日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1B-19
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高齢期前世代の農業者における農繁期と農閑期の健康診断データ変化
大久保 洋一柳澤 和也土屋 桂子萩原 いづみ中澤 あけみ前島 文夫西垣 良夫夏川 周介
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抄録
<目的>
’09年度農林水産省の「農村高齢者の健康支援推進事業」の一環として行なった高齢期世代の農業者に対する調査から、農閑期に体重の増加、HDL-Cの減少という結果を得た。今回は高齢期前世代を対象に農繁期と農閑期の変化を明らかにする。
<対象>
長野県南佐久郡の2村の健康診断(健診)において、’08と’09年度に受診し、かつ一日8時間以上農作業をしている41歳から64歳の住民で、本調査に同意した男性25名(平均年齢55.8歳)、女性59名(同53.4歳)。
<方法>
農繁期(10~11月)、農閑期(1~2月)に健診を実施し、身体計測項目、血液検査項目について両時期を男女別で比較した。検定方法は対応のあるt検定、もしくはウィルコクソンの符号付順位検定を用い、有意水準は5%未満とした。
<結果・考察>
農閑期では農繁期と比べて以下のようなデータ変化を認めた。男性は、体重平均2.8kg、BMI平均1.0、腹囲平均3.7cm、収縮期血圧平均6.6mmHg、拡張期血圧平均3.2mmHg、AST中央値5.0IU/L、γ-GTP中央値5.0IU/Lが有意に増加し、HDL-Cは平均4.0mg/dlの有意な減少が見られた。また女性は、体重(以下平均値)2.0kg、BMI0.8、腹囲3.2cm、収縮期血圧7.6mmHg、拡張期血圧4.3mmHg、LDL-C11.3mg/dlの有意な増加が見られた。
’09年度の高齢期農業者の調査と比較すると、高齢期前世代では男女ともに、体重、BMI、血圧についてデータの変化が大きく(農閑期の体重増加率平均は、高齢期、高齢期前世代それぞれで男性2.1%、4.1%、女性2.5%、3.7%)、健康状態について今後の追跡が必要と考える。
<結論>
農作業時期による体重の変化等は高齢期前世代でより大きく、この世代から時期を考慮した健康支援を検討する必要がある。
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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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