日本農芸化学会誌
Online ISSN : 1883-6844
Print ISSN : 0002-1407
ISSN-L : 0002-1407
茶葉中の遊離アミノ酸について
(第5報)遊離アミノ酸類の茶期別消長及び葉位別分布
中川 致之徳村 治彦鳥海 康宏長島 善次
著者情報
ジャーナル フリー

1957 年 31 巻 10 号 p. 771-775

詳細
抄録

茶の品質と密接な関係を持つと考えられる茶葉中の遊離アミノ酸類含量を,1 ,2 ,3番の初,中,後期試料及び1番茶期,新梢の1芯1葉, 2葉, 3葉, 4, 5葉,茎及び古葉の葉位別試料について微生物定量法により測定し,又従来論じられている摘採条件即ち摘採茶期及び部位と茶品質との関係についても考察を加えた.
I. 遊離アミノ酸類の茶期別消長
(1) 遊離アミノ酸含量の多いのはやはり1番茶初期のものであり,特にテアニン,グルタミン酸の量は著しい.2, 3番茶と進むにつれて各アミノ酸とも減少するが,上記テアニン,グルタミン酸をはじめとして,含量の割合い高いアスパラギン酸,アルギニン,アラニン等についてはこの傾向が著しい.
(2) 各茶期を更に細く,初,中,後期と分けてみると,初期と中期との差はあまり大きくないが,後期の含量が著しく低下する.
(3) 尚,緑茶の品質と遊離アミノ酸との関連を考察するに,その含量をも考慮して最も関係深いアミノ酸はテアニンであることが推察される.次いでグルタミン酸でアスパラギン酸アラニン等も関係あるものと考えられる.
これ等アミノ酸が1番茶初期に殊に多く,以後著しく減少することは,従来1番茶初期において優品が出来,又摘採期をおそくすると品質が急激に悪化する事実とよく一致する.
II. 遊離アミノ酸類の葉位別分布
(1) 各葉位を通じてのアミノ酸含量は一般に1芯1葉より2葉, 3葉, 4, 5葉と次第に減少する.古葉における含量は一般に4, 5葉と共に極めて低いが,リジン等含量の低い数種のアミノ酸においては最高となる.新梢の茎のアミノ酸含量は意外に高く,最高となるものもかなり存在する.特にテアニンは茎における含量が極めて高く,1番茶期に摘採した本試料では乾物中4%にも達した.
(2) 以上の結果より普通1芯3葉摘みが奨励されているが,アミノ酸分布の上からもその妥当性が認められる.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本農芸化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top