日本農村医学会学術総会抄録集
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ISSN-L : 1880-1730
第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2E-11
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巨大脾嚢胞の一例
林 修平松島 優子福島 幸司白井 正広今井 厚風間 暁男上条 謙相崎 一雄河野 悟高野 靖悟
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キーワード: 脾嚢胞
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抄録

【はじめに】脾嚢胞は他の実質臓器の嚢胞に比較して極めて稀である。今回我々は巨大脾嚢胞の1例を経験したので報告する。 【症例】35歳、女性、半年前より腹部腫瘤の自覚があり他院を受診。貧血を認め脾腫精査目的で当院紹介入院となった。当院での腹部超音波検査、腹部CT検査などの結果から巨大脾嚢胞が疑われ、脾臓摘出術が施行された。 【画像所見】腹部超音波検査にて正中~左側腹部にかけて脾臓に接するように18.4×15.8cm大の腫瘤性病変を認め、内部は混濁様エコーで充満していた。周囲との境界は明瞭であるが、脾臓との連続性は確認できなかった。腹部CTにおいては脾臓内に20×17×14cm大の腫瘤を認めた。内部はやや高い水濃度を示し、隔壁構造や壁在結節は見られず、巨大嚢胞が疑われた。その他腫瘤性病変やリンパ節腫大は見られなかった。 【肉眼所見】摘出された脾臓は22×13×7cm大で13.5×6.0cm大の内腔が平滑な嚢 胞性病変が認められた。嚢胞の内容物は茶褐色の液体で約2,670ml、脾重量は約1.4kgであった。 【細胞所見】嚢胞内溶液のpapanicolaou染色標本を作製したところ、血清背景に泡沫細胞や好酸球、好中球を認めたが上皮細胞はみられず、Class_I_であった。 【病理組織所見】嚢胞壁は肥厚した線維性の結合織と単層の上皮細胞から構成され、一部で周囲に圧排され菲薄化した既存の脾臓が見られた。 【まとめ】脾臓の嚢胞性病変は真性嚢胞と偽嚢胞からなる。真性嚢胞は上皮嚢胞と寄生虫性嚢胞からなり、上皮嚢胞は小児や若年者に多く、その大部分は30歳以下であるとされている。嚢胞壁は扁平上皮や円柱上皮を有し、必ずしも全面を被覆しない。 偽嚢胞は一般的に高齢者に観察され、外傷の既往を有することが多い。嚢胞壁には上皮細胞はなく、壁に石灰化を伴うことが多い。この中でも偽嚢胞が80%程度を占めるが本症例は上記の特徴からも真性嚢胞であると考えられた。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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