日本農芸化学会誌
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茶葉の酸化酵素に就て(第1報)
鳥井 秀一
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1941 年 17 巻 5 号 p. 361-369

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抄録

1.茶葉のperoxidase, catechin oxidaseの定量法を記した.
2.兩酵素の最適pH,反應濃度の影響,耐熱性,光線の影響, peroxidaseに對するH2O2濃度の影響等を報告した.
3.茶葉の兩酵素量は品種によつて相當差がある.そしてperoxidaseは茶期別によつても1番茶より2, 3番茶に少く,覆下園と露天園の比較では後者に少い.之は日照の影響によるものである. Oxidaseの方は日照の影響は無い.
4.新梢各葉位の酵素量はperoxidaseはII葉に, oxidaseはIII葉に最大値を得た.
5.紅茶製造の萎凋と酵素の關係を萎凋時間と萎凋程度の二方面より調べたが,萎凋中の酵素活力の増加は從來考へられてゐた程大きなものではない.萎凋はやはり茶葉の物理的状態を主眼としなければならぬ.
6.紅茶製造中の酵素量の變化は生葉から揉捻葉へと増加して最高値に達し,醗酵後の熱風乾燥によつて著しく減少する.併し此の所謂醗酵止と稱する荒乾燥後にも豫想外に多量の酵素が殘存し更に本乾燥を終へた製茶の中にも尚完全に活力を喪失せられることはない.
7.紅茶中に殘存した酵素は紅茶の後熟作用に關係するものと思はれるが,貯藏中の水分量によつて酵素力の減退に遲速がある.普通の貯藏では1ケ年程度で消滅するものと思はれる.緑茶の中にはoxidaseだけでperoxidaseの反應は無かつた.
終に此の研究を行ふに際して恩師藪田貞治郎博士の數々の御教示と御鞭撻と, 又茶業試驗場出村技師,加藤技師の御援助に對し深く感謝の意を表する.

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