバルーン拡張を追加し、SMA本幹を確保することに成功した。造影後期相で、腸管への血流は十分であると診断した。治療後腹痛は速やかに消失した。術後抗凝固療法を施行し、腹部症状出現することなく軽快退院となった。【考察】SMA塞栓症に対する血栓吸引療法は、発症後10時間以内に開始することが望ましいとの報告が多い。本症例は中結腸動脈を介した側副血行路が維持された分節的閉塞であったため、発症後10時間以上経過していたにもかかわらず腸管壊死に至らず、経カテーテル的治療のみで治療できたと考えられる。【結語】発症から長時間経過した症例でも、腸管壊死の有無を慎重に判断し、経カテーテル的血栓吸引除去療法を行うことで、開腹手術を回避できる可能性がある。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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