日本農村医学会学術総会抄録集
Online ISSN : 1880-1730
Print ISSN : 1880-1749
ISSN-L : 1880-1730
第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1J-A-15
会議情報

高濃度GABA含有エキスの高血圧発症予防効果
SHRラットを用いた高濃度GABA含有酵母エキスの高血圧に対する影響評価
山崎 雅之王 莉米山 敏美岩本 麻実子武田 美輪子濱野 強塩飽 邦憲
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 本態性高血圧は、食生活、運動等の生活習慣が複雑に相互作用することで引き起こされる。近年では、活性酸素等の酸化ストレスによって誘導される一酸化窒素(NO)の不活性化による血管内皮細胞異常と血管収縮が本態性高血圧の一因であると考えられている。本態性高血圧治療にはAngiotensin _II_(AngII)受容体やAngiotensin変換酵素(ACE) の拮抗阻害剤等が用いられているが、根治は難しく、行動や食事制限はQOLの低下を招く。
 このような背景の中で、いくつかの発酵食品が本態性高血圧の発症予防に有効である可能性が報告されている。我々は漬物から単離された乳酸菌Lactobacillus brevis 12005株による乳酸発酵によりGABA(γ-アミノ酪酸)を豊富に含むパン酵母エキスの高血圧予防効果を高血圧発症モデルラット SHR/Izmに投与することで検討した。
 乳酸発酵パン酵母エキスを5%w/vで餌に混合し投与したGABA発酵群は、対照群と比較して、投与8週目以降で収縮期血圧の上昇が有意に抑制された。投与12週での尿中8-OHdG、8-イソプロスタン濃度、血清中AngIIの濃度が有意に低かった。以上の結果から、今回使用した乳酸発酵パン酵母エキスは、レニン-アンギオテンシン系に作用し、その抗酸化作用により、AngIIの産生を抑え、NADPHオキシダーゼを介したNOによる内皮依存性血管弛緩反応および血管保護によって血圧の上昇を抑制した可能性が考えられた。GABAの摂取は、血管内皮機能異常の発症を抑えることで高血圧の亢進を予防できる可能性がある。

 本研究は、アルプロン製薬株式会社(水津拓三)との共同研究で、中小企業庁「ものづくり中小企業製品開発等支援補助金」による支援を受けて行った。また、助言、支援をいただいた島根大学医学部病態病理学講座 並河徹先生に感謝申し上げます。

著者関連情報
© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top