日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2G-20
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農村部における在宅医療・ケアの課題 特に在宅療養支援診療所など在宅ケア政策の問題
長 純一長谷田 真帆島田 啓志加藤 二三和
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抄録

92年の第二次医療法改定以降、医療費削減を大きな目的として在宅医療の推進が掲げられてきた。近年在宅療養支援診療所制度が作られ診療報酬で高く評価されるなどにより、在宅への誘導が行われているが、これはきわめて都市型の制度であり、地方特に過疎化が進む農村では実際上恩恵が受けにくい制度である。
演者は以前より、現在の医療政策がきわめて都市型であることが地方の「医療崩壊」を助長している要因であると考えられるという立場で発信してきたが、特にこの在宅療養支援診療所制度はその典型といえる。在宅医療を強力に進めることが期待されこの制度が鳴り物 入りでつくられたが、演者の当初から予想し指摘してきたとおりその効果は限定的で、人口30万人以上の都市では有効性を認めているが、それ以外ではあまり機能していないということが、明らかになっている。
この要因は、地方・農村部では、診療所が一人医師体制であることがほとんどであり、また地理的にグループ診療やバックアップ体制が取りにくいため、24時間365日体制を必ず保障することが容易ではないこと、歴史的に病院が在宅医療を行ってきたケースでは、診療所が在宅医療の中心という制度に合わせることが容易ではないことなどが原因として考えられる。 演者は在宅ケアの領域で、地方・農村発で様々な問題提起を行ってきたが、今回それらの論点を整理するとともに、農村部の国民健康保険診療所での7年間と現小海診療所(在宅療養支援診療所)での活動や収支などを比較し、地方においてはその地域の医療資源の特性を踏まえた在宅ケアの推進方法が考えられる必要があることを確認したい。

参考 明日の在宅医療第5巻 P126からP149 佐久地域における在宅医療と地域連携の取り組み
月刊社会福祉(全国社会福祉協議会会誌 2010.4 P49,50 地方・へき地における医療の課題およびその背景と、その対策に関する提言

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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