抄録
以上の結果を考察して見ると,P. S. A.は低濃度に於てはE. coliのlag timeを増大するものである.
CAVALLITO等の説の如くP. S. A.はP. A. B. A.により拮抗されず,又disulfideによつても拮抗されない.
P. S. A.はcysteineにより完全にその作用を阻止される.即ちP. S. A. 1 moleに対しcysteine 1 moleを加えた場合にはcysteineの作用は見るべきものがないが, cysteine 2 molesを加えた場合には完全にその作用は中絶され以後normalな増殖を行う. CAVALLITO等によればP. S. A.とcysteineとの反応には次に示す如く2法が考えられる.
(I) R-S-S-R+2HS-CH2-CH(NH2)-COOH↓O→2R-S-S-CH2-CH(NH2)-COOH+H2O
(II) R-S-S-R+HS-CH2-CH(NH2)-COOH↓O→R-SH+R-S-S-CH2-CH(NH2)-COOH↓O
反応生成物を分析の結果は(I)式に一致した事より見てcysteine 2 mol.にて完全に生育阻害反応が中絶する事はうなずかれる.この事より考えればP. S. A.は生体内の活性のSH-基と可逆的に結合してその阻害作胴を示すものではないかと考えられる.
Glutamic acid及びaspartic acidはP. S. A.により生じたlag phaseを他のamino acidよりも減少せしめるが, P. S. A.の阻害作用は本質的にglutamic acid及びaspartic acid metabolismを阻害する結果によるものとは考えられない. glycine, methionine等は全く影響がなかつた.