日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1B-1
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高齢者の多い急性期病棟における褥瘡発生の背景分析
佐藤 厚子岡本 ひろ子高畑 清子舟木 裕子谷田部 淳一
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キーワード: 褥瘡, 予防, 看護
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抄録

【目的】高齢者に起こる褥瘡は治療に難渋することも多く、発症予防が重要となる。予防ケア効率化のため、褥瘡発生患者のリスクを分析するとともにスタッフの褥瘡予防に関する知識を調査した。
【方法】2010年4月から2011年3月まで、当院急性期病棟において褥瘡を発生した25症例について、MNA(Mini Nutritional Assessment)・ブレーデンスケール・発生部位を分析した。病棟看護師と看護助手(26名)へのアンケートは質問紙法にて行い、各項目に対する回答を「知っている」と「知らない」の2群にカテゴリー化した。
【倫理的配慮】文書により研究への同意を得た上、個人が特定されないよう配慮した。
【結果】褥瘡発生患者の平均年齢は87歳であり、日常生活自立度の低下が著明であった(C:22名、B:2名、A:1名)。ブレーデンスケールの総点平均は13.7で、サブスコアは活動性(1.7)、摩擦とずれ(1.4)において低かった。MNAでは、全ての患者が栄養障害ありと判定された。褥瘡は26個あり(踵部11、外果部2、仙骨部8、尾骨部2個など)、下肢にできた褥瘡が15個で56%に及んだ。褥瘡発生部位により、各スコアに差は認められなかった。  アンケートの回収率は100%であった。11の項目のうち、皮膚の構造(知っているvs. 知らない:50 vs. 50%)、皮膚の観察(65 vs. 35%)、ブレーデンスケール(38 vs. 62%)、体圧分散寝具の種類(35 vs. 65%)、体圧分散寝具の選択(25 vs. 75%)、スキンケア(63 vs. 38%)、栄養管理(54 vs. 46%)の7項目で「知っている」が7割に達していなかった。
【考察とまとめ】褥瘡の発生には個体要因と環境要因が関与する。患者の持つリスクを正確に把握し、特に環境要因に対し看護介入することで発生を減らす事ができる。今回の検討で褥瘡発生患者は活動性、摩擦とずれ、栄養状態において有意に高いリスクを有していた。しかしこれらのリスクに対応する、スタッフの知識が未だ不十分であった。この結果をふまえ、今後、患者や病棟の特徴に合わせた効率的な褥瘡予防対策に努めたい。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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