抄録
以上の實験結果並に既報と綜合するときは,Rubeabietic acidは誘導體並に分解成績體は何れもAbietic acidより得たるものに一致す.從つてRuzickaの與へたるAbietic acidの講造式が適用し得るものと推定す.只旋光度に關し測定數は一般樹脂酸に於けるが如く,一定せざるも何れの場合に於ても右旋性なることは確實と考へられ,この點はAbietic acidの左旋性な.るに相反す.又基原の著しく相違するためAbietic acidのIsomerと考へRubeabietic acidと命名するが穏當ならんと考へる.尚實験に用ひし昆虫は何れも柑橘に寄生せるものにて從來Abietic acidの存在は松柏科樹脂に限定されたるものが松柏科植物以外に寄生する昆虫成分中に認められたることは興味ある事實なる可し.
稿を絡るに當り不断の御指導と御校閲を賜ふ恩師鈴木文助教授に感謝を捧ぐると共に鞭撻と便宜を蒙りし部長高橋清氏,工場長伊庭野薫氏,資料に多大の配慮を得し和歌山縣農事試験場鹽谷,池屋兩農學士に厚く謝意を表す.