日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1C-11
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脳神経外科手術中におけるMEPモニタリングの有用性
横山 修市
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キーワード: MEPモニタリング
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抄録

脳神経外科手術は、術後神経障害、運動機能障害との戦いと言っても過言ではないでしょう。手術により障害される可能性のある脳機能及び脳神経機能を監視して手術合併症を極力少なくする目的で行われるのが各種神経生理学的検査による術中モニタリングである。電気生理学的モニタリングには感覚路系と運動路系からなるいろいろなものがあり、なにをモニタリングするかでそれぞれ方法が異なるので、事前に患者の状態を十分把握して望まなければならない。今回われわれは経頭蓋によるMEPモニタリングの有用性を経験したので方法と代表例を報告する。
【代表例】患者T.K  76歳 男性 臨床診断名: くも膜下出血。頭部CT写真ではくも膜下腔に血液が確認され、アンギオ撮影では左内頚動脈瘤がありそこから出血したと考えられる。この動脈瘤の頚部をクリップすることで破裂を阻止できる。開頭前、経頭蓋に高電圧刺激し上下肢の誘発電位をとらえ、これを基準波形とし振幅・潜時の変化をリアルタイムに観察する。動脈瘤のクリップ前の刺激では誘発電位の波形を確認できたが、クリップを掛けて2分経過後の刺激では波形が消失した。理由として前脈絡叢動脈を一緒にクリップしたものと思われ、本来前脈絡叢動脈を避けてクリップをかけるつもりだったが、術野の視野からでは脳動脈瘤の向こう側にあるため十分な観察ができなかった。太さは1mmもなく、これが詰まると対側上下肢マヒになってしまう血管である。直ちにクリップをはずし動脈瘤と前脈絡叢動脈を剥離し、クリップを架け直した後、刺激したところ波形の出現を確認できた。手術終了まで波形が出現していることで、術後右片マヒは出現しなかった。このように運動野に関係する術中モニタリングは術後の運動機能の予測や、手術成績の向上にも有用であった。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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