1935 年 11 巻 12 号 p. 1028-1034
ヤノネカビガラムシ(Prontapsis Yanonensis Kuw.)は第4報以降に發表せるフヂツボカヒガラムシ,モミヂノワタカヒガラムシ並にイセリヤカヒガラムシと同様介殼構成物質は蛋白質,無機成分,蝋質物,纖維素並に木質等よりなる事を証明せり.
本報に於ては上記成分中含窒物並に無機成分に就きて報告し,殘余成分に就きては後報せんとす.
蛋白質は前報迄と同様硬蛋白質に屬し,分離せるアミノ酸類並に類似體はTyrosin, Leucin, Guanin, Xanthin, Arginin, Lysin及びPhenylalanin等なり.
以上の成分は大略家蠶並に絹絲及び前報迄に發見せる共通成分なるも, Xanthinの存在は未だ昆虫成分として登載せられざる新成分なり(5). 無機成分は上記の3種介殻虫と同様硅酸を最も多量に含有するも,その百分率は低下を見たり.然かるにアルミニユーム,燐及び鐵は以上のものに比し遙かに多量にして特にアルミニユームは記載に見ざる高含量なることは興味ある事實なりと信ず.
稿を終るに當り御指導と御校閲を賜ふ恩師鈴木文助教授並に便宜と激勵を蒙りし工場長伊庭野薫氏,出張所長高橋清氏に厚く謝意を表す.