日本農芸化学会誌
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醗酵による纖維の精練に就て
(第6報)黒黴による桑皮の醗酵精練に就て
朝井 勇宣佐野 實井上 五郎
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1950 年 23 巻 9 号 p. 398-404

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抄録

黒黴Asp. nigerによる桑皮の醗酵精練に關する實驗を行つた.
1. Asp.niger var.(茶)による精練の實施方法として種菌用培地に桑皮屑桑皮煮汁を添加せる鋸屑培地を用いるのが適當な一方法である。
2. 桑皮の精練はAsp. niger var.(茶)により完全に行はれる.その際副産物として桑皮に對し2~3%の蓚酸を生じ,ペクチンが蓚酸の基質であることを證明した.
3. 菌株の選擇試驗を行い,Asp. niger var.(茶)の他に6種の優秀が菌を選擇した.何れも強生酸菌で終末pH 2.0内外,蓚酸を多量に生産する.概して生酸力の強いものほど精練効果の大なることが選擇試驗の結果から判明した.
4. 精練の際,培養液にCaCO3を加えると(pH 5.8~6.4)解膠作用は殆んど〓止する。蓚酸のみにてもかなり,精練は行われるから副産物の蓚酸が醗酵精練に重要な役割を爲していることがわかる.
5. Asp. niger var.(茶)のProtopectinaseの作用は著しく酸性側(pH<3)にあり・Pectinaseの作用も同じく酸性側(pH 3~5)にあることを蓚酸の影響外に於いて確めた.蓚酸はプロトペクチンを可溶性ペクチンにするが,Asp. nigerのpectinaseと異なり,水溶性ペクチンを還元性物質に分解する力はない.
6. Asp. niger var.(茶)の桑皮に對する精練作用はその有するProtopeatinaseにより,蓚酸の副成により酸性側に傾くことがその活性度を大にすると共に,蓚酸自體の解膠作用もあずかつて力がある.
本研究の費用は文部省科學研究費によるものである.

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