日本農芸化学会誌
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鳥賊に關する榮養化學的研究(第1報) シリヤケイカの肉成分
波多腰 ヤス
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1938 年 14 巻 11 号 p. 1413-1422

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抄録

淡路近海産及び九州八代灣産雌雄シリヤケイカに就て1936年4月及び6月の2囘に亘り胴肉,頭足肉の2部に分かち其の各々を分析した結果を要約すれば次の通りである.
(1) 雄烏賊に於ては胴肉量は全體重の約33%,頭足肉量は約18%であり雌鳥賊に於ては胴肉量は約31%頭足肉量は約14%である.
(2) 部位別,雌雄別,新古別,季節別による12種の烏賊肉に就て普通域分,水溶性窒素量等を定量した結果,水分含量は常に胴肉に比して頭足肉に多く脂肪も亦同様であり,グリコーゲンも頭足肉に多く含まれて居る.之に反し蛋白は胴肉に多く,從つて發熱量は胴肉が優つて居る.雌雄による成分の變異は殆んど無く古きもの及び6月のものは4月の新らしきものよりも水分含量が多い.
(3) 各種鳥賊肉に於ける水100gに對する各成分量を算出した結果によれば胴肉は蛋白及び灰分の濃度が高く頭足肉はグリコーゲン及び脂肪の含量が多く4月(産卵前)の新らしきものは其の古きもの及び6月(産卵後)のものに比して各成分特に蛋白に於て濃度が高い.
(4) 烏賊汁液のアミノ態窒素と全窒素との比は季節別,新古別,性別により差異を認め得ないが何れの場合にも頭足肉のものが胴肉のものよりも高い.
(5) 各種烏賊肉蛋白中の窒素の形態を測定した結果烏賊肉蛋白組成の彷徨變異は雌雄別,新古別,産地別,季節別に於ては極めて僅少であり獨り部位別に於てのみ明瞭である.
終りに絡始御懇篤なる御指導を賜はりし恩師近藤金助教授に對し謹みて感謝の意を表し併せて實驗材料に關し特別の便宜を與へられたる大阪市中央卸賣市場大阪魚株式會杜柏原好郎氏に深謝す.

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