1937 年 13 巻 4 号 p. 267-274
クハノカヒガラムシ(Sasakiaspis pentagona Tar.)は既報のフジツボカヒガラムシ,モミヂノワタカヒガララムシ,イセリヤカヒガラムシ,並にヤノネカヒガラムシと同様に介殻の構成物質は含窒物,無機成分,蝋質物並に木質等より成る.本構成物質は寄生植物の相違によりて,大なる差異を認め難し.本報に於ては上記成分中含窒物並に無機成分に就いて報告し,殘餘成分に就きては後報せんとす.
含窒物より分離せるアミノ酸類はTyrosin, Histidin, Aspayaginsäure, Glutaminsaure並にValinにして既報介殼虫の成分と比較するに,分離成分の數は僅少にしてPurin鹽基の存在を認めざりし事は本昆虫に於ける特異の例なり.本報に於てはChitinを檢索せる處約2.15%を含有することを發見せり.その他の成分に就いては何れも既載の成分と共通なり.
無機成分に於ては依然として硅酸は最高の含量を示し又鐵の含量もイセリヤカヒガラムシ,ヤノネカヒガラムシに續く高含量を示し,何れも20%以上を占む.カルシウム,マグネシウム,並にカリウムの含量は既報のものに比して,最高含量なることは注目すべき點なる可し.