日本農芸化学会誌
Online ISSN : 1883-6844
Print ISSN : 0002-1407
ISSN-L : 0002-1407
日本産介殼虫の化學的研究(第九報)
イセリヤカヒガラムシ (Icerya purchasi Mask) の炭水化物並に蝋質物に就いて
河野 通男丸山 隆之輔
著者情報
ジャーナル フリー

1935 年 11 巻 8 号 p. 647-658

詳細
抄録

イセリヤカヒガラムシよりは炭水化物としてLignin, Cellulose, Pentosan, Mannan等を檢出せり.これ等はフヂツボカヒガラムシ,モミヂノワタカヒガラムシと共通なる成分なり.又虫體水浸物よりはl-Arabinoseを檢出し媒病菌の培養基並に蟻の誘引物と想像せり.l-Arabinoseは本報に於て初めて發見せる新成分なり.
蝋質物中の成分としては o-Oxybenzaldehyde, Ceryl alc., Ibotaceryl alc., Camäubyl alc., Cerotene, Cerotic acid, Palmitic acid, Melissic acid, Stearic acid及び未知樹脂酸(C10H16O4)を檢出し,更にその他低位アルコールOctadecyl alc., Tetradecyl alc., Cetyl alc.等の微量混在することを認めたり. Cerotic acid, Melissic acid, Cerotene及びCcryl alc.は既報に於て發見記載せる成分なるも,殘餘成分は何れも昆虫に於て初めて檢出せるものなり.樹脂酸もその性質既報のものと比較しその性質を異にするものの如く考へらる.尚樹脂酸に就きては改めて研究を續行し報告する豫定なり.
前報と綜合しイセリヤカビガラムシはモミヂノワタカヒガラムシ,フジツボカヒガラムシと同様無水硅酸,硬蛋白質,木質,纖維素及び蝋質物が複雑なる結合をなして構成せらるゝことを認めたり.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本農芸化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top